先週末のNYで151円60銭まで買われたドル円は週明け月曜日の東京時間午後には151円77銭まで上昇し、介入を警戒しながらも依然としてドルを買う動きが優勢な状況です。先ずは、11月1日に記録した年初以来ドル高水準である151円74銭を抜けたことから、昨年10月に付けた151円95銭が次に意識される水準であり、同時に大きな焦点です。
上記2水準は政府日銀が大規模な市場介入に踏み切り、その日の内にドル円が4円以上も急落しており、その後、今年初めに127円台まで円高が進み、極めて効果が高かった介入でした。従って、仮にこの水準を抜けるようだと、ドル円は上昇が加速する可能性もあります。ドルショートで粘っていた筋も、さすがにこの水準を上抜けするようだと、もう一段のドル高があるかもしれないと考えており、ストップロスのドル買いを設定しているケースが考えられるからです。ドル高のドライバーとなった米長期金利の上昇も、5%台に載せてからは調整局面が続き、足元では4.5〜4.7%程度で推移していますが、先週の動きを見る限りこれまでのドル高に加えて「円安」の要素が加わり、ユーロ円などは15年ぶりの高水準を記録するなど、クロス円でも円全面安の動きになっていました。植田総裁を始め、日銀審議委員の発言もよく吟味してみると「ややタカ派寄り」に変化しています。ただ、それでも「全体的に見れば、現行の大規模な金融緩和政策は変わらない」といった大局的な見方が根強い円売りにつながっているのではないかと思います。まだ年末まで1カ月半もあり、年末相場に言及するのは早すぎますが、このままでいけば1月に円の「最高値」を記録したドル円は、12月に「最安値」を付ける可能性も考えられそうです。
今週の注目材料は何と言っても14日(火)発表の「米10月の消費者物価指数(CPI)」です。順調な低下傾向を見せている米CPIですが、今回10月のそれは減速傾向が鈍化している可能性があると見込まれています。コアCPIは前月比「0.3%」と、9月分と変わらないと予想されており、下げ基調も一服といったところです。先週パウエル議長はIMF会合の講演で「金融政策のさらなる引き締めが適切となれば、そうすることをためらわない」と、想定よりもタカ派寄りの発言を行い市場にやや驚きを持って受け止められました。楽観的な市場に対するけん制かとは思いますが、うがった見方をすれば、CPIの鈍化傾向を予期しての発言だったのかもしれません。
上記CPIの発表以外にも、中東情勢の悪化や米つなぎ予算を巡る混乱、あるいはサンフランシスコで行われる米中首脳会談の行方など、不透明な材料もあります。いずれにしても、これらの材料を経てドル円が152円台に突入していくのか、あるいはその前でUターンして行くのか、年末にかけての相場を占う上では重要な動きになりそうです。
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来週の「今週の予想レンジ」は都合によりお休みとさせて頂きます。ご愛読者の皆様にはご不便をお掛けいたしますが、ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。