今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
8月28日 〜 9月3日
ドル/円
143.00〜148.00
ユーロ/円
154.00〜160.00
豪ドル/円
92.00〜96.00

今回の「ジャクソンホール経済シンポジウム」は非常に注目されていました。金利を急激に引き上げ、景気抑制的な政策スタンスを長期にわたって継続してきたことから、昨年6月には1981年11月以来となる「9.1%」まで上昇した消費者物価指数(CPI)はピークを付け、直近では3%程度まで順調に伸び率を鈍化させてきました。ところが、7月は再びCPIが前月を上回り、さらにその後に発表された生産物価指数(PPI)も前月を上回る結果となり、FRBは再び追利上げを継続するのではないかといった雰囲気が高まっていた中でのシンポジウムで、パウエル議長の発言に関心が集まっていました。

結果的には、議長の発言は「タカ派寄り」ではあったものの、9月の利上げを確信させるようなものではなく、議長は「これまでの道のりを踏まえると、次回の会合では入手するデータと変化する見通し、そしてリスクを精査しつつ、慎重に政策を進めていくスタンスだ」と、あくまでもデータ次第で追加利上げも、あるいは据え置きもあり得るといったニュアンスの発言を行っています。この発言を考えると、年内残り3回あるFOMC会合では、余程の変化がないかぎり「あと1回の利上げ」という予想がコンセンサスになり得ると思われます。その上で、データによっては「2回利上げ」と、「利上げなし」といった観測が浮上したり沈んだりする展開が予想され、前者のケースではドル円が150円を試す動きにつながり易く、後者では135円を目指す展開も予想されます。そもそもFOMC参加者の中でも意見が分かれていることは周知の事実となっています。今回のジャクソンホールでも、クリーブランド連銀のメスター総裁はブルームバーグとのインタビューで、「引き締め過ぎの政策とする方が、引き締め不足よりも良い」といった認識を示している一方、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、「追加利上げには慎重になるべきだ」と繰り返し述べています。

今後のドル円の方向を決めるもう一つの材料は日銀の政策変更がいつ行われるのかという点です。植田日銀総裁はジャクソンホールでのパネル討論会で、これまでに何度も述べている「基調的なインフレは依然として目標の2%を若干下回っていると、われわれは考えている。日銀が現行の金融緩和の枠組みを維持しているのは、それが理由だ」という考えを披露していました。つまり、これだけ足元のインフレが高止まりしている中でも、ただ単に表面上のインフレ率ではなく、「基調的インフレ率」が依然2%を下回っており、従って、年末に向ってインフレ率は大きく下がっていく可能性が高いことから「金融緩和政策を維持している」と説明しています。この「基調的なインフレ率」は、通常我々が耳にするインフレ率とはどのように異なるのか。日銀のHPにその答が掲載されています。それによると、「わが国の消費者物価指数を対象に、従来から利用してきた『除く生鮮食品』、『除く食料・エネルギー』、『刈り込み平均値』に加え、最近金融経済月報等で活用している『除く生鮮食品・エネルギー』、品目別価格分布がどの程度シフトしているかを端的に示す新たなコア指数として『最頻値』と『加重中央値』の試算値を算出する。次に、これらコア指数と景気変動との関係について、需給ギャップとの連動制を中心に定量的な分析を行う。最後に、得られた分析結果を基に、最近の物価上昇の特徴点やその背後にあるメカニズムについて考察する」とあります。そして、それらの指標と景気変動との関連性を見ると、「『除く生鮮食品・エネルギー』をはじめ変動の大きな品目を予め控除した『コア指数』は、需給ギャップとの連動制が相対的に高い一方で、『最頻値』や『加重中央値』といった分布のシフトを表す指標は粘着的で、需給ギャップとの関係も弱めとなっている」との結論に至っています。難しい説明ですが、要は上記指標を中心とした基調的インフレ率の方が、より実態に近いものを表していることと理解できます。ただ、それらの7月の指標も、刈り込み平均値は前年同月比で「+3.3%」(6月は+3.0%)、加重中央値は同「+1.6%」(6月は+1.4%)、最頻値も「+3.0%」(6月は+2.9)と、何れも前月から一段と加速しています。日銀のYCCの修正や金融緩和政策の解除の可能性が高まっていることを示唆していると考えられます。

今週の注目材料

  • 8/28(月)
    豪 豪7月小売売上高
    日 6月景気先行指数(CI)(改定値)
    日 6月景気一致指数(CI)(速報値)
    米 8月ダラス連銀製造業景況感指数
  • 8/29(火)
    独 独9月GFK消費者信頼調査
    米 6月ケース・シラ−住宅価格指数
    米 6月FHFA住宅価格指数
    米 4−6月期四半期住宅価格指数
    米 7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
    米 8月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  • 8/30(水)
    豪 豪7月住宅建設許可件数
    豪 豪7月消費者物価指数
    独 独8月消費者物価指数(速報値)
    欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(確定値)
    欧 ユーロ圏8月景況感指数
    英 英7月消費者信用残高
    米 8月ADP雇用者数
    米 4−6月GDP(改定値)
    米 7月中古住宅販売成約件数
  • 8/31(木)
    日  7月鉱工業生産
    中  8月中国製造業PMI
    中  8月中国サービス業PM
    独  独8月雇用統計
    欧  ユーロ圏8月消費者物価指数(速報値)
    欧  ユーロ圏7月失業率
    欧  ECB議事要旨(7月分)
    米  新規失業保険申請件数
    米  7月個人所得
    米  7月個人支出
    米  7月PCEデフレータ(前月比)
    米  7月PCEデフレータ(前年比)    
    米  7月PCEコアデフレータ(前月比)
    米  7月PCEコアデフレータ(前年比)
    米  8月シカゴ購買部協会景気指数
    南ア ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論に参加
    米  コリンズ・ボストン連銀総裁講演
    加  カナダ4−6月期経常収支
  • 9/1(金)
    中 8月財新製造業PMI
    独 独8月製造業PMI(改定値)
    欧 ユーロ圏8月製造業PMI(改定値)
    米 8月雇用統計
    米 8月ISM製造業景況指数
    米 8月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
    米 8月自動車販売台数
    米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論に参加
    米 メスター・クリーブランド連銀総裁、インフレについて講演
    加 カナダ4−6月期GDP
  • 9/2(土)
  • 9/3(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。