「米7月のNFPは、マイナス2.3万人」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 「米7月の雇用統計」が予想を大きく下回ったことで、ドル円は156円68銭まで急落。その後買い戻しも入ったが、年内の利上げ観測は大きく後退。
- ユーロドルでもドル安が進み、ユーロは1.1580まで上昇。
- 株式市場では金利低下を好感し、3指数が揃って上昇。ダウは151ドル高。
- 債券は買われ、長期金利は4.645%台まで低下。
- 金は大幅に上昇し、原油も買われる。
7月失業率 → 4.1%
7月非農業部門雇用者数 → −2.3万人
7月平均時給 (前月比) → 0.1%
7月平均時給 (前年比) → 3.2%
7月労働参加率 → 61.4%
6月消費者信用残高 → 14173b
*********************
| ドル/円 | 156.68 〜 158.39 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1528 〜 1.1580 |
| ユーロ/円 | 181.03 〜 182.28 |
| NYダウ | +151.83 → 54,036.93ドル |
| GOLD | +100.10 → 4,399.70ドル |
| WTI | +0.89 → 78.18ドル |
| 米10年国債 | −0.032 → 4.645% |
本日の注目イベント
- 日 6月国際収支・貿易収支
- 日 7月景気ウオッチャー調査
本日のコメント
「米7月の雇用統計」が予想外に大きく下振れし、労働市場の鈍化を示唆する結果になりました。失業率は「4.1%」で、6月よりも改善していましたが、非農業部門雇用者数(NFP)は「マイナス2.3万人」と、市場予想の「8万人増加」から大きく減少していました。さらに6月分も「5.7万人」から「2万人」、5月分も「12.9万人」から「6.3万人」に、それぞれ速報値から下方修正され、合計で10万3千人が下方修正されたことになります。改めて、「速報値」と「改定値」あるいは、「確報値」との違いの大きさに驚きます。これほど差が出て、しかもその度にマーケットが反応し大きく動くのであれば、例えば、四半期に一度発表するといった方法でもいいのではないかと考えます。ドル円は発表後に大きく売られ、一時は156円68銭と、1円60銭程急落しましたが、その後は157円台半ばまで反発しています。今回の結果で、FRBによる利上げ観測は大きく後退しましたが、それでも一部には失業率の改善を根拠に、一時的との見方もあり、利上げ観測を維持しているところもあります。筆者は、先週末のコメントに、結果が悪くてドルが売られた際に、当局が市場介入を行うといった「合わせ技」の可能性もあるのではと指摘しましたが、どうやら介入はなかった模様です。ブルームバーグは、「日米当局による追加の為替介入が実施されない限り、円は対ドルで緩やかに下落すると予想している」といった見方を紹介し、さらに「日米当局が再び為替介入に踏みきる可能性はあるが、それが今後の米金融政策の方向性に必ずしも影響を与えるとは考えていない。円安基調を変えるには、FRBがインフレ動向に対する評価を明確に転換する必要があるとみている」との見方も紹介していました。今回の「雇用統計」の結果を受け、9月の利上げ確率は「44%」程度まで低下しています。
先週後半、トランプ大統領は「48時間以内に分かる」と述べていましたが、イランとのホルムズ海峡を巡る合意は、破綻して米国が大規模な攻撃をしかけることもなく、かといって、「合意」までの道のりが依然として遠いことも明らかになり、何も進展していません。イランのアラグチ外相は、同国の国営テレビで、「一部の仲介国が交渉再開に向けた環境を整えようとしている」と明らかにし、「現時点では米国と交渉していない。メッセージのやり取りは仲介国を通じて行われている」と述べ、オマーンとの間でホルムズ海峡を巡る新たな航路について会談を行っていることを示唆しました。アラグチ氏は8日には、ペルシャ湾を出入りする船舶向けの暫定航路について、交渉が最終段階に近づいていると述べています。一方で、「合意に至ってもホルムズ海峡が直ちに再開されるわけではない」と警告し、エネルギー供給の正常化は限定的にとどまる可能性も示唆しました。一方オマーンはSNSへの投稿で、交渉は「前向きかつ建設的な雰囲気」の中で進展していると説明。その上で、「航行を巡る合意に向けた外交努力への影響を避けるため、ホルムズ海峡での行動を停止するよう」呼びかけています。またイランは、ホルムズ海峡を巡る合意に米国は加わっていないと主張しており、最終合意に対して米国がどのような対応を取るかは不透明です。トランプ大統領はここ数カ月、ホルムズ海峡の航行は妨げられることなく再開されなければならないと主張し、海峡の再開が実現しなければイランへの追加攻撃も辞さないと警告しています。さらに9日には、イエメンの親イラン武装勢「フーシ」が、サウジアラビアの南部ジザンにあるサウジアラムコの給油所をドローンで攻撃しました。フーシは「サウジによる攻撃の報復だ」としており、今後「サウジとフーシとの間で緊張が続けば、米国とイランとの戦争終結に向けた協議にも影響する可能性がある」(日経新聞)ことになり、足元の状況は、ますます両国の合意が困難になりそうな気配です。
ホルムズ海峡を巡る管理や主導権の在り方で、米国とイランでは認識が大きく異なり、イランが折れない限り、このままでは米国による大規模な攻撃も避けられないような気もします。石油の輸出減少に伴い収入が大きく減少しているイランが妥協してくる可能性もありますが、それでもまだ簡単には交渉のテーブルに着くことはなさそうです。「有事のドル買い」がまだ機能するのかどうか、これからが正念場になります。
本日のドル円は156円50銭〜158円50銭程度を予想します。
佐藤正和の書籍紹介
これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 8/5 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「今後発表される経済指標を見極めながら、今こそ緩やかな利上げを開始するべき時だ」、「政策当局が対応を先送りし、高インフレが定着すれば、より大幅な利上げを余儀なくされる可能性がある」(7月31日)、「現時点ではなお判断できない」、「インフレ率がこのまま横ばいで推移する、あるいは一段と悪化するようであれば、インフレを再び押し下げるため、政策金利を段階的に調整し始める必要があると思う」、(年末までに3回の利上げを実施する可能性があるかとの質問に)、「それは不可能ではない」 | -------- |
| 8/5 | クック・FRB理事 | 「近いうちに持続的なディスインフレの兆候を確認できなければ、私は行動を取る用意がある」、「目標を上回るインフレが5年間続いていることから、高いインフレ率が価格や賃金の決定行動に定着してしまうリスクが高まっている。そうした持続性はわれわれにとって、対処がはるかに困難になる」、「関税の影響が薄れることや、原油価格が下落する可能性、さらにAIブームに関連する一部の圧力低下によって、インフレが和らぎ、より引き締め的な政策は不要になる可能性もある」(それでも)、「この講演から一つだけ持ち帰っていただくとすれば、それは私が物価安定の回復に断固として取り組んでいるということだ。インフレ率を目標へ下げることが最優先であり、議会がFRBに課した2つの使命を達成する上でそれは欠かせない」 | -------- |
| 8/4 | ベッセント・財務長官 | 「問題なのは円の水準だ。それが別の問題を引き起こしたり、競争的な通貨切り下げを招いたりする恐れがある。それは健全ではない」、「円相場の安定は米国だけでなく、アジア地域全体にとっても極めて重要だ」、「日本とは緊密に連絡を取り合っている」、「米経済や米国の納税者の利益にかない、世界経済の安定化にもつながる形であれば、日本を支えるために必要なことは何でもする」、(円安の影響が物価に波及していることを挙げ)、「円安によってエネルギー輸入コストが押し上げられている」、「円が大幅に下落すれば、他の通貨もそれに追随することになる。韓国ウォンで過度な変動が見られている。中国人民元は過小評価されていると考える向きも多い」、(円相場を安定させる上で日本銀行の利上げが必要か問われ)「日銀が取るべき対応について先回りして判断するつもりはない」、(植田日銀総裁とは15年来の付き合いがあるとし)、「必要なことは実行すると信じている。介入に続いて、政策面での後押しが必要になる。そうした対応が行われると強く確信している」 | -------- |
| 8/3 | ベッセント・財務長官 | (協調介入を実施したことについて)「財務省および日本銀行の当局者と緊密に連絡を取り合い、状況を注視し続けている。必要であれば、さらなる協調介入をためらわない」、「米国は、円の著しい過小評価を是正するため、日本が断行した市場対応および金融政策を強く支持する」 | -------- |
| 8/3 | 片山・財務相 | (為替介入を実施したことについて)「最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したものだ」 | -------- |
| 7/29 | FOMC声明文 | 「経済活動が堅調なペースで拡大しつつある。設備投資と生産性の伸びが力強い。(インフレ率は、)「2%目標に比べて高止まりしている」 | ドル円は163円台後半から下落。株式と債券も売られる。 |
| 7/29 | ウォーシュ・FRB議長 | 「一部の家計や企業、市場関係者の間では、5年にわたる高インフレを受けて、FRBは2%を超えるインフレ率を事実上容認しているとの誤った認識が根強く残っている。改めて強調したい。インフレの緩やかな目標など存在しない。少なくとも、この委員会の下では、暗黙の緩やかな目標も存在しない」、「インフレ率が見通し期間を通じて高止まりするようであれば、金利はその対応策の一つになり得るが、それだけが手段というわけではない」、「市場に影響を与えようとする姿勢を一部後退させたことで、市場は自ら判断を下した」と説明。「米国債の利回り曲線全体で名目金利に対する市場の見方は上方修正された」 | 短期ゾーンの金利が低下し、中長期ゾーンの金利が上昇。 |
| 7/23 | ラガルド・ECB総裁 | 「利上げを検討する必要はないか自問した中銀総裁も一部いた」、「現時点では待つことが適切だと判断した。今後数週間の情勢の推移と、その間に公表されるデータを極めて注意深く見守る」、「インフレ見通しには上振れリスクがある。エネルギーショックがさらに強まる恐れがあり、他の物価や賃金への影響も現在の想定より大きくなる可能性がある。エネルギー価格の高止まりが長引くほど、より幅広い物価の押し上げにつながるだろう」、「基調的な物価上昇率は現時点では抑制されている」、「6月のユーロ圏総合インフレ率は2.8%へ鈍化し、市場予想も下回った。しかし、今月に入り戦闘が再開したことで、政策当局者の間では金融引き締めをまだ終わらせることができない可能性が認識され始めている」 | ドル高の流れの中、ややユーロ売りに拍車。 |
| 7/16 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「物価安定と完全雇用というFRBの二つの使命を踏まえると、政策金利を現行よりやや高い水準に引き上げた方が、見通しとリスクの均衡をより適切に保てると現時点では考えている」、「インフレが自律的に2%まで戻る方向にないのであれば、少なくとも一定程度の引き締め的な政策が必要だ」、「物価が1カ月落ち着いただけでは十分ではない。物価安定を取り戻すという仕事をやり遂げる時だ」 | -------- |
| 7/14 | ウォーシュ・FRB議長 | 「FOMC参加者は、高止まりするインフレを長期にわたって容認することはない。われわれは物価安定の回復に向け、揺るぎない決意を共有している」、「われわれが適切な政策運営を実現すれば、そして実現する所存だが、過去5年間の高インフレは過去のものとなる」米6月のCPI発表を受けて)、「朝発表された統計を見て『任務は完了した』と考える人もいるかもしれないが、それは私の見解ではない」、(トランプ氏から公に批判された場合でも経済指標に基づいて政策判断を行うのかと問われ)「そうする」 | -------- |
| 7/13 | ウォラー・FRB理事 | 「今週発表されるコアインフレ指標がまたも強い内容となった場合、FOMCは近い時期の金融政策引き締めを検討する必要があるだろう」、「労働市場は安定しており、個人消費は堅調だ。米経済が良好な状態にある。関税やエネルギー価格、AIインフラ整備を背景としたインフレ圧力を受け、金融政策は岐路に立たされている」、「どのように見ても、どの指標で測ろうとしても、インフレ率は今年上昇している」 | 金利上昇、ドル高、株価下落の一因に。 |
| 7/9 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | (AIが押し上げる需要を最も注視していると述べ)、「これが供給に対して需要を持続的に押し上げ、インフレ圧力につながるのであれば、そうした状況を一時的なものとして見過ごすことはできない」、(インフレ率が自身の基本シナリオよりも持続的かつ大幅に高くなれば)、「金融政策で対応する必要がある」、「一方、そうならずにもっと穏やかな展開となれば、金融政策は適切な位置にあり、今後もその状態が続くと考えている」、「今年後半のコアPCEの伸び率が月0.2%であれば、ディスインフレの進行が続いているとの私の見方と一致する。それを上回れば、インフレがやや根強いことを示す兆候になる」 | -------- |
| 7/1 | ウォーシュ・FRB議長 | 「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」、「米国の物価安定を実現する。それがこの委員会に課せられた使命であり、われわれの目標でもある。そのための戦術や戦略などについては今後明らかにしていく」、「FRBは非常に長くにわたり独立した中央銀行であり、現在も独立した中銀であり続ける。その点に変わりはない」、(将来的な金利政策に関して)、「フォワード・ガイダンスを示さない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



