米長期金利の動きに一喜一憂させられながらも、ドル円はここ1カ月ほどでは、146円台半ばから149円台後半で推移しており、特にここ2週間は、149円−150円の狭いレンジに収まっています。150円前後では介入警戒感があり、積極的にドルを買い上げるにはリスクがある一方、米金利が多少低下したとは言え、絶対的な日米金利差が依然として存在することからドルが底堅い動きを見せています。年末までの動きを想定する際の決め手は、日米金融当局の金融政策の動向を読み取ることに行き着きますが、ここでも明確な方向性が見出せないのが現状です。
日米とも今年はあと2回の金融政策会合を残すのみとなっています。現状の観測では、FOMCではあと1回の追加利上げがあるのかどうかといった状況ですが、その見方もやや後退し、年内の利上げはないと言った見方が強まりつつあります。これまでと認識がやや変わって来たのは、インフレの再燃を示す指標が発表され、米長期金利が上昇しても、「FOMCで追加利上げ行うのと同じ効果が出て、景気を抑制することになる」といった見方が台頭し、かならずしも、追加利上げの決定要因にはつながらなくなったという点です。同時にアトランタ連銀のボスティック総裁を筆頭に、「ハト派寄り」の発言を行うメンバーが増えてきたという点でも変化が見られます。「労働市場やインフレに関するデータが経済の活況を示すなかで、FOMCが追加利上げの可能性を排除するとは考えにくいし、仮に政策金利を据え置いても、引き締め局面の終了を宣言することはほぼないだろう」と、ブルームバーグは分析しています。
イスラエルがパレスチナ自治区ガザを実効支配しているハマスに対して大規模な攻撃を行うと宣言したことで、イランや、エジプトなどがハマス支持を表明し、友好国を巻き込みながら中東情勢がより不透明になっています。バイデン大統領も、イスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で同国への招待を受けたことから、数日以内に同国を訪問する可能性があるようです。米国も対ウクライナへの支援では共和党の反対もあり、支援策は議会ですんなりと可決しないケースが出ていますが、イスラエル支援では反対勢力もなく、積極的な行動が取れそうです。今回の中東情勢の悪化に最も心を痛めているのは、ウクライナのゼレンスキー大統領かもしれません。
今週はFOMC開催前のブラックアウト期間に入る最後の週で、多くのFOMCメンバーが講演を行います。中でも19日(木)のパウエル議長の講演が最も注目されますが、上でも触れているように、「追加利上げの扉を開けておく」といったニュアンスのコメントが予想されます。今週も再び150円を試すのか、あるいは150円が徐々に遠くなっていくのか、見極めたいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。