日米の金融政策会合と米10月の雇用統計を終え、ドル円は151円台後半まで上昇しましたが、その後149円台前半まで押し戻され、149台半ばで今週の取引がスタートしました。重要な3つのイベントが終わったことから、相場のモメンタムを加速させる材料がなくなった感はありますが、それでもボラティリティは引き続き高水準にあり、また今週は多くのFOMCメンバーによる講演も予定されていることから、そこそこの値幅は想定出来きそうです。問題はここから再び151円台を目指す動きに戻るのか、あるいは151円台後半を天井に下落に転じて来るのかといった点です。
米長期金利の動きが相変わらずカギを握っているとみられます。一時5%を超えた10年債利回は、米労働市場の伸びが鈍化したことにより、4.4%台まで急低下してきました。米債券もかなり荒っぽい動きが続いています。ウクライナ情勢の終結が見通せない上に、中東情勢が一気に悪化しており、場合によってはイランや、イラク、イエメン、エジプトなどを巻き込んだ大規模な戦争になる可能性すら秘めています。イスラエルのパレスチナ自治区ガザに対する執拗な攻撃が続き、今やガザ市中心部にも及んできました。紛争の拡大を防ぎ、一般市民の犠牲者を出来るだけ避けたい意向の米国ブリンケン国務長官の行動も、今のところ何の効果もありません。今や、これまでの歴史や宗教を超え人道上の観点から、ハマスに対する同情が日に日に高まる一方、イスラエルに対する非難の声が強まりつつある状況です。有事の際の米債券が見なおされるとすれば、10年債の利回りが低下してドル円は下落することになりますが、どこまで有事の際の「米国債見直し買い」が入るのかは不明です。
さらに米国債にとって最大の懸案事項は、2024年度予算案成立の可否です。前回は政府機関閉鎖直前につなぎ予算が成立し、今月17日までの猶予ができましたが、その期限も残り2週間を切っています。下院では共和党がウクライナに対する追加支援に難色を示し、イスラエルだけで十分だといった雰囲気です。一方バイデン政権は引き続きウクライナにも手厚い支援を求めており、これは今後も大統領選にも影響してきそうな状況です。新しく下院議長に就任したジョンソン氏は、今回もひとまずつなぎ予算を成立させその上で、2024年度予算についてはじっくりと議論をたたかわせようという意向のようです。果たして期限までにつなぎ予算が成立するのかどうかですが、今回も紛糾するようだと、債券は売られ金利が上昇する可能性がありそうです。
ドル円は151円台後半から149円台前半まで下げたことで短期的な動きを示すチャートでは「売りサイン」が点灯しています。8時間までの短い足では売りになっていますが、前回10月30日に付けた148円80銭辺りではしっかり止められており、目先はこの水準を下回る下げがあるかどうかです。相場の転換を示す「日足」ではローソク足が「基準線」を下回っており、下落傾向の始まりを示唆してはいますが、まだトレンド転換には遠いと言えます。個人投資家のスタンスを見ても、まだ「ドルが下がったら買いたい」といった声が多いと感じます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。