今週から日米の金融政策会合が開かれますが、ドル円は膠着状態が続いています。
ここ2週間は154円台から156円台での動きでしたが、その多くは155円台での取引に終始しています。「米国の利下げと日本の利上げ」はほぼ織り込まれていると思われます。ただ、それでもドル円は11月20日に記録した今年の高値である157円89銭からわずか2円ほど下げた水準で推移しています。特に高市政権が発足した10月の初旬以来ドル高傾向は維持されていると見ています。すでに聞きなれた「責任ある積極財政」が今後も継続されると思われ、専門家の中には「このままでは格下げのリスクが高い」と指摘する声もあります。アベノミクスで提唱された「異次元緩和」と「超低金利」政策では、結局デフレからは脱却できたものの、そのデフレの終焉も自力ではなく、米国を中心とするインフレの加速が流れを変えてくれたと見ています。そしてその政策のツケは大きく、長期金利が2%近くまで上昇した現在では、「イールドカーブ・コントロール」の名のもと、大量に国債を購入した日銀の「含み損」も膨大な金額になると推測されます。いずれ日経新聞辺りがその額についての記事を掲載するのではないかと思います。日銀は含み損については「償還まで保有するため、含み損は解消される」と、述べていますが、その前に中央銀行の信頼性が棄損されれば、これも円売りにつながる可能性があります。
ドイツの10年物国債利回りが上昇し、3月以来の高水準を付けています。ECBのシュナーベル理事が、「次の政策金利の動きが利上げになるとの投資家の見方に違和感はない」と発言したことに反応した格好です。シュナーベル氏はフランクフルトのオフィスで先週行ったインタビューで、現水準の金利が当面は適切だろうとしつつ、個人消費や企業投資、防衛やインフラへの政府支出急増は景気を押し上げるだろうと指摘。「市場と調査の参加者は近いうちでないにしろ、次の金利の動きが利上げになると予想している。そうした見通しにむしろ違和感はない」と語っていました。そのシュナーベル理事が次期ECB総裁に就く可能性があります。「現在のラガルド総裁の任期は2027年10月までで、ECBの次期総裁を巡っては、オランダ中銀のクノット前総裁やECB政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連銀総裁、スペイン銀行(中銀)の前総裁を務めた国際決済銀行(BIS)のデコス総支配人が最有力候補と考えられている」(ブルームバーグ)とのことです。
1998年にECBが設立されて以来、ドイツから同総裁に選ばれた人はいません。現総裁のラガルド氏はフランス人で、フランスはこれまでに2人の同総裁を輩出しています。域内ではドイツの経済力が圧倒的に強く、ユーロ圏を統括する立場のECB総裁にドイツ出身の人物が就任することに域内からは「強すぎる」ため、反対意見が根強くありました。シュナーベル理事はインタビューで、総裁への就任を尋ねられ、「求められれば、受ける用意がある」と答えています。ドイツ連銀は、そもそも過去の経験を踏まえてインフレに対する警戒感が非常に強く、シュナーベル氏もECB内では「タカ派」として知られています。仮に、同氏が総裁に就任するようだと、利上げ観測を背景にユーロが上昇する可能性があります。ECB創設以来30年が経過する2027年には、そろそろドイツ出身のECB総裁が誕生してもおかしくはありません。
今週からは日米の金融政策発表となります。年内の政策スタンスについては、ほぼ市場は読んでいます。そのため市場は、来年以降のスタンスを読み解こうとアンテナを張り巡らせています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
