米ジャクソンホールで行われるウォーシュFRB議長の講演は、事前にフォワードガイダンスには消極的なスタンスを取っていたことから、マーケットを動かすほどの発言はなく、無風に終わる可能性が予想されていましたが、実際には、利上げに直接言及はなかったものの、「タカ派的」な内容だったことで、ドルが買われ、株式と債券が売られました。ドル高が進んだことで、このところ上昇基調だった金(きん)も大きく売られています。その流れを引き継いだ週明けの東京市場では、同じように株と債券が売られ、日経平均株価は一時1500円を超える下落。長期金利は2.95%まで上昇しました。ただ、ドル円は介入警戒感も強く、1ヶ月ぶりのドル高水準ということもあり、実需のドル売りに押され、159円70銭台まで押し戻されています。先週末のNYでは160円20銭までドルが買われたものの、上昇基調ながらまだドル高が大きく進む展開ではなさそうです。それでも「一目均衡表」では、日足より短い時間足では全てで「3役好転」を示現しており、ややドル買いが優勢な形に変わっています。
ウォーシュ議長のジャクソンホールでの詳しい講演内容が入手できました。ウォーシュ氏は講演の最初で、「今朝の講演で何をお話しするか、簡単にご紹介しましょう。アウトラインと呼んでも良いですし、登山地図と呼んでもよいでしょう。ただし、『フォワードガイダンス』とは呼ばないでいただきたい」と述べ、最初にくぎを刺していました。その上で、「フォワードガイダンスは、世界金融危機の際に私と同僚たちが導入した政策手段です。当時は不可欠であり、大々的に導入しました。しかし、過去の危機の遺産と同様に、この慣行はその役割を終えてなお続き過ぎていると私は考えています。平時において、フォワードガイダンスの役割は限定的かつ慎重であるべきです。そうでなければ、明確性を目指しながらかえって曖昧さを生み出しかねません。政策協議を過度に開示し、将来の決定に過度にコミットすることで、市場や企業、家計を誤った方向に導く可能性があります。さらに政策担当者が金利経路について事実上の約束をしてしまうと、いざ判断が必要になった時、自らの自由度を狭めることになります」と、明快にFRBによる過度の情報開示を否定していました。市場関係者にとって、フォワードガイダンスは「サプライズ」を避け、不必要な混乱を避ける意味で必要かと考えていますが、ウォーシュ氏の説明にも納得させられる部分はあります。同氏が議長でいる間は、政策変更時にこれまで通りのメッセージがFRBから発信されることはなくなる可能性が高いと、心しておく必要があります。
今週の焦点は言うまでもなく、4日(金)の「米8月の雇用統計」です。7月分は「マイナス2.3万人」だった非農業部門雇用者数(NFP)は「5.5万人のプラス」と予想され、労働市場は巡航速度を保っていると観られています。また、失業率は「4.1%」と、変わらずとの見方です。前回のNFPのマイナスはサプライズでしたが、今回は予想通りであってもドル高に作用する可能性があるのではないかと、個人的には考えています。労働市場が堅調であれば、FRBの関心は「インフレ」だけに集中できるからです。もちろん予想を上回る結果であればドル高材料になります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
