今週末には世界中が注目しているジャクソンホール会議で、パウエル議長の基調講演があります。例年8月は主要中銀の政策会合がないことから、このジャクソンホール会議での発言が注目されるようになっています。本会議は、カンザスシティー連銀が8月に避暑地ジャクソンホールで開催するシンポジウムで、すでに夏の恒例イベントになっています。今年は特に、これまでの利上げ効果による一時9%を超えていた米インフレ率が3%近くまで鈍化して来たものの、再び上昇気配があるため、今後の金融政策を巡って非常に注目されています。インフレ指標の上昇圧力は緩和傾向を示している一方、労働市場や個人消費はなお堅調に推移していることから、今後のさらなるインフレ鈍化には不透明感が付きまといます。
このような状況の中、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のアナリストは、「パウエル議長はワイオミングで、引き締めサイクル終了を示唆する一方で、金利をより高い水準により長くとどめる必要性を強調するというより、よりバランスの取れたトーンを打ち出すとわれわれは予想している」と述べています。筆者は、これよりもなお「タカ派寄りの」の発言があるのではないかと考えています。FRBとしては、インフレ率が目標の2%に低下すると見込める確実なデータを入手するまでは、慎重な姿勢を崩さないのではないかと予想しています。
ジャクソンホールが終われば、いよいよ9月に入り、今年も3分の2が終わることになります。今年を振り返るのは時期尚早ですが、今年は早い時期にもっと円高が進むと、筆者も含めて多くの専門家が予想していました。米国のインフレが徐々に収まり、日本の金融緩和策が解除されるというのが、その最大の論拠でした。前者は予想通りで1月には127円台までドル売りが進みましたが、それ以降はそこから10円程反発し、137円台を付け再び下落しました。しかし7月以降の急激なドル高は想定外でした。4月に日銀総裁が替わり、早期の金融政策の修正に期待感も膨らみましたが、植田総裁のこれも想定外のタカ派発言が円売りに拍車をかけました。YCCの柔軟化で1%まで長期金利の上昇を許容しましたが、結局日銀による金融緩和策の解除までには「依然長い道のりがある」との観測が、市場の現実的なコンセンサスになったことが円が大きく反発しない背景になっています。
ただ、9月以降は余程の事がない限り日銀のさらなる修正は不可避かと思われ、FRBによる利上げもあと残り1回か2回で、1回の可能性の方が高いと予想しています。そう考えると、ドル円の上値も残り4カ月で昨年の高値を抜くことはないと考えていますが、どうでしょう・・・・。想定外の事象が容易に起こり得ることから、今後発表されるデータを確認しながら相場の予想は柔軟に対応する必要がありそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。