今月3日に150円台に乗せ、150円16銭を付けた後急速に値を下げ147円台半ばまで押し戻されたドル円でしたが、先週末と本日(10月23日)の早朝のオセアニア市場で再び150円台を回復する局面がありました。米長期金利の上昇傾向が続き、長期金利は一時5%の大台を示現する場面もありました。因みに、上記150円16銭を付けたと時のそれは4.8%に乗せるかどうかといった水準でした。日本の長期金利もジリジリと上昇していますが、競うように米金利も上昇しており、日米金利差がなかなか縮小しないのが実情です。米国ではインフレ率が目標の2%まで低下しないことで、「Higher for longer」(より高く、より長く)と金融引き締めを続ける一方、イールドカーブコントロール(YCC)政策と、主要国で唯一のマイナス金利による大規模金融緩和を続ける日本。これが、ドルが買われ円が売られる大きな理由の一つになっています。
今週は31日から始まるFOMCを前にブラックアウト期間に入ったことから、FOMCメンバーによる講演や発言はありません。その分先週には多くの講演がありましたが、その中でもウォラーFRB理事のように、現行の政策金利水準を維持し、しばらく様子を見るべきだといった「ハト派寄り」の発言が増えていたのも事実です。ただいつもながら注目の中心だったパウエル議長は、「経済成長の強靭さと労働需給の底堅さを示している最近のデータに、われわれは留意している。経済成長が継続的に潜在成長率を上回っている兆候、ないし労働市場の引き締まりがもはや緩和していない兆候が新たに見られた場合、インフレに関する一層の進展にリスクが生じる可能性があり、金融政策の追加引き締めが正当化される」と発言し、追加利上げの有無はあくまでもデータ次第だとしながらも「利上げの扉は開いたままにしておく」といった姿勢でした。これは、想定されたよりもやや「タカ派寄り」だったと言えます。この発言を受け市場では株と債券が売られ、金利が上昇したことでドル円が再び150円をテストする足場を作ったように思います。
筆者は先週の「アナリスト・レポート」で、「ここまで来たら最低でも1回は150円台乗せを見ずには終わらない」と書きましたが、確かに150円台乗せは実現しましたが、それでもドル円の動きは鈍く、150円台では思った以上に介入警戒感が強いと感じました。それでも市場では「ドルが下がったら買いたい」という姿勢がメインになっています。そのため、個人投資家の中には、介入を「いまかいまかと待っている人」も多いようです。今週は日米金融政策会合を前に、「150円台乗せと定着」が出来るのか、そしてやや不気味な当局の実弾介入を引き出せるのかどうかに注目しています。仮に150円台半ばまでドル高が進み、それでも介入が見られない場合、市場はドルのもう一段の上昇を織り込む動きになるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。