いよいよ「サマー・バケーション」前最後のラリーに臨む週になりました。今週は「今日のアナリストレポート」にも書きましたが、BOJ、FRB、ECBが政策決定会合を開催する「中銀ウィーク」です。3中銀の金融政策スタンスについては上記レポートで触れていますが、日米の株価の動きを見る限り、BOJは金融政策据え置き、FRBは今回は0.25ポイントの利上げがあるとしても、その後はあってもあと1回、もしくは最後の利上げの可能性を織り込む動きになっています。バーナンキ元FRB議長はフィデリティ主催のウェビナーで「7月の利上げが最後となることはあり得る」と述べています。
日経平均株価はこのところ上値の重い展開が続いていましたが、週明け月曜日には一時400円を超える上昇を見せています。NY株式市場でも、ダウ平均株価は「10連騰」と好調な動きになっています。日米欧中銀の金融政策を巡っては、市場コンセンサスはほぼ固まってきました。従って、注意すべきはコンセンサスと異なる「サプライズ」が起きた場合です。そもそも投機筋の「円売りポジション」は記録的な水準にまで膨らんでいます。ここから考えられることは、予想通りの結果であった場合でも、常識的にはドル円の上昇は限られそうだということです。一方、もし「サプライズ」があった場合、円の買い戻しが急速に進む可能性があるということです。足元ではドル円の動きは相変わらず活発です。値動きが大きいことから投機筋もドル円の取引量を増やしているのが現状です。それだけに、「サプライズ」だった場合の円買いには注意が必要です。
8月は各国中銀の金融政策会合はありません。従って、今週の会合が秋口までの最後の会合になります。ただ、その代わりという訳ではありませんが、8月は恒例の「ジャクソンホール」でのシンポジウムがあります。今年は8月25−27日に開催されることになっており、久しぶりの対面ということもあり、FRB議長だけではなく、植田日銀総裁の参加もあるかもしれません。「ジャクソンホール」はワイオミング州の避暑地で、ここで例年カンザスシティー連銀が経済シンポジウムを開催することが好例になっており、世界の中銀総裁やエコノミスト、主要企業のトップなどが参加します。8月は中銀による政策会合がないこともあり、ここでの中銀トップの発言がマーケットを動かしたことは過去に何度もあり、それだけに注目度も高いと言えます。特に今年は、FRBとECBが利上げスタンスを継続するのか、BOJは金融緩和政策の変更をどのタイミングで行うのかが年後半の最大の関心事であることもあり、金融当局トップの発言から9月以降の政策ヒントを掴みたいところです。
ドル円は再び142円に迫る水準まで買われ、ユーロドルも1.12台後半から1.11台前半まで「ドル高」が進行してきました。ドル円は昨年10月に記録した151円94銭まで戻るとは、現時点では思えません。米インフレ率が着実に低下しており、当時の環境とは大きく異なります。そして再び140−145円という「介入警戒水域」にも入ってきました。介入がいつあってもおかしくはないため、警戒感を維持することは必要です。財務省の神田財務官は相変わらず「緊張感を持って相場を注視していく」とのコメントを残しています。仮に介入を実施する場合にも、出来るだけその「効果のあるタイミング」を狙ってくるに違いありません。つまり、市場参加者が「介入はないと安心し切ったタイミング」と、「ポジションの偏りが大きき膨らんだ時」かと思います。念のために、注意をおこたらないように。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。