先週金曜日の午前中、唐突に「日米の財務相は12日、為替介入は為替レートの過度な変動に対処するためのものに限定するとする共同声明を発出した」といったニュースが流れました。このニュースで相場が動くことはありませんでしたが、円安が大きく進んでいるわけでもないこのタイミングに何故?といった疑問は残りました。共同声明によると、両財務相は為替市場への介入を検討する場合、「過度な変動を伴う、また無秩序な減価・増価への対応として等しく適切と考えられるとの想定の下、為替 レートの過度の変動や無秩序な動きに対処するためのものに留保されるべき」だとの認識で一致した、との内容でした。声明の内容は特段これまでと変わったものではなく、2024年4月に当時のイエレン財務長官が述べていた内容に近いものでした。当時のイエレン氏は「市場が決定する為替レートを持つ大国にとって、介入はめったにない状況に限定されるべきだ」、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と述べていました。(2024年4月25日)敢えてこのタイミングで出した共同声明の意図は依然不明ですが、為替介入を行う場合の認識の再確認だったのかもしれません。
いよいよ明日17日にはFOMC会合が開催され、今回の会合では利下げ決定はほぼ確定です。そして、注目されるのは、引き下げ幅と会合後のパウエル議長の今後の利下げに対するスタンスです。その内容次第ではドルが売られることも、買われることもありそうです。今回は、FOMC会合での投票権を有するメンバー構成も重要です。先ずは、先に辞任したクーグラー理事の後任に指名されたミラン氏が会合に出席できるのかどうかです。米上院本会議は15日夜、ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の理事就任について表決を行い、賛成多数で承認しました。上院本会議での表決は賛成48、反対47と僅差での承認となりました。トランプ大統領がFOMC会合に利下げ圧力を強める中で、上院共和党は会合前の承認を急いだと報じられています。これにより、ミラン氏は16、17日に開かれるFOMC会合に「FRB理事として出席」できる見通しとなりました。次に、トランプ大統領がクックFRB理事の解任を目指し、同理事が解任の無効を訴える訴訟についてですが、ワシントンの連邦高裁は、「訴訟が進行している間は解任を差し止めるとした下級審の判断」を支持しました。同高裁は、クック理事が当面は職務を継続できると判断。賛成2、反対1の判断により、「クック理事は16、17両日の会合に出席し、政策金利を巡る投票に参加できる見通し」となりました。この判断を受け、トランプ氏は連邦最高裁に介入を求めると予想されます。会合では、投票権を持つメンバーは議長を含め12名です。投票権を持つ地区連銀総裁は5名で、NY連銀総裁だけは常に投票権が与えられ、他の投票権を与えられる4地区連銀総裁は残りの11地区連銀による輪番制です。従って、残りの6名が副議長と理事で、ミラン氏が加わることで、そのうち3名が「トランプ派」ということになります。当然この3名は、トランプ氏の意向を受けて大幅利下げを要求することになり、50bpの利下げを予想する人の根拠にもなっています。まさに予断を許さない状況かと思われます。
最後は日銀の決定会合です。ブルームバーグは、すでに「日銀は5会合連続で金融政策維持へ」との見出しで、政策金利の据え置きを報じています。ただそれでも、「複数の関係者によると、経済・物価が見通しに沿って推移している中で、日銀は年内に利上げの可能性を引き続き排除していない。トランプ米政権による関税政策の影響や、10月4日の自民党総裁選を経て誕生する次期政権の政策など政策判断に重要な材料が、今秋以降にそろってくるとみている」とし、年内利上げの可能性はあると伝えています。筆者も、今回はなく10月利上げを予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。