今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円1ヵ月ぶりに160円台を回復」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は、ジャクソンホールでのウォーシュFRB議長の講演を受けて大きく上昇。講演内容が利上げに前向きな「タカ派」と受け止められ、ドル円は160円20銭まで買われる。
  • ユーロドルは続落。1.16台を割り込み、1.1578まで下落。
  • 株式市場では、ウォーシュ議長のタカ派発言を受け3指数が揃って小幅に下落。ナスダックは47ポイントの下げ。
  • 債券は続落。9月利上げの確率も高まり、長期金利は4.71%台に上昇。
  • ドルが買われたことで金は大幅に下落。原油は小幅安。
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8月シカゴ購買部協会景気指数 → 47.1
8月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 51.7
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ドル/円 159.40 〜 160.20
ユーロ/ドル 1.1578 〜 1.1660
ユーロ/円 185.30 〜 185.91
NYダウ −9.45 → 53,559.99ドル
GOLD −134.10 → 4,529.90ドル
WTI −0.13 → 83.40ドル
米10年国債 +0.042 → 4.718%

本日の注目イベント

  • 日 7月鉱工業生産(速報値)
  • 中 8月中国製造業PMI
  • 中 8月中国サービス業PMI
  • 独 独8月消費者物価指数(速報値)
  • 米 G20財務相・中央銀行総裁会議(9月1日まで、ノースカロライナ州アッシュビル)

本日のコメント

先週末金曜日のコメントで、日経新聞が掲載した「ドル売りサイン点灯」との記事に反論し、「依然としてドルが有利な立場であることは変わっていない。また、周りを見渡しても何ら変わったところはなく、当局の介入が最大の円高要因であることに変化はないと考えています」と記述しました。注目されたジャクソンホールでのウォーシュFRB議長の講演内容は、予想されたより「タカ派的」と受け止められ、ドル円は159円台半ばにあった「一目均衡表の基準線」を超えただけでなく、160円という大きな節目も超え、160円20銭までドル高が進みました。

ウォーシュ議長は講演で、「インフレ率を2%の目標に戻す」と改めて表明。「この目標は確固として変わらないものだ」と述べました。「私の判断基準はこうだ。基調的なインフレが明確かつ十分な速さで目標に向かっていると確信できなければならない。そうでなければ、われわれにはやるべきことがある。それがわれわれの仕事だ」と述べ、直接利上げには言及しませんでしたが、「やるべきことがある」といった表現で、将来の利上げの可能性に触れていました。また、「私はきょう、特定の政策決定ではなく、規律を重んじる決意を持ってここに立っている」と述べ、さらに、「インフレ率が2%を上回っている中、FRBは現時点で、最大の重点を物価に置くべきだ」と主張しました。またFRBが重要視する個人消費支出(PCE)価格指数については、「この夏のPCE価格指数と消費者物価指数(CPI)は、予想より良好だったが、基調的な動向が大きく改善したと示唆してはいない。市場価格は、われわれが物価安定を実現するとの信頼を示している。それが正しいことは私が保証する」と発言していました。ブルームバーグは、「注目を集めたウォーシュ議長の発言は、同氏が情報発信を抑えていることへの批判が出る中で行われた。エコノミストや市場参加者からは、経済や金融政策の短期的な見通しについて明確さを欠いているとの指摘が出ていた。今回の発言はこうした懸念に応える内容となり、経済に対する見方や、自身の下でFRBが重視する政策課題について、これまで以上に踏み込んだ考えを示した」と評価していました。

イラン戦争はやや膠着状態になっています。イランに対する米国からの大規模な攻撃はなく、一方ホルムズ海峡の緊張は続いたままです。また、双方からの攻撃的な情報発信もなく、米中間選挙に向け、時間だけが経過している状況です。ベッセント財務長官は先に、イラン戦争終結に向けた新たな取り組みとして、同国とその貿易相手国に「経済的な猛攻撃」を開始すると宣言していましたが、1週間が過ぎてもイランと関係を持つ国々は今のところ米国の威嚇に動じていないようです。特にイラン産原油の90%を購入する中国は、圧力に屈するどころか、米政府に対して強硬な警告を発しています。この秋には、習近平主席が米国を訪問する予定で、米国の制裁内容次第では習氏の訪米が中止となり、米中関係が再び悪化するリスクがあります。この辺りの事情を考慮して米国も思い切った制裁に踏み切れないのでは、といった見方もあります。いずれにせよ、中間選挙を控えているトランプ政権にとって、支持率が低下していることもあり、イランよりも不利な立場にあると言えそうです。

ベッセント財務長官は、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員による円買い介入に関する照会に、8月27日付の書簡で回答しました。その中でベッセント氏は「日本は米国債の主要な保有国だ」と指摘。「円相場が無秩序な動きとなれば、ポジションの強制的な巻き戻しを引き起こす。そうなれば、世界の市場を不安定化させ、最終的には米国の家計や企業の借り入れコストを押し上げる可能性がある」と述べていました。

ドル円は7月31日以来、1ヵ月ぶりに160円台を回復しましたが、ここから163円台までさらに上昇するのは、簡単ではないと思われます。介入警戒感が一段と強まる他、9月の会合でのFRBによる利上げもまだ確信できる状況ではなく、一方で日銀による次回会合での利上げは確実の様相です。ただ、ドル円は日米の協調介入実施以来、初めて160円台を回復したのも事実で、介入だけでドル円の水準を変えるのは不可能との印象も市場に浸透しつつあります。当面は160円を挟み、159−161円の新たなレンジを形成するのではないかと予想します。先ずは、今週末の米雇用統計が材料になります。

本日のドル円は159円50銭〜160円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/28 ウォーシュ:FRB議長(ジャクソンホールでのシンポジウムで) 「インフレ率を2%の目標に戻す」、「私の判断基準はこうだ。基調的なインフレが明確かつ十分な速さで目標に向かっていると確信できなければならない。そうでなければ、われわれにはやるべきことがある。それがわれわれの仕事だ」、「やるべきことがある」、「私はきょう、特定の政策決定ではなく、規律を重んじる決意を持ってここに立っている」と述べ、さらに、「インフレ率が2%を上回っている中、FRBは現時点で、最大の重点を物価に置くべきだと」 ドル円は159円台半ばから160円20銭まで上昇。米金利高、株安が進む。
8/27 ベッセント:財務長官(介入に対するウォーレン上院議員への回答で) 「日本は米国債の主要な保有国だ」、「円相場が無秩序な動きとなれば、ポジションの強制的な巻き戻しを引き起こす。そうなれば、世界の市場を不安定化させ、最終的には米国の家計や企業の借り入れコストを押し上げる可能性がある」 --------
8/13 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「現在のインフレ高止まりの大部分は、いずれ収まるはずのショックによるものだ」、「インフレ率はあまりに長く高すぎる水準にあり、企業や消費者の物価見通しが上振れするリスクがある」、「そうなれば、インフレ率を目標まで完全に引き下げるために追加の対応が必要になる」 --------
8/13 ハマック・クリーブランド連銀総 「こうした数字が低めに出ているのは良いことだ。ただ、この傾向が今後も続くのか、あるいはインフレ率を2%の水準まで押し下げるほど十分に低い数字が続くのか、確信は持てない」、(金利に関して)「今こそ行動する必要がある」 --------
8/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 「経済データ次第では、9月にも利上げを支持する可能性がある」、「最新の雇用者数の数字を過度に重視すべきではない。失業率は比較的安定している」、「強弱が入り交じる労働市場データよりも、インフレのリスクの方が大きい。注視すべき点は多いが、インフレ率は高過ぎる」 --------
8/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在、米経済が直面する最大の問題だ」、(指標は)「労働市場は良好とは言えないものの、安定していることを示している。消費者が健全な状態を維持する限り、経済も健全な状態を維持するだろう」 --------
8/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今後発表される経済指標を見極めながら、今こそ緩やかな利上げを開始するべき時だ」、「政策当局が対応を先送りし、高インフレが定着すれば、より大幅な利上げを余儀なくされる可能性がある」(7月31日)、「現時点ではなお判断できない」、「インフレ率がこのまま横ばいで推移する、あるいは一段と悪化するようであれば、インフレを再び押し下げるため、政策金利を段階的に調整し始める必要があると思う」、(年末までに3回の利上げを実施する可能性があるかとの質問に)、「それは不可能ではない」 --------
8/5 クック・FRB理事 「近いうちに持続的なディスインフレの兆候を確認できなければ、私は行動を取る用意がある」、「目標を上回るインフレが5年間続いていることから、高いインフレ率が価格や賃金の決定行動に定着してしまうリスクが高まっている。そうした持続性はわれわれにとって、対処がはるかに困難になる」、「関税の影響が薄れることや、原油価格が下落する可能性、さらにAIブームに関連する一部の圧力低下によって、インフレが和らぎ、より引き締め的な政策は不要になる可能性もある」(それでも)、「この講演から一つだけ持ち帰っていただくとすれば、それは私が物価安定の回復に断固として取り組んでいるということだ。インフレ率を目標へ下げることが最優先であり、議会がFRBに課した2つの使命を達成する上でそれは欠かせない」 --------
8/4 ベッセント・財務長官 「問題なのは円の水準だ。それが別の問題を引き起こしたり、競争的な通貨切り下げを招いたりする恐れがある。それは健全ではない」、「円相場の安定は米国だけでなく、アジア地域全体にとっても極めて重要だ」、「日本とは緊密に連絡を取り合っている」、「米経済や米国の納税者の利益にかない、世界経済の安定化にもつながる形であれば、日本を支えるために必要なことは何でもする」、(円安の影響が物価に波及していることを挙げ)、「円安によってエネルギー輸入コストが押し上げられている」、「円が大幅に下落すれば、他の通貨もそれに追随することになる。韓国ウォンで過度な変動が見られている。中国人民元は過小評価されていると考える向きも多い」、(円相場を安定させる上で日本銀行の利上げが必要か問われ)「日銀が取るべき対応について先回りして判断するつもりはない」、(植田日銀総裁とは15年来の付き合いがあるとし)、「必要なことは実行すると信じている。介入に続いて、政策面での後押しが必要になる。そうした対応が行われると強く確信している」 --------
8/3 ベッセント・財務長官 (協調介入を実施したことについて)「財務省および日本銀行の当局者と緊密に連絡を取り合い、状況を注視し続けている。必要であれば、さらなる協調介入をためらわない」、「米国は、円の著しい過小評価を是正するため、日本が断行した市場対応および金融政策を強く支持する」 --------
8/3 片山・財務相 (為替介入を実施したことについて)「最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したものだ」 --------
7/29 FOMC声明文 「経済活動が堅調なペースで拡大しつつある。設備投資と生産性の伸びが力強い。(インフレ率は、)「2%目標に比べて高止まりしている」 ドル円は163円台後半から下落。株式と債券も売られる。
7/29 ウォーシュ・FRB議長 「一部の家計や企業、市場関係者の間では、5年にわたる高インフレを受けて、FRBは2%を超えるインフレ率を事実上容認しているとの誤った認識が根強く残っている。改めて強調したい。インフレの緩やかな目標など存在しない。少なくとも、この委員会の下では、暗黙の緩やかな目標も存在しない」、「インフレ率が見通し期間を通じて高止まりするようであれば、金利はその対応策の一つになり得るが、それだけが手段というわけではない」、「市場に影響を与えようとする姿勢を一部後退させたことで、市場は自ら判断を下した」と説明。「米国債の利回り曲線全体で名目金利に対する市場の見方は上方修正された」 短期ゾーンの金利が低下し、中長期ゾーンの金利が上昇。
7/23 ラガルド・ECB総裁 「利上げを検討する必要はないか自問した中銀総裁も一部いた」、「現時点では待つことが適切だと判断した。今後数週間の情勢の推移と、その間に公表されるデータを極めて注意深く見守る」、「インフレ見通しには上振れリスクがある。エネルギーショックがさらに強まる恐れがあり、他の物価や賃金への影響も現在の想定より大きくなる可能性がある。エネルギー価格の高止まりが長引くほど、より幅広い物価の押し上げにつながるだろう」、「基調的な物価上昇率は現時点では抑制されている」、「6月のユーロ圏総合インフレ率は2.8%へ鈍化し、市場予想も下回った。しかし、今月に入り戦闘が再開したことで、政策当局者の間では金融引き締めをまだ終わらせることができない可能性が認識され始めている」 ドル高の流れの中、ややユーロ売りに拍車。
7/16 ローガン・ダラス連銀総裁 「物価安定と完全雇用というFRBの二つの使命を踏まえると、政策金利を現行よりやや高い水準に引き上げた方が、見通しとリスクの均衡をより適切に保てると現時点では考えている」、「インフレが自律的に2%まで戻る方向にないのであれば、少なくとも一定程度の引き締め的な政策が必要だ」、「物価が1カ月落ち着いただけでは十分ではない。物価安定を取り戻すという仕事をやり遂げる時だ」 --------
7/14 ウォーシュ・FRB議長 「FOMC参加者は、高止まりするインフレを長期にわたって容認することはない。われわれは物価安定の回復に向け、揺るぎない決意を共有している」、「われわれが適切な政策運営を実現すれば、そして実現する所存だが、過去5年間の高インフレは過去のものとなる」米6月のCPI発表を受けて)、「朝発表された統計を見て『任務は完了した』と考える人もいるかもしれないが、それは私の見解ではない」、(トランプ氏から公に批判された場合でも経済指標に基づいて政策判断を行うのかと問われ)「そうする」 --------
7/13 ウォラー・FRB理事 「今週発表されるコアインフレ指標がまたも強い内容となった場合、FOMCは近い時期の金融政策引き締めを検討する必要があるだろう」、「労働市場は安定しており、個人消費は堅調だ。米経済が良好な状態にある。関税やエネルギー価格、AIインフラ整備を背景としたインフレ圧力を受け、金融政策は岐路に立たされている」、「どのように見ても、どの指標で測ろうとしても、インフレ率は今年上昇している」 金利上昇、ドル高、株価下落の一因に。
7/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 (AIが押し上げる需要を最も注視していると述べ)、「これが供給に対して需要を持続的に押し上げ、インフレ圧力につながるのであれば、そうした状況を一時的なものとして見過ごすことはできない」、(インフレ率が自身の基本シナリオよりも持続的かつ大幅に高くなれば)、「金融政策で対応する必要がある」、「一方、そうならずにもっと穏やかな展開となれば、金融政策は適切な位置にあり、今後もその状態が続くと考えている」、「今年後半のコアPCEの伸び率が月0.2%であれば、ディスインフレの進行が続いているとの私の見方と一致する。それを上回れば、インフレがやや根強いことを示す兆候になる」 --------
7/1 ウォーシュ・FRB議長 「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」、「米国の物価安定を実現する。それがこの委員会に課せられた使命であり、われわれの目標でもある。そのための戦術や戦略などについては今後明らかにしていく」、「FRBは非常に長くにわたり独立した中央銀行であり、現在も独立した中銀であり続ける。その点に変わりはない」、(将来的な金利政策に関して)、「フォワード・ガイダンスを示さない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和