FX チャート術|成果を挙げるために必要なFXのチャート分析|第17回 長期月足チャート&エリオット波動etc.|外為オンライン

2013年の為替相場を長期月足チャートで展望する

為替相場は日々のニュースに一喜一憂して、細かい変動を繰り返します。しかし、毎年毎年大きなテーマがあり、基本はそのテーマに沿って値動きすることが多く、トレンドに乗った取引をするためには、為替市場のテーマに敏感になる必要があります。
2013年の為替市場のテーマになりそうなものを挙げてみると、

  • ●アメリカ経済の回復、日銀の追加金融緩和で、ドル/円は1米ドル90円を越えて本格的な円安トレンドに向かうか?
  • ●欧州危機が改善してユーロの底打ち反転上昇が続くか?
  • ●中国経済が堅調に推移して、その影響を受けやすい資源国通貨・豪ドルの勢いが持続するか?などを挙げることができます。
  • ●リーマンショック以来続いてきた外貨に対する円高トレンドが終止符を打ち、円安トレンドが復活するか?

というのも、日本のFX投資家にとって関心の高い大テーマといえるでしょう。

こうしたテーマを実際の値動きで確認するうえで非常に大切なのは、月足チャートの存在です。過去5年10年という長期間にわたって為替レートがどのように値動きし、現在どのような状態にあるのかを知ることで、為替市場を動かすテーマを実際の為替レートに落とし込んで予想することができます。

図1:米ドル/円の長期月足チャート

図1は、FXの最重要通貨といえる「米ドル/円」の長期月足チャートにトレンドラインを引いたものです。
「ドル/円」に関しては、急激な下降トレンドが続いてきましたが、度重なる為替介入などもあり、75円32銭の史上最安値を大底に底値持ち合いを形成しています。今後は、持ち合い状態からさらに上値を目指せるかどうかが焦点です。

その際、上値の壁になるのは、東日本大震災直後の2011年4月、政府の為替介入によって到達した高値85円52銭や、日銀のサプライズ金融緩和がもたらした2012年3月高値の84円17銭です。
1ドル84円〜85円の抵抗帯を越えることができれば、本格的な上昇トレンド復活とまではいえないものの、少なくとも長らく続いた「ドル/円」下降トレンドに終止符が打たれた、と判断することができます。

85円を明確に越えれば、これまで75円〜85円のレンジで推移してきた「ドル/円」が、値幅を10円切り上げて、85円〜95円のレンジで推移する展望を描くこともできます。

強い下降トレンドが続く「ユーロ/円」、90円越えが焦点の「豪ドル/円」

図2:ユーロ/円の長期月足チャート

では、「ユーロ/円」はどうでしょうか?図2は、「ユーロ/円」の長期月足チャートに、12カ月と24カ月の単純移動平均線を描画したものです。

先ほどの「ドル/円」に比べて乱高下が激しいものの、2本の移動平均線が完全な右肩下がりであることから、強い下降トレンドが今なお続いていることがわかります。
とくに、24カ月移動平均線が上値を抑える壁として機能していますが、2012年12月現在では、その壁を破れるかどうかが焦点になっています。

もし、24カ月移動平均線越えを果たせば、約2年の間に「ユーロ/円」を買った投資家の平均買値を上回るわけですから、V字反転に期待できるかもしれません。
しかし、その際は直近の高値であり、リーマンショック直後の安値でもある1ユーロ112円台が上昇を阻む壁として立ちはだかるでしょう。

下降トレンドの力が弱まり、底値持ち合いに転じている「ドル/円」に比べると、いまだ下に向かう力が強いと判断することができます。

図3:豪ドル/円の長期月足チャート

次の図3は、「豪ドル/円」の月足チャートです。

「豪ドル/円」は「ユーロ/円」などと同じく、2008年のリーマンショックによる大暴落の前後で、値動きが完全に分断されている点に特徴があります。
とはいえ、高金利通貨として根強い人気もあり、リーマンショック後、短期間で1豪ドル80円台後半までリバウンドしました。その後は70円〜90円台でレンジ相場を形成しています。

リーマンショックを挟んだ最高値と最安値を結んでフィボナッチ・リトレースメントをすると、ちょうど38.2%と61.8%のラインのなかにすっぽり値動きが収まる中段持ち合いを形成していることがわかります。

2013年の「豪ドル/円」を考える場合、70円〜90円台のレンジ相場が続くのか、それとも、90円台を越えて100円台を目指す展開に期待できるのかを意識する必要があります。
1豪ドル100円台といえば、リーマンショック以前の水準ですから、相当な上昇パワーが必要になります。豪ドルが強いだけでなく、日銀の追加金融緩和や貿易赤字の拡大など、相当な円安パワーが生まれる必要があるでしょう。

「豪ドル/円」の場合、高額のスワップポイント目当てに買って、長期保有するのがオーソドックスな投資法です。そう考えると、なるべく安いレートで仕込むのが鉄則になります。
現在のレンジ相場の高値80円台後半から90円台目前で買うと、いつ急落に見舞われるかわかりません。長期投資を狙う場合は、月足チャートで大陰線が出るような急落が起こったときに、下値で押し目買いを狙うほうが安全、といった戦略を立てることができます。

レンジ相場の上限である90円越えを狙って高値で買うとしても、急騰に乗るよりも、急騰が小休止して、一度調整が入った局面で買うほうが安全度は高いでしょう。
以上、3つの通貨ペアについて月足チャートを見ることで、今後の投資戦略を練る方法を見てきました。

チャート分析というと、いろいろ細かいテクニックが強調されますが、月足チャートを眺めて、「長い年月のなかで見た場合、現在の為替レートはどういう状況にあるのか?」を考えるだけでも立派なチャート分析なのです。

長期月足チャートのかたちから取引しやすそうな通貨ペアを選ぶ方法も

逆に月足チャートのかたちからトレンドがはっきりして、売買しやすそうな通貨を見つけるという方法もあります。

外為オンラインの場合、取引できる通貨は24種類にも及び、そのなかには日本人の投資家になじみのある円や米ドルが絡まない通貨ペアもあります。
図4は、「英ポンド/スイスフラン」と「ユーロ/豪ドル」の長期月足チャートです。

図4:英ポンド/スイスフランとユーロ/豪ドルの長期月足チャート

スイスフランは、ユーロ危機の際の資金の逃避先として買われてきましたが、2011年9月に、スイス国立銀行が1ユーロ1.2フランのフラン高防衛ラインを設定して以降は、逃避先が英ポンドに変わった観があります。

「英ポンド/スイスフラン」のチャートを見ても、それは明らかで、底打ち反転が明白です。非常にゆるやかな上昇が続いており、長期投資だけでなく、短期売買のチャンスもありそうです。
次の「ユーロ/豪ドル」の場合、「ユーロ/円」以上に下降トレンドが鮮明です。今もなお欧州危機がくすぶる低金利の最弱通貨ユーロを売って、高金利通貨・豪ドルを買うには、「ユーロ/豪ドル」売りで勝負することになります。

「豪ドル/円」の場合、買いでスワップポイントがプラスになりますが、「ユーロ/豪ドル」では、売りでスワップポイントがプラスになるので、感覚が若干違ってきます。
しかし、非常にしっかりした下降トレンドが続いているので、売りでの長期保有に向いた通貨ペアといえるでしょう。

エリオット波動やフィボナッチ数列で相場の未来を読む方法

このように、チャートを見て為替相場の長期ビジョンを立てるためには、月足チャートを見るのが一番ですが、相場変動を長期スパンで占う場合は、エリオット波動論の「上昇5波下降3波」を参考にするのも有効です。

エリオット波動論は、株価や為替レートの値動きが、「上げ↓下げ↓上げ↓下げ↓上げ」の5波や、「上げ↓下げ↓上げ」の3波で構成される局面が多いことを過去のデータで検証し、理論化したものです。日本の一目均衡表にも、N字波動といわれるエリオット波動の3波に似た考え方があります。
それぞれの波動のなかに入れ子細工のように、さらに小さな5波や3波があると考えて、「上昇21波・下降13波」といった、より詳細な波を見つけるやり方も有名です。

どのジグザグを1波と見なすのかはかなり主観的ですが、1998年からおよそ15年に及ぶ「ドル/円」の長期月テクニカル講座足チャートにエリオット波動論を適用したものが図5です。

図5:米ドル/円の長期月足チャートとエリオット波動

図5では、2002年2月の高値134円台から2004年12月の安値101円台まで下降5波が完成したあと、2007年6月の高値124円台まで上昇3波が形成され、その後、2011年10月の史上最安値1ドル75円32銭まで下降5波が続きました。

現状の「ドル/円」は、この最安値を下回ることなく、かといって高値を奪還することもなく、底値持ち合いが続いている状況です。
ただし、これまでも下降トレンドから上昇トレンドへ転換するまでに、かなり長期間、膠着相場が続いたケースが多いのも事実。もし、今後、下降5波に続く3波構成の上昇トレンドが起こる場合、どのような値動きになるのでしょうか?今後の値動きを予想するためにはフィボナッチ・リトレースメントを使うのが便利です。

図6に示したように、過去の2002年〜2004年の下降5波の高値と安値を起点にして、フィボナッチ・リトレースメントを行うと、2007年6月まで続いたその後の上昇3波の高値は、それぞれ50%、61.8%ラインまで達しています。

同じく2007年〜2011年の高値と安値を起点にフィボナッチ・リトレースメントを行うと、50%ラインは100円前後、61.8%ラインは105円台になります。
過去の値動きと同じような下降5波上昇3波が続くとすると、今後の「ドル/円」は100円台まで上昇したあと、95円まで下落し、そこから105円台を目指す展開が考えられます。

では、どのような時間経過で、そのような上昇が起こるのでしょうか?

図4:米ドル/円の長期月足チャートとフィボナッチ・リトレースメント

2002年〜2007年と同じような時間配分で、下降5波上昇3波が完成すると仮定してみましょう。ちなみに、2007年〜2011年の下降トレンドは、2002年〜2004年のちょうど2倍の期間、続いています。
同様に、今後くると予想される上昇トレンドも、2倍の時間を要すると考えると、「ドル/円」が100円台の高値に達するのは、2011年10月から26カ月後の2013年12月になります。

むろん、これは2007年から続いた下降トレンドがすでに大転換しているという″仮定″に基づいたものに過ぎません。しかし、先ほど見たように今後、「ドル/円」が直近高値の85円をブレイクした場合、次の目標高値になるのが1ドル100円であることは、確かといえるでしょう。
長期月足チャートに加えて、エリオット波動、フィボナッチ・リトレースメントなどを駆使して、為替レートの未来を俯瞰・展望する力を磨くことが大切なのです。

このコンテンツは投資を促すものではありません。実際の投資に関しては、自己責任において行ってくださいますようお願いいたします。