今朝の6時の時点ですでに106ドル台まで急騰していた「WTI原油価格」はその後も買いが止まらず、午後の本稿執筆時点では何と「115ドル台」までさら上昇しています。先週末比では27%ほど上昇しました。中東情勢の緊迫化で主要産油国が相次いで生産を抑制し、重要な海上輸送路が事実上閉鎖となる中、米国は紛争の一段の拡大を示唆していることが背景です。通常、WTIよりも高値で取引される「北海ブレント原油」も一時28%高の118ドル台を付けました。ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、貯蔵施設が限界に近づく中、UAEとクウェートは減産を開始。イラクも先週、生産停止に着手しました。原油価格に詳しい専門家は、「心理的節目である100ドルは、紛争が長期化し、タンカーに積み込みできず、貯蔵施設が満杯となることで原油生産が抑制される中、より高い水準に向かう過程の短期的な目標に過ぎない可能性がある」と述べています。紛争はインフレ危機への懸念を強めており、米国の小売りガソリン価格は24年8月以来の高水準に達し、年後半に中間選挙を控えるトランプ氏と共和党にとって大きな試練となっています。またこの先、FRBにとっても難しい舵取りを迫られます。先週末に発表された「2月の雇用統計」では、失業率の上昇に加え、非農業部門雇用者数(NFP)も前月比増加ではなく、9万2千人の減少でした。さらに直近2ヵ月分も下方修正されています。トレンドで見ても、米労働市場の鈍化傾向は明らかで、雇用者側はトランプ政権の政策の行方を不安視し、今後はさらに採用には慎重になると見られます。労働市場の減速はFRBに追加利下げを促しますが、原油価格の急騰に直面していることから、そう簡単に利下げできない可能性もあります。今月は19日(木)にFOMC会合があり政策金利が決定されますが、今回は据え置きとしても、パウエル議長の発言がかなり注目されそうです。
ドル円もやはり上昇しました。158円台では介入警戒感がありながらも、158円90銭近辺まで円が売られ、159円が視野に入ってきました。上でも述べたように、原油価格がこれほど短期に急騰する中では、止む得ないところです。159円付近では、これまでも述べてきたように、さらに介入警戒感が高まりますが、個人的には介入は難しいのではないかと予想しています。原油価格の高騰と円安が、輸入物価をさらに押し上げる可能性が高いと思われます。これ以上のインフレ再燃を防ぐには「利上げ」が必要ですが、今日は日経平均株価が大きく下げています。一時は先週末比4200円も下げる場面がありました。もし利上げを行えば、株価にとってはさらにネガティブとなり、株価を押し下げる可能性もあります。そしてそれは、積極財政を柱に、経済成長を図ることを目指している高市政権にとっては逆風となります。日銀が政治的配慮を考えるとすれば、この局面では簡単に利上げは出来ないのではないかと考えます。足元では、ドル円を動かす最大のドライバーは、金利差でも、株価の動向でもなく、原油価格の動きです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
