John Revill
[チューリヒ 13日 ロイター] - 学校における銃乱射事件は長らくほぼ米国特有の現象と見なされてきたが、近年は欧州でも相次いで発生しており、当局は銃所持やソーシャルメディアに関する規制強化を迫られている。
今世紀、欧州の学校での銃撃で犠牲者が最も多かった4つの事件は2023年以降に起きており、このうち2つは今年発生した。
直近では今月10日、オーストリア南部グラーツの学校で11人が殺害され、2月にはスウェーデン南部エーレブルにある成人向け教育施設でも銃乱射によって容疑者を含む11人が死亡。両国の政治家が銃規制の厳格化を訴える契機になった。
アラバマ大学で犯罪研究をしているアダム・ランクフォード氏は「過去において学校が犯行現場となるものを含めた銃乱射事件は圧倒的に米国の問題だったが、このバランスが変化しつつある。欧州やその他の地域で件数が増えている」と語る。
ランクフォード氏によると、その一因として米西部コロラド州のコロンバイン高校で生徒ら13人が殺害された1999年の有名な銃乱射事件などに触発され、欧州で模倣されている状況があることが、犯人の供述やインターネット検索記録などから判明している。
同氏は「米国から(犯罪が)輸出されているようだ」と説明し、雪だるま式に犯行が増えているとの見方を示した。
また同氏らの調査では、承認欲求が強い人物が起こす銃乱射事件の件数は2005年から10年までは、米国が他の地域の2倍ほどだったが、17年から22年にかけてはその差が縮まってきたと分かる。
世界全体の乱射事件数に占める欧州の比率が大きくなったという構図も浮かび上がってきている。
同氏は、文化や国民のアイデンティティーにおいて銃が中心的な役割を果たしている米国に比べて、欧州は政治家が乱射事件への対応策を講じやすいはずだと指摘し、行動するよう促している。
欧州連合(EU)は銃やソーシャルメディアの規制を加盟各国に委ねており、幾つかの国では最近の乱射事件が規制強化の誘因になっている。
スウェーデンの場合、政府は銃所持許可申請の審査プロセスを厳しくすることや、一部の半自動銃の所持禁止に合意した。当局の報告書によると、スウェーデン国内の中学校や高校では暴力や脅迫に関する事件が03年から23年の間で150%も増加したという。
昨年首都ヘルシンキ郊外の学校における発砲で12歳の児童1人が死亡する事件が起きたフィンランドでは、学校でドアを封鎖したり、襲撃者から身を隠したりする訓練を学校が実施。政府は公共の場での銃携帯に対する処罰強化を提案している。
ドイツも02年と09年の学校における銃乱射事件以降、段階的に銃所持の規制厳格化を進めてきた。
<承認欲求>
チューリヒ応用科学大学で犯罪を研究するディルク・バイアー氏は、銃所持規制の厳格化以外に、政治家がこの問題について真剣に取り組んでいると証明できる方法はないと話す。
バイアー氏は「狩猟従事者やスポーツライフル競技者、あるいは別の団体から抵抗を受けるのは間違いない。しかし規制厳格化の主張は、反対論を圧倒する力があると思う」と言い切った。
23年に首都プラハの大学で14人が殺害される銃乱射事件が発生したチェコでも、銃規制は注目を集める政治的な問題だ。
チェコでは、銃の販売者に不審な購入を通報することが義務化され、医師は精神的な問題に関して診察した人が銃所持を許可されていないか点検しなければならない。
オーストリア・グラーツで今月起きた銃乱射事件の動機解明に向けた捜査はまだ続いている。警察は、容疑者は社会から引きこもり、シューティングゲームに熱中していたと明らかにした。
大半の銃乱射事件は若い男性が起こしている。ランクフォード氏は、ソーシャルメディアに動かされる面もあって、自分たちを疎外した実社会で悪名でも良いから有名になりたいというのが世界的に共通する犯罪者の特徴だと分析した。
犯罪者はたとえ死を予期するとしても「爪痕」を残すことに快感を覚える、とランクフォード氏は解説する。
オーストリアはこれまで銃規制が比較的緩く、事件後にファンデアベレン大統領は、規制厳格化の妥当性を強調した。