今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「日銀12月会合での利上げへ一歩踏み出す」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大幅に売られ、一時154円67銭を付ける。米経済指標が下振れし、朝方はドルが売られたがその後は米金利の上昇に支えられ155円台半ばまで反発。
  • ユーロドルは買われ、1.1653まで上昇。
  • 株式市場では3指数が揃って反落。日本株が大きく下げたことに加え、利益確定の売りが優勢となり、ダウは427ドル下落。
  • 債券も売られ、長期金利は4.08%台に上昇。
  • 金は3日続伸。原油も反発。
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11月ISM製造業景況指数 → 48.2
11月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 52.2
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ドル/円 154.67 〜 155.52
ユーロ/ドル 1.1607 〜 1.1653
ユーロ/円 179.96 〜 180.60
NYダウ −427.09 → 47,289.33ドル
GOLD +19.90 → 4,274.80ドル
WTI +0.77 → 59.32ドル
米10年国債 +0.075 → 4.088%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7−9月期経常収支
  • 豪 豪10月住宅建設許可件数
  • 欧 ユーロ圏10月失業率
  • 欧 ユーロ圏11月消費者物価指数(速報値)
  • 米 11月自動車販売台数

本日のコメント

昨日の植田日銀総裁の講演を境にドル円は一気に円高に振れ、NYでは朝方154円67銭までドルが売られる場面がありました。総裁は講演で「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」と述べ、さらに午後の会見では、特に重視していた関税政策などに伴う米国経済に関する不確実性が「数カ月前よりかなり低下した」との認識も示しました。利上げには積極的ではないと見られる高市政権との関係にも触れ、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」と説明。そして、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」と述べていました。その上で総裁は、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」と、緩和政策を支持する高市政権に対するメッセージとも受け取れる説明をしていました。

さらに、円安基調にある為替動向については、「企業の賃金・価格設定行動が積極化する下で、過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」と指摘。「こうした動きが、基調的な物価上昇率に影響する可能性に留意が必要」との認識を示しました。昨日の日本市場では植田総裁の講演を受けて今月の利上げ観測が高まり、長期金利は一時「1.875%」と2008年以来の高水準を更新しました。ドル円は155円台半ばに下落。株式市場は大幅に反落し、日経平均株価の下げ幅は一時1000円を超える下落を見せました。

これまで何度も利上げを巡り慎重な姿勢を見せ、その度に市場は「円売り」で反応してきましたが、総裁もようやく利上げに向けた一歩を踏み出したと受け止めています。今年最後の「金融政策決定会合」は18−19日に開催されます。ここでは総裁も含め9人の委員が協議を行い、多数決で政策が決められます。まだ、利上げが正式に決まったわけではありませんが、多くの審議委員はすでに利上げには前向きで、最も保守的と見られていた植田総裁が利上げに踏み出したことで、今会合での利上げはほぼ確実と言えます。OISでの利上げ確率はさらに上昇し、今朝の時点では「86.2%」です。日銀が今月利上げに踏み切り、0.25ポイントの利上げを決めたとしても、政策金利はまだ「0.75%」と、冷静に考えれば「主要国の中では圧倒的に低い」という状況は変わりません。ドル円の動きを見ると、154円台半ばまで売られましたが、ここは日足で見れば「一目均衡表」の基準線がある辺りで下げ止まったことが見て取れます。従って、「今回の利上げの示唆」に反応した動きを持って「ドル高基調に転換」と考えるのは早計と言えるでしょう。もちろん、「トレンド転換の第一歩」であるかもしれませんが、現時点ではまだ判断はできないということです。

本日のドル円は154円50銭〜156円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和