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アングル:NATOの北の守り固めるフィンランド、一変した国境「最前線」の町
2025/06/25 16:22

Anne Kauranen

[ラッペーンランタ(フィンランド) 25日 ロイター] - 北欧フィンランドはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、2023年4月4日、北大西洋条約機構(NATO)へ正式加盟した。陸軍の予備役ヤンネ・ラット氏(47)はロシア国境から約16キロメートル地点にある射撃場で、車のトランクを開け、小型の監視ドローンと遠隔操作用のコントローラーを取り出した。将来発生するかもしれないロシアとの紛争に備える上で不可欠な装備だという。

ロシアとの国境は全長1340キロと、欧州で最長だ。森林に覆われたこの一帯ではNATO加盟以来、冷戦時代を思わせる緊張が再び高まっている。

  フィンランドはすでに予備役部隊の強化に乗り出しており、NATOの新たな司令部を受け入れる予定だ。6月24日にはオランダのハーグでNATO首脳会議が予定されている。

フィンランドは2023年、正式な入国・滞在許可のない移民が相次いで越境してきたことを受け、NATO加盟に対するロシアの報復措置とみなして国境を封鎖した。ロシア政府はこれを批判し、国際的なルールを守っていると反論した。 

  かつてロシアからの買い物客やレストラン利用客で賑わっていた国境の一角は訪問客の減少で静まり返り、建設中の有刺鉄線付きの高いフェンスが立っている。

  一方ロシア側では、旧ソ連時代の軍事基地の再整備が徐々に始まっていることが衛星画像から読み取れる。今年6月1日にウクライナ軍がロシアの戦略爆撃機部隊を攻撃した際には、フィンランド北部に近いロシアのオレニヤ空軍基地も標的となり、フィンランドにとって戦争が一気に身近になった。

  ラット氏の所属する予備役部隊が訓練を行っている射撃場は、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクから約160キロのラッペーンランタ近郊にある。NATO加盟国の正規軍でも使用されている監視ドローン「パロット・アナフィー」を含む3機を運用しているほか、国内の予備役協会からの助成金で10機の追加発注が決まっている。

  ネオンサインや看板の組み立てを行う中小企業を経営するラット氏は、ウクライナ侵攻以来ロシアへの警戒心を強めており「ウクライナと同じように、突然侵攻して来るかもしれない」と話す。

  フィンランドは第2次世界大戦中、旧ソ連による侵攻で領土の約10%の割譲を強いられた。ラット氏の祖父は、祖国防衛のための闘いで1944年に命を落としたという。

  フィンランドの加盟により、NATOとロシアの国境線は2倍以上に延びた。ストゥブ大統領はロシアの軍備増強について、加盟に対する「ある程度正常な反応」との見方を示した。両国は互いに脅威を与える意図はないと主張している。

  にもかかわらず、フィンランド政府は2024年末に公表した国防報告書で「武力衝突のリスクが高まっている」と指摘。ロシアがウクライナ戦争以降に軍事力を強化しており、北極圏から南欧に至る「緩衝地帯」を構築する野心を抱いていると分析した。

  フィンランドはその後、地雷の備蓄計画を発表、ロシアとの二重国籍者がドローンを飛ばすことを禁止し、ロシア国籍者による不動産購入も禁じた。前週にはロシアに近い地域で携帯通信の妨害が発生していると警告した。

  バルトネン外相は6月19日、「NATO加盟国とロシアの陸上国境のうち、半分以上がフィンランドにある」とX(旧ツイッター)に投稿し、同国の防衛姿勢は国境の「不可侵性を守るため」だと述べた。

ロシアのプーチン大統領は19日、同国がNATOへの攻撃を計画しているという考えはばかげていると述べ、NATOの再軍備計画も脅威とは考えていないと話した。だがフィンランドのNATO加盟を受けて、西部と北西部での軍事力強化を表明している。

  フィンランドの予備役による訓練は任意で行われており、射撃訓練なども含まれる。予備役協会によると活動には5万人以上が参加しており、ウクライナ戦争以前と比べて3割程度増えた。軍による再訓練の召集人数も増加している。

  予備役の年齢上限は65歳に引き上げられ、戦時にはさらに12万5000人が追加動員される見通しだ。2031年までに予備役総数は100万人に達するとみられる。

  ラット氏はこの方針を歓迎している。「近代戦では歩兵と一緒に走る必要はない」ため、年長の予備役でもドローンやレーダーの操作を担当できると話した。同氏は趣味でドローン用ゴーグルを製作するなど、技術にも通じている。

<分断された家族たち>

  こうした変化に不満を抱く事業者もいる。

かつてロシア人観光客で賑わっていた、国境地帯のショッピングモールや飲食店は閑散としている。年間最大1300万件に上っていた往来も途絶え、ロシアに家族がいる二重国籍者は影響を受けている。

  地域経済は約55億ユーロ規模とされるが、地域評議会によると、ロシア人観光客の減少と貿易縮小により年間3億ユーロ以上の損失が発生。昨年末時点の失業率は、全国平均を上回る約15%に達した。 

  骨董店を営むヤンネ・タルバイネンさんによると、以前は地元住民が、レストランの予約が取れないとか駐車場がないなどと不満を口にしていた。だが、タルバイネンさんはそうは考えなかった。「町でお金を落としてくれていたから」だ。現在はオンライン販売への移行を模索しているという。

  モスクワに住んでいたオクサナ・セレブリャコワさん(50)は新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)後、17歳の息子の将来を考え、祖父の祖国であるフィンランドに移住した。上の息子と夫はモスクワに留まり、家族は頻繁に会うつもりだった。

  だが、両国の国境封鎖により一家は分断された。入国管理を徹底すれば「移民問題は解決できたはずだ」とオクサナさんは嘆いている。

  フィンランドに息子、ロシアに高齢の母親がいる地元政治家イワン・デビャトキン氏は、国境封鎖の撤回を求めてフィンランドの裁判所に訴えたが、認められなかった。現在9人の原告が欧州人権裁判所に提訴しており、同裁判所はフィンランド政府に対し、国境封鎖の正当性について説明を求めている。

<「境界線」復活の時代へ>

  第2次大戦以降、フィンランドはロシアとの貿易・通行の自由化を徐々に進めてきた。

  だが現在では、ヘルシンキとサンクトペテルブルクを結ぶE18高速道路は金属製のバリケードで遮断されており、かつて賑わった他の幹線道路も同様に通行不能となっている。

国境にはかつて、支柱や家畜が越えないようにする低い柵と、たまに警備犬が通る細い巡回路があるだけだった。

だが現在は、森林地帯にある国境のうち、越境しやすい地帯に高さ4.5メートルのフェンスが約200キロにわたり設置されている。フェンスには監視カメラや動作センサーが取り付けられ、国境警備隊がすぐに駆けつけられるよう、未舗装道路も整備されている。

  警備隊で作戦部長を務めるサミュエル・シルヤネン氏は「非常に大きな変化だ。時代は『非国境化』から『再国境化』へと移行した」と述べた。

<新たなNATO司令部と防衛体制>

  関係改善への期待は低い。ストゥブ大統領は「ウクライナ紛争が終結すればロシアは、隣接するレニングラード軍管区の戦力を再強化するだろう」と述べたものの、現時点で明確な脅威とは見なしていない。

  国境付近では、ロシアが兵舎や倉庫の建設を開始した兆候が衛星画像から確認されている。

  フィンランドの軍事計画に詳しい政府高官によると、現時点での工事は小規模で、脅威にはなっていないという。フィンランドは元々軍備が強固であり、米国製の最新鋭戦闘機F−35を64機導入予定で、西欧最大の砲兵部隊も保有している。

  英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のミナ・アランダー研究員は「フィンランドはロシアにとって脅威ではない」と指摘。「ロシアに対し、『攻撃しても割に合わない』という明確なシグナルを送ることが重要だ」と述べた。

  さらに「NATOがロシアを攻撃することはない。それはロシアも分かっているはずだ」と語った。

  新たなNATO北部司令部は、米国や英国を含む約50人の将校をフィンランド東部ミッケリにある陸軍司令部に集結させる。ここは国境から車で2時間の距離にある。

  NATOのジェント陸軍准将はフィンランド訪問中、ロイターに対し「万が一の場合はこの司令部が、NATO部隊と連携して指揮統制を担うことになる」と述べた。

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