ドル円は先週7日(木)に植田日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と国会で答弁したことが引き金となり、「円買いドル売り」が活発化し、その日のNY市場では一気に141円71銭までドルが売られました。ところが週末の米雇用統計が市場予想を上回ったことでドルの買戻しが進み、145円台を回復。週明け月曜日の東京時間には145円66銭までさらに上昇する場面がありました。11月13日に記録した高値151円91銭から上記141円71銭までの下落幅を基にフィボナッチリトリースメントを駆使して計算してみると、「38.2%戻し」が145円60銭と導き出され、ほぼ重要な上記水準を達成したことになります。やはり下げが急で、さらに値幅も大きかったこともあり、戻りも想定以上に早い印象です。この先『50%(半値)戻し』は、146円81銭になりますが、今週はFOMCもあり、政策金利は据え置きと予想していますが、仮にその通りだとしても、パウエル議長が余程タカ派寄りの発言を行わない限り戻りもその辺りまでではないかと考えます。
そして今年最後の金融会合ではむしろFOMCよりも日銀会合の方が、より注目度が高いように思えます。上記植田総裁の言葉もあり、今回の会合で日銀は何らかの行動に出るといった見方をするエコノミストも多くいますが、慎重な日銀のこと、動かない可能性もあります。ただ、それでも来年に向けたメッセージくらいはあるだろうとする見方が優勢のようです。連日自民党安倍派のパーティー券収入不記載問題がマスコミを賑わし、岸田首相は安倍派に属する閣僚、副大臣、政務官の政務三役を全て交代させる意向のようですが、野村総研の木内氏は「安倍派の勢力低下は、日本銀行にとっては金融政策の自由度を高める要因だ」とした上で、「マイナス金利政策解除など、政策修正を進めやすくなる要因と言えるのではないか」と10日付けのレポートで配信しています。今回のように、日銀がマイナス金利の解除やイールドカーブコントロール(YCC)の修正に動けば、円が急騰することは「実証ずみ」であるため、出来れば円が安い状況で推移している間に修正を行いたいことは金融当局も理解していることと思います。個人的には、今回の会合か1月の会合で修正に動くと予想していますが、どうでしょう。13日のFOMCでは前回会合に続き政策金利を据え置き、14日のECB理事会でも同様に据え置きを予想しています。
円はドルだけではなく、全ての主要通貨に対して買われています。そのため、クロス円も上値が重いと予想しています。テクニカルでは安値から概ね4円程戻した現在でも、日足ベースではまだドルの下落傾向を示しており、変わっていません。今週はドルの戻りがどこまであるのかという視点で臨みたいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。