ドル円は先週157円89銭まで上昇し、160円も視野に入ってきたとの見方もあります。それもあってか、片山財務相のけん制発言も口調がやや厳しめになってきました。やはり160円前後が非常に重要な水準であると、通貨当局も意識している表れだろうと思います。政府日銀は昨年、ドル円相場が160円前後で推移していた局面で4回にわたり介入を実施し、この水準が介入に踏み切る目安だと市場に示した格好でした。事実、ドル円が158円に迫った先週以来、今日の東京市場でもドルの上値は重い展開になっています。ありがたいことに、ブルームバーグは、日本の通貨当局者が為替市場に直接介入する前に、慣例として慎重に選んだ言葉で市場に警告を発し、実際の行動にどの程度まで近づいているのか、発信される言葉の違いから介入への可能性を分析しています。その内容は以下の通りです。
【1.通貨当局が強い懸念を示すようになる前の段階では、G20の方針に沿った次のような発言にとどまる傾向がある】
* 為替は経済のファンダメンタルズを反映するのが望ましい
* 急激・急速な為替変動は望ましくない
* 為替レートの過度な変動は経済に悪影響を及ぼす
* 為替レートは市場において決められる
【2.通貨当局は特定の為替水準を目標としていないことを明確にすることが多い】
* 為替動向が経済に与える影響を注視している
* 為替市場の動向を注視している
【3.懸念が強まり警戒感へと変わる】
* 円安のマイナス面が目立ってきている
* 足元では一方的、急激な動きが見られる
* 為替動向を憂慮している
* 投機的な動きを含めて為替動向を高い緊張感を持って注視する
【4.介入への警告】
* 為替レートは経済のファンダメンタルズを反映していない
* 投機による過度な変動が見られる
* 円安が急速に進んでいる
【5.介入が迫る】
* 必要であれば適切な措置を講じる
* 投機的な動きは容認できない
* 行き過ぎた相場の動きに対してはあらゆる措置を排除しない
* いつでも行動を取る準備ができている/スタンバイしている
* 断固たる措置を取る用意がある
なるほど、過去の発言を良く分析していると思います。では、足元ではどうかと言えば、これまでに発せられた直近のけん制発言では、「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している。日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として当然考えられる」というものです。上記、過去の発言例では「第3段」に近いと思われ、かなり重い部類に入るかと思われます。上記160円という水準が近いということを考えれば、当局がいつでも介入に踏み切れる「臨戦態勢」を取っていると考えても不思議ではありません。もちろん、「臨戦態勢」を取ったことと、「実際に介入すること」との間には相当な距離があることも事実かと思います。ここはある程度介入を意識した上で、もしロングポジションがあるのなら、一部を整理しておく方がベターかと思います。円がジリジリと買い戻される局面では介入の可能性は低く、何かの材料で円が急速に売られ局面こそ注意が必要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
