ドル円がジリジリと上昇し、148円台半ばまでドル高が進みました。FOMCではパウエル議長のタカ派寄りの発言があり、日銀金融政策決定会合では現状維持を決め、植田総裁の発言も政策変更を示唆するものではなかったことがドル円を高水準に押し上げる状況になっています。ただ「政策変更の可能性が最も高いのは10月会合」との声が依然より有り、まだ年内の動きは不透明です。ドル円は年初来高値を更新し続けているとはいえ、その動きは極めて緩慢で、異例とも言えます。今月5日に147円70銭台までドル高が進み年初来高値を更新して以来、今日で12回も147円70銭超える水準を付け、更新し続けてはいるものの、ドルの高値は本日東京時間に記録した148円48銭になっています。わずか20銭以内で高値更新を刻み続けていることになります。言うまでもなく、これは金融当局による「市場介入」を警戒してのことです。これまでに、鈴木財務相や神田財務官による「口先介入」はたびたびありましたが、いまだ「実弾介入」は実施されていません。
これまでに何度も触れたように、当局としても投資家が待ち構えている時に介入を行っても、その効果が限定的であることは十分分かっており、よい効果のあるタイミングを模索しているものと推察されます。日米金利差が拡大傾向にあることから、力ずくの介入を行ってもドル高の流れが変わる可能性は低く、かといって、このまま円安を放置するわけにもいかず、当局も難しい対応を迫られています。神田財務官は先週の「口先介入」で、「行き過ぎた変動には適切な対応をあらゆる手段を排除せず取っていく。引き続き高い緊張感を持って市場を監視・注視する」と述べ、かなり使う言葉もきつくなった印象です。このまま円安が進めば、「市場介入」に踏み切る可能性は高いと思いますが、一方で上でも触れたように円安のスピードが極めて遅く、「過度の変動」とは考えにくいことから、介入のタイミングを掴むのが難しいのも事実です。やはり「150円が一つの焦点」になろうかと思います。150円を突破するようだと、円安に勢いが付くことも考えられ、その前に介入に出るのかどうかという点です。
日米中銀の2大イベントを終えたものの、水準的にも今週は引き続き荒っぽい動きを加速させそうな材料が有ります。FRBがより重視していると言われる個人消費支出(PCE)価格指数の発表が29日(金)にあります。変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数は、前年同月比予想で「3.9%」と、前月の「4.2%」を下回り、およそ2年ぶりに「4%」を割り込むと予想されています。予想通りの数字であれば、FRBをひとまず安心させることになろうかと思いますが、先週のFOMCではメンバーの予想する政策金利の中央値(ドットプロット)は「年内に少なくともあと1回の利上げ」を示唆していました。果たしてその見通しに変化を与えることになるのか、注目されます。「また、今週は「ブラックアウト」期間が終了したことで、多くのメンバーによる発言機会が予定されています。これらの発言にも相場は左右されると見られます。また「市場介入」がいつあってもおかしくはない水準で推移しているドル円です。ショートメイクは慎重にならざるを得ませんが、かといって安心してドルを買える水準でもありません。介入がないことが、かえって相場を読みづらくしているとも言えます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。