先週のドル円は米金利の上昇を支えに、今月3日に記録したドル円の年初来高値150円16銭を試し、さらにその前後でも介入らしき動きがなかったことから、一気に150円77銭辺りまでドル高が進みました。日本の長期金利も上昇してはいますが、絶対的な日米金利差に大きな変化は見られないこともあり、依然として緩やかなドル高基調は続いています。ドルが売られても下値は限定的であるため、結局ドル円の動きはドルの底堅さと介入警戒感に挟まれた狭いレンジでの動きに収まっていますが、今週は日米で重要な金融政策会合が開催され、週末には「10月の雇用統計」も控えていることから、データ次第ではこれまでと異なる大きな動きがあるかもしれません。
さらに今週注目されていることに、31日に財務省から発表される「10月の為替介入実績」があります。今月3日にドル円が150円16銭辺りまで買われた際、そこを頂点に一気に147円台まで急落した動きは記憶に新しく、市場では「政府・日銀による介入か」と一時大きな話題になりました。財務省の神田財務官は介入の有無を尋ねられ、「ノーコメント。言わないのが普通だ。(言って)得なことは一つもない」と詳しいことは避けていました。あの急激な動きから判断すると、実弾介入があったにしてはその影響は少なすぎるし、反対に何かないとあれほど急速にドルが下落することもないことから、「レートチェック」の可能性が高いと思っていますが、実弾介入があったかどうかは実績発表で明らかになります。仮に介入があったとしたら、やはり150円台が介入実施水準と受け止められ、今後150円台までドル円が上昇した際には警戒感が一層強まることになりそうです。一方、介入の実態がないとすればやや安心感も出てくるでしょう。そして次の介入水準を探ることになります。その水準は言うまでもなく昨年10月に実施した151円95銭前後ということになります。
日銀決定会合については今朝の「アナリストレポート」でも触れましたが、今回は少なくとも9月会合よりは何か動きがある可能性が高いと考えています。止まらない円安と円の長期金利の上昇は「日銀は動くべきだと」する「催促相場」の一環とも捉えることが出来そうで、先週末に発表された10月の東京都区部のコアCPIの上振れや、基調的インフレ率の上昇など、日銀に対する政策修正圧力もこれまでにないほど高まっていると考えられます。突如勃発したイスラエルとハマスとの戦争も原油価格上昇要因と見られ、今後イランなど中東諸国を巻き込むようだと、原油価格が90ドルを超え100ドルに迫る可能性もあり、日本を含む先進国のインフレを再燃させることも十分想定されます。中東情勢からも目が離せません。
11月1日に発表されるFOMCについては、現時点では2会合連続の据え置きが濃厚です。FOMCメンバーの中に、米政策金利は高水準まで引き上げられたことから、その効果を確認すべきだといったハト派が増えてきたことも挙げられますが、ここからさらに米金融当局が引き締めを強化する蓋然性は確認されないと思われます。ドル高基調が続きながらも、150円近辺で足踏みが続く相場にそろそろ変化が出てもいい材料が揃っており、これから年末に向けてのドル円を読む上でも注目される週になります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。