ドル円の上値が重くなり、これまでの展開とは大きく変わってきました。ひとまずは、10月と11月の2回、上値をテストして抜け切れなかった151円台後半から152円が目先の天井の可能性が出て来たと考えます。もっともこの先インフレが再燃したり、今週末の雇用統計が予想を上振れするなど、再び追加利上げ観測が高まる可能性もないとは言えませんが、少なくとも多くのテクニカルはドルの下落を示唆するシグナルが点灯して来ました。筆者が「トレンド転換」の基準とする「日足」では、「一目均衡表」や「MACD」ではドル安のシグナルが出ており、「指数平滑移動平均線」でも、短期の平均線を下抜けし、週明け早朝には146円24銭までドル売りが進みましたが、「120日線」で下げが一旦止まっている状況です。上値は重いと思いますがメドとしては雲の下限の148円10銭前後と、151円91銭を起点として引ける「レジスタンスライン」のある148円30銭辺りが意識されるところです。
米長期金利は10月23日に「5.018%」まで上昇しましたが、その後は急ピッチで低下し先週末には「4.195%」まで急低下し、「ドル売り円買い」を促しています。今月12−13日に開催される今年最後のFOMCでは、政策金利はほぼ据え置きとの見方で一致しています。パウエル議長も先週末の講演で、「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」と述べ、これまでの累積的利上げが効果を発揮してきたことに満足げでした。また議長は、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ」と、この部分では先走る市場をけん制すことを忘れずにいましたが、市場の一部には「早ければ来年3月に利下げがある」といった見方も台頭しています。来年3月の利下げ観測はやや勇み足かと思われますが、猛烈な債券価格の上昇(利回りの低下)は、米金融当局の利上げサイクルが終了した可能性を織り込む動きと捉えることができそうです。
11月の雇用統計に言及するのはやや早すぎますが、現時点では非農業部門雇用者数は「20万人増加」と予想され、10月の「15万人」から増加すると見込まれています。また、失業率は「3.9%」と、10月からは横ばいと予想されています。仮にこの予想通りの結果であれば、「可もなく不可もなく」といったところで、翌週のFOMC会合での決定には影響はないと思われます。12月に入る目前からドル売りが加速したことは、昨年の動きを連想させますが、まだ12月は始まったばかりで、今後のデータはこれまで以上に注目されそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。