ドル円は151円台後半の高値を付けた後、先週21日には日米市場の休場を前にポジション調整が活発となり、147円台前半まで急落しました。下落幅は直近では最大となる4円76銭にも及び、これまでのドル高の流れにややブレイキを掛ける動きとなりました。ただ、市場の「ドルブル・スタンス」は変わらず、翌日からは上昇に転じ149円75銭まで反発し、現在も149円前後で推移しています。ドル円との相関が高い米長期金利は5%台まで上昇した後やや低下傾向を見せており、その金利低下に呼応するかのようにドルが売られました。この傾向はユーロドルではより鮮明で、ユーロドルは今月1日の1.05台前半を底値に一貫して「ドル安・ユーロ高」の流れが続き、1.09台半ばまでユーロが買われています。ドル円ではドルの反発も急で、これが再びユーロ円を163円台半ばまで押し上げています。主要3通貨で言えば、ユーロが最強で、円が最弱通貨の構図が続いています。
今週末からはいよいよ12月です。127円台で始まった1月から想定を超えるドル高の流れとなり、今月には151銭91銭を記録し、ほぼドル高で推移した2023年も、どうやらドル高を維持したまま越年しそうな気配ですが、まだ予断は許しません。米インフレ率が低下傾向を見せており、市場の関心はFRBの金融引き締めステージが終わったのかどうかといった点に絞られてきました。回答は今後のデータを待つしかありませんが、仮にそうだとしたらドルの上値は目先限定的になる可能性もあり、その時は円高方向に振れることも予想され、ドルの下落スピードも速いかもしれません。
今週は30日(木)の個人消費支出(PCE)データの結果に注目です。個人消費も個人支出も前月から鈍化していると見込まれていますが、とりわけ注目度の高いPCEデフレータは前年同月比「3.1%」と見込まれており、9月の「3.4%」から大幅な鈍化が予想されています。また、食品とエネルギーを除いたコアデフレータも前年比で「3.5%」と、9月の「3.7%」から低下する見込みです。FRBは毎月発表されている消費者物価指数(CPI)の数値よりもこちらの方により注目しているとされており、事前予想通りであれば12月のFOMC会合での政策金利据え置きを後押しすることになります。今週末の金曜日は雇用統計の発表はありませんが、12月会合での政策金利据え置きか否かは、やはり来週末の「11月の雇用統計」の結果が大きく左右します。また今週はブラックアウト期間前の週ということもあり、FOMCメンバーの講演など、発言機会が多く予定されています。先週の要人発言ではパウエル議長を始め、多くのメンバーが「タカ派寄り」だったことはやや驚きでしたが、冷静に考えれば金融当局者とすれば、常に先走る市場をけん制するのは当然で、想定内とも言えます。ただ市場はそれでもそういった発言には敏感に反応することから、注意が必要です。上でも述べたように、このまま12月もドル高傾向を維持しながら越年するのか、あるいはドル高のピークは過ぎたことが確認され、来年に向け円が買われる展開になるのか、その意味ではこの1週間の動きは重要かと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。