「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、報道ではイラン戦争の終結に向けた楽観的な見方も多く、市場ではそれを先取りする動きも見られています。金価格は先週末比53ドル程上昇し、原油価格は大きく下げています。WTI先物は一時5.9%安の90.87ドルまで下げ、北海ブレント先物は97.64ドルで推移しています。また、先週2.8%まで上昇した日本の長期金利も上昇が一服。2.705%前後で推移しています。いずれも、戦争終結の際に見られると思われる動きと捉えることができます。ところが、ドル円は今日も一時159円台に乗せる場面もあり、「円売り傾向」が止む気配はありません。戦争が終われば、油に弱い日本にとって、貿易収支の改善やインフレの鈍化など、石油にからむあらゆる製品の目詰まり解消と価格下落につながり、「円の買い戻し」が出やすい状況になりますが、実際には目立った円の買い戻しは起きていません。こうなると、円が売られている要因は、「石油」だけではないということになります。やはり根底には日本の財政悪化懸念や日米金利差が大きく影響しており、これらは一朝一夕には解消されないと、為替市場は見ているのかもしれません。
先週22日、ケビン・ウォーシュ氏はパウエル氏に代わって新しいFRB議長に就任しました。同日、ホワイトハウスでの式典で、就任宣誓式を行い数十年ぶりとなる大規模なFRB改革を進めると表明しています。就任宣誓後、同氏は「あらゆる層の米国民の生活水準を引き上げるような比類なき繁栄を実現することは可能だ」と述べ、「FRBの責務は物価安定と最大雇用の実現だ。われわれが知恵と明確さ、独立性と決意を持ってそれらの目標を追求すれば、インフレは低下し、成長は力強くなり、実質所得は増えるだろう」と述べていました。ウォーシュ氏はトランプ大統領の強い推薦により議長に就任しており、トランプ氏の意向に沿った政策を推進するのではと予想されていますが、現時点ではそのほど「トランプ色」は見せていません。トランプ氏も式典で「私はケビン(ウォーシュ氏)に完全に独立していてほしい。独立した立場で素晴らしい仕事をしてほしい。私を見る必要も、他の誰かを見る必要もない。自分のやり方で素晴らしい仕事をしてほしい」と述べました。これまでのトランプ氏からすれば、失礼ながら極めて正当的でりっぱな言葉です。できたらこの言葉を在任中のパウエル氏にも贈って欲しかったと思います。
今週はイラン戦争の終結に向けた大きな進展があるのではと予想していますが、そうでない場合には、逆にイランに対する大規模な攻撃があるかもしれません。159円台は介入警戒感が強く、依然として重い動きとなっていますが、仮に大規模な攻撃となった場合には「有事のドル買い」が加速し、再び160円台乗せもないとはいえません。そうなると当局の介入を再度呼び込む形になりそうですが、介入の効果は限定的だと思われます。停戦合意がなされた場合、ようは、ドルがどこまで売られるのか、そこが焦点になりそうです。東京株式市場は連日活況を見せていますが、為替市場の方はレンジ相場が続いているため、ストレスが溜まる相場展開です。それだけに、動き始めたら予想以上の値幅が出ることもありますので、心しておきたいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
