今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FRBの利下げペース、今後鈍化か?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間から上値を重くし、NYでは米金利の低下もあり、154円83銭まで下落。ただ、本日「11月の雇用統計」が発表されることもあり、値幅は60銭程度にとどまる。
  • ユーロドルは続伸。1.1769まで買われ、およそ2ヵ月ぶりの高値を記録。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。FOMCメンバーから今後の利下げペースが緩慢になる可能性が示唆されたことが背景。
  • 債券は反発。長期金利は4.17%台に低下。
  • 金は3日続伸。一方、原油は3日続落。
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12月NY連銀製造業景況指数 → −3.9
12月NAHB住宅市場指数 → 39
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ドル/円 154.83 〜 155.39
ユーロ/ドル 1.1739 〜 1.1769
ユーロ/円 181.96 〜 182.61
NYダウ −41.49 → 48,416.56ドル
GOLD +6.90 → 4,335.20ドル
WTI −0.62 → 56.82ドル
米10年国債 −0.012 → 4.172%

本日の注目イベント

  • 豪 豪12月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 独 独12月製造業PMI(速報値)
  • 独 独12月サービス業PMI(速報値)
  • 独 独12月ZEW景気期待指数
  • 欧 ユーロ圏12月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏12月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏10月貿易収支
  • 英 英12月製造業PMI(速報値)
  • 英 英12月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英11月失業率
  • 英 英ILO失業率(8−10月)
  • 米 11月雇用統計
  • 米 10月小売売上高
  • 米 12月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 12月S&Pグローバル総合PMI(速報値)

本日のコメント

ドル円は昨日予想したように、一時は155円台を割り込み、154円83銭まで売られました。東京市場では株価の大幅下落がドルの重石となり、NY市場では米金利の低下がドル売りにつながりました。ただ、その後はいつものように155円台前半まで反発しています。NY株式市場では引き続きハイテク株が売られ、さらにFOMCメンバーから、今後の利下げペースが緩和される可能性が示唆されたことで3指数とも下落しています。

NY連銀のウィリアムズ総裁は、雇用に関するリスクが高まり、インフレリスクが幾分後退している中、先週の利下げ決定を受け、金融政策は来年に向けて良い位置にあるとの見解を示しました。ウィリアムズ氏は15日、ニュージャージー州でのイベントで「金融政策はこれらリスクの均衡を図ることに非常に注力している。そのためにFOMCはやや景気抑制的な金融政策スタンスを中立に向けて移行させた」と発言。さらに、「こうした措置により、金融政策は2026年に向けて良い位置にある」との認識を示しました。インフレ率については来年2.5%をわずかに下回る水準に鈍化し、27年にはFRB目標の2%に達するとの見通しを明らかにしました。同総裁は「1年に及ぶ不確実な時期を経て、底堅さを備えた状態で2026年を迎えることになる」とし、「経済は堅調な成長と物価安定へと戻る見込みだ」と述べました。これら一連の発言を受け、市場は今後FRBによる利下げペースが鈍化すると受け止めたようです。

また、ボストン連銀のコリンズ総裁は、先週のFOMCでは利下げを支持したものの、その決定は「際どい判断だった」と述べていました。インフレの高止まりに対する懸念が依然としてあるためだということです。コリンズ氏は「11月の時点で私の分析では政策金利を据え置く方向に傾いていたが、12月の会合までに入手可能となった情報にはリスクバランスがやや変化したことが示唆された。インフレがさらに顕著に上昇するというシナリオは、やや可能性が低くなった」と指摘。「長期的なインフレ期待を示す一部指標の低下と、実効関税率の低下を示唆する最近の通商政策変更、労働市場の軟化を反映している」と説明しています。コリンズ氏はその一方で、「5年近く続いている高インフレを踏まえ、インフレの持続性については引き続き懸念している」とも述べていました。2025年のFOMCで投票権を持つコリンズ総裁は、今年実施された3回の利下げをすべて支持していましたが、来年のFOMCでは議決権を持たないことになります。

一方で、次期FRB議長の有力候補であるミランFRB理事は、NYのコロンビア大学でのイベントで、「パンデミック後には大きなインフレが起こり、物価が上昇した。米国の家庭は依然その経験に困惑し、アフォーダビリティー(暮らし向き)に不満を抱いているのは当然だが、物価は現在、高めの水準にあるとはいえ、再び安定している。政策はこの現実を反映すべきだ」と述べ、労働市場については、「労働市場の悪化は急速かつ非線形に進行することがあり、その流れを元に戻すのは困難だというのが経験則だ」と指摘。さらに「金融政策は数四半期の時間差をもって機能するという背景もあり、私が主張するような、より迅速な利下げが中立的な政策スタンスに近づく上で適切だ」と語っていました。

ロシアとの和平案を巡り、欧米からの安全の保証があれば、NATOへの加入を断念する用意があると、「苦渋の決断」を行ったゼレンスキー大統領は、自国の交渉団と米国代表団を相手に15日、ベルリンで対ロシア停戦協議を行いました。ゼレンスキー氏の側近であるウメロフ国家安全保障・国防会議書記は協議終了後、「実質的な進展があった」と述べ、15日中にも米国と合意に達する可能性があるとの楽観的な見方を示しました。米国側も、「全体の90%で意見の一致に近づいている」と説明。作業部会レベルの協議が今週末に米国のマイアミで再開される可能性があると明らかにしました。また、トランプ大統領も、同協議終了後にホワイトハウスで、「ウクライナとロシアの戦争終結にかつてなく近づいていると」述べています。ただブルームバーグは、「米国が主導した過去の協議が決裂した経緯を踏まえ、慎重であるべきだ」と報じていました。ドイツのメルツ首相は会合終了後、「米欧による実質的で法的・物質的な安全の保証によって停戦を確保すべきだとの合意が成立した」と述べ、「これはこれまでになかった、真に広範で実質的な合意だ」と評価していました。米国主導の和平案をウクライナが概ね受け入れたことで、まもなく4年目に突入するロシアとの戦争もようやく終結に向かい、ウクライナに本当の春が来る可能性が高まってきました。

日銀が15日に発表した企業の2026年度「賃上げスタンスの動向」によると、大半の先では高い伸びとなった今年度並みとの回答だったことが判明しました。日銀は本店と32支店を通じて情報収集したようで、日銀が賃上げに関するヒアリング情報をこうした形で切り出して公表することは初めてとみられます。賃上げの動向は、日銀が利上げを判断する際の重要項目の一つであり、今回の結果が利上げをさらに後押しするものとみられます。

本日のドル円は154円50銭〜156円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/15 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融政策はこれらリスクの均衡を図ることに非常に注力している。そのためにFOMCはやや景気抑制的な金融政策スタンスを中立に向けて移行させた」、「こうした措置により、金融政策は2026年に向けて良い位置にある」、「1年に及ぶ不確実な時期を経て、底堅さを備えた状態で2026年を迎えることになる」、「経済は堅調な成長と物価安定へと戻る見込みだ」 株式市場では主要3指数が下落。
12/15 コリンズ・ボストン連銀総裁 「11月の時点で私の分析では政策金利を据え置く方向に傾いていたが、12月の会合までに入手可能となった情報にはリスクバランスがやや変化したことが示唆された。インフレがさらに顕著に上昇するというシナリオは、やや可能性が低くなった」、「長期的なインフレ期待を示す一部指標の低下と、実効関税率の低下を示唆する最近の通商政策変更、労働市場の軟化を反映している」、「5年近く続いている高インフレを踏まえ、インフレの持続性については引き続き懸念している」 株式市場では主要3指数が下落。
12/15 ミラン・FRB理事 「パンデミック後には大きなインフレが起こり、物価が上昇した。米国の家庭は依然その経験に困惑し、アフォーダビリティー(暮らし向き)に不満を抱いているのは当然だが、物価は現在、高めの水準にあるとはいえ、再び安定している。政策はこの現実を反映すべきだ」、「労働市場の悪化は急速かつ非線形に進行することがあり、その流れを元に戻すのは困難だというのが経験則だ」、「金融政策は数四半期の時間差をもって機能するという背景もあり、私が主張するような、より迅速な利下げが中立的な政策スタンスに近づく上で適切だ」 --------
12/10 パウエル・FRB議長 「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」、(次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して)、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」 政策金利を0.25ポイント引き下げことで、ドル円は156円台半ばから155円80銭まで下落。
12/10 FOMC声明文 「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」 --------
12/9 ハセット・NEC委員長 (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 --------
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和