財務省が先週5日に発表した「外貨準備等の状況」によれば、5月末の外貨準備高のうち証券は前月末比756億ドル(約12兆円)減の9317億ドルでした。この内容は先に発表された、ドル円相場が対ドルで160円台に乗せる中、政府・日銀が5月27日までの1カ月間に11兆7349億円の為替介入(ドル売り・円買い)を実施していたことと整合します。今回のデータには保有証券の詳細な内訳は示されてはいませんが、市場では外貨準備高の約7割が米国債に投資されていると推定されています。日本の通貨当局が介入資金を捻出するために米国債を売却した可能性が高いことが示唆されていますが、今後も介入を続けるとすると、運用している米国債を売却することで債券の価格が下がり、金利が上昇してしまうことになり、そうむやみに介入は出来ないとも言えそうです。
ベッセント財務長官は今年初め、日本国債の下落が米国債市場にも波及したとの見方を示し、その影響で米金利が上昇したことに不快感を示した経緯があります。海外の米国債保有者による大規模な売りに神経質になっていることを示唆しており、日本政府にも圧力になっているとみられます。フランス・パリで先月開催された主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の際、日本の財務省幹部は、為替介入の際に米国債を売却する必要が生じた場合は、結果的にドル高を招かないような対応を講じる考えを示していました。米国の債券市場は、世界最大の発行規模を誇る上に、流動性が極めて高く、いつでも売買できることもあって、各国はドルで保有する外貨準備金を、短期のTBや10年債で運用しているとされています。ブルームバーグによると、日本の5月末の外貨準備高は全体で前月末比5.6%減の1兆3059億ドル(約209兆円)です。減少額と減少率はいずれも比較可能な2000年4月以降で最大となっています。外貨準備は日本が再び為替市場へ介入する必要が生じた場合に活用できる原資の大きさを示していますが、介入のもう一つの原資となる預金は1622億ドル(約25兆円9520億円)です。4月末からの介入で11.7兆を使ったことを考えると、米国債を売らずに同規模の介入をするとすれば、あと1回程度しかできないことになります。
良好な雇用結果を受け、ドル円は先週末のNYで160円34銭までドル高が進み、週明けの東京市場でも一時160円39銭まで買われる場面がありました。4月30日午後、ちょうどドル円が160円台半ばあたりに達した辺りから政府・日銀が市場介入に踏み切りました。円売りの動きは緩やかですが、確実に継続されています。財務省からは今のところ、前回のような介入示唆する発言はありません。来週16−17日には日銀金融政策決定会合が開催され、ほぼ利上げに動くと予想していますが、0.25ポイントの追加利上げだけでこの円売りが止まるとも思えません。円売りが進む中でも、ボラティリティは低下傾向で、投資家の判断もここが正念場になるのかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
