高市氏が自民党総裁選で勝利し、その後国会での首相指名を経て本邦初の女性首相に就任してからちょうど1ヵ月が経過しました。女性初というだけではなく、これまでの歴代首相に比べ、発言も歯切れがよく、国民に「何か、やってくれそうだ」といった期待も抱かせてくれています。そのせいか、支持率も直近では80%を超えているようで、国民の期待値の高さがうかがえます。金融市場ではさらに高市効果が鮮明で、ドル円はその前の週のNYクロージングと比べると、7円(4.7%)ほどドル高が進み、株式市場ではさらにその効果が大きく、日経平均株価はこの間6600円(13.48%)以上高騰し、これまでにない動きを見せています。まさに「高市トレード」を象徴する動きです。ただ、期待が先行している部分は否めません。今後は、出来るだけ早い時期に公約である「物価高対策」の具体的内容を示す必要があります。現在の高い期待値を維持するためには、遅くとも年内にはその内容を公表しなければならないと思います。財務大臣に就任した片山氏は、旧大蔵省出身にもかかわらず、「必要なら国債の増発もあり得る」と述べ、「省益よりも国益」を優先する姿勢を見せていることも、高市内閣の支持率の高さにつながっているようです。財政の積極的支出についても、「責任ある積極財政」を掲げる高市氏です。これまでの総花的でバラマキ的な財政出動とは一線を画しており、人工知能(AI)・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティーを戦略分野として挙げ、積極投資を引き出す支援策を講ずる考えを示しています。全体的に見れば、外交を含め「合格点」だと、多くの人が認めるところです。
ただ、それでも短期的にはドルも株も買われ過ぎとの懸念は消えません。ドル円の上記期間における上昇は、長期的なトレンドを示す「200日移動平均線」からの乖離率が4.7%ほどで、日経平均株価に至っては先週末の時点で、同平均線からは30%を超えており、いつ大きく反落してもおかしくはない状況です。ただ日本株の上昇については「これまでの相場の常識では測れない動きだ」という専門家の意見も、否定できない部分もあります。ドル円を見る上でも日米の株価の動きからは目が離せません。株価の大幅下落は、格好のドル売り材料にされるからです。「今日のアナリストレポート」でも触れたように、週明けの東京市場の動きでも、ドル円は154円48銭まで買われましたが、ここ数日と同じように154円台半ばを上抜け切れずに、153円台後半まで押し戻されています。同水準が徐々に壁になりつつあります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
