先週末に発表された「7月の雇用統計」では、前月6月とまったく同じ結果となりました。「ADP雇用者数」と本番の「雇用統計」では、その趨勢は必ずしも一致しないことが2カ月連続で確認出来たことになります。筆者が5年程まえ、過去10年程前まで遡ってその傾向を調べたところ、両指数が一致する確率はほぼ50%で、ほとんど傾向として相関性はないことが判明しています。今後とも常に「雇用統計」に先行して発表される「ADP雇用者数」に、必要以上にバイアスがかからないよう気を付けたいところです。2つの労働市場に関する指標を終えて、今後はそれらの指標に景気抑制の効果が本当に及んできたのかどうかが次の焦点になります。驚くほど好調と言われてきた両指標が軟調に転じるとすれば、人手不足も解消に向かう可能性があり、それは高賃金を提示しなくとも労働力を確保できることにつながります。その結果メーカーはコストの低減となり、販売価格へ転嫁する必要性が低下することとなり、インフレ率の低下が見込めることになります。これまではその逆の現象が 物価上昇につながっていました。FRBとしても労働市場が軟調に推移することは望むところでしょう。
ドル円は軟調な雇用統計の結果を受け先週末のNYでは141円台半ばまで売られましたが、本稿執筆時には142円20銭近辺までドルが反発しています。ドルの上値は若干重くなってきたと感じますが、それでもドル円が140円を割り込み一気に135円に向う地合いでもありません。今月は最重要経済指標としては10日(木)に発表される「米7月の消費者物価指数」(CPI)が注目されますが今月はFOMCも日銀金融政策決定会合もないため、比較的おとなしい相場展開が想定されます。そのため、先週も触れましたが、今月24−26日にワイオミング州ジャクソンホールで開催される「経済シンポジウム」が非常に注目されることになります。特に今年はFRBが7月に0.25ポイントの利上げを決め、年内もう一回の追加利上げがあるのかどうかが焦点になっているため、ジャクソンホールでのパウエル議長の発言からその可能性を探りたいとする雰囲気が高まっています。パウエル議長は、先月利上げを決めた後の会見では「データが正当化すれば、9月会合で再び利上げする可能性は当然あると言えよう。そして、同会合で金利据え置きを選択する可能性もあると言っておく」と述べ、今後もデータ次第であることを強調していました。その意味では、10日の米CPIは極めて重要になります。予想は前年同月比で総合が「3.3%」と6月の「3.0%」から上昇していることが見込まれています。市場は予想が前月よりも高いことには反応しませんが、これが仮に予想が「3.0%」で、結果が「3.3%」であったら大きく反応し、株式と債券が売られ、金利上昇に伴いドルが買われる可能性が高いと予想されます。予想値がすでに高いことが、この先どのような影響を及ぼすかにも注目しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。