[ニューヨーク 9日 ロイター] - 信用リスクのヘッジに使われる米国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の1年物および5年物のスプレッド(リスクプレミアム)が、債務上限問題を巡ってデフォルト(債務不履行)の危機に瀕していた2023年5月以来、約2年ぶりの高水準に拡大した。トランプ米政権の政策を巡る不確実性と、債務上限問題が再燃していることが背景にある。
バークレイズは顧客向けのメモで、市場規模や取引量が最近増加しており、一般的にニッチと考えられている商品が投資家の関心を集めていることを示していると指摘した。
PGIMフィクストインカムのグレッグ・ピーターズ共同最高投資責任者(CIO)は数年前までは米国のデフォルトに備えた商品は不人気だったが、最近は米政府の政策が不確実なため状況が変わってきたとして「現在は債務上限問題や他の諸々の事柄が進行しており、誰もそのオプションをショート(ポジション)にはしたがらない」と指摘した。
米国債のCDSのスプレッドは短期ゾーンにとどまらず、全体にわたって拡大している。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、今月9日のスプレッドは1年物が60ベーシスポイント(bp)、5年物が56bpとなった。
トランプ米大統領が貿易相手国に対する「相互関税」を発表した4月2日以降、スプレッドの拡大が加速している。ピーターズ氏は「4月2日以降、リスクプレミアムが実際に上昇している」と話す。
数日間にわたって売りが続いた米国債は、トランプ氏が大部分の貿易相手国の「相互関税」について国・地域ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止すると発表したことで価格が上昇した。長期金利の指標となる10年物の利回りは4.36%と、関税が一時停止された4月11日に付けた水準から約20bp低下した。
米政府は連邦債務が法定上限を突破してもデフォルトに陥るリスクを回避するため、今年1月に「特別措置」を始めた。
バークレイズのアナリストらは顧客向けのメモで、米政府の財政資金が枯渇する「Xデー」は8月下旬または9月上旬になる可能性が高いものの、景気減速が財務省の財務内容を圧迫すれば前倒しになる可能性があるとの見解を示した。
ベセント財務長官は今月、債務上限問題について「警戒すべきコースをたどっている」としつつ、政府がデフォルトに陥る事態を招かないと強調した。