ドル円は今年に入っても活発な値動きを続けています。
特に先週末は米12月の雇用統計の結果を受け、発表直後にドル円は急上昇し、145円98銭までドル高が進みました。非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を大きく上回る結果を示したことで、「FRBによる利下げのタイミングが遅れる」との観測がドルを押し上げました。ほぼ146円近辺までドル高が進み、これで昨年末の水準からほぼ5円もドルが買われたことになります。年初から一貫してドルが買われたことから、現時点では今年も大方の専門家の予想とは異なる動きを見せています。ただ、その水準をピークにドル円は大きく売られています。その後に発表された12月のISM非製造業景況指数の下振れに143円81銭までドルが反落しています。
現時点では、今年のFOMC会合のどこかの時点でFRBが政策金利の引き下げを行い、金融引き締め政策に転換することはほぼ間違いないと思いますが、問題はその実施するタイミングになります。一部の観測にあるように、3月会合で利下げに踏み切るようならドル円は145円〜148円の水準をピークに下落に転じる可能性が高いと考えますが、仮に夏場以降にまでずれ込むようだと、150円をもう一度見る可能性もありそうです。全ては、直近3%台のインフレ率が、FRBが目標とする2%までの「ラストワンマイル」を順調に消化できるかどうか、今後のデータ次第というところです。
筆者は後者に近い予想を行っていますが、今週11日(木)には12月の消費者物価指数が発表されます。この結果次第では市場のセンチメントも再び大きく変化することになります。何しろ、活発で変化の速い経済活動に直面している一方、欧州大陸では2つの戦争が進行している状況です。何が起きてもおかしくはない中、長い間続いた金融緩和の影響で市場の運用資産が大きく膨れ上がり、その資金がアルゴリズムの指揮系統の下、右往左往しているのが現状です。今年もドル円は、昨年以上に大きく動く可能性が非常に高いと思います。元日とそれに続く2日の日本で起きた「想定外の悲劇」が、示唆しているように思います。加えて、今年は米大統領選が控えており、ここで、もしトランプ氏が再選されるようだと相場の値動きをさら増幅させることは必至でしょう。そのトランプ氏、今のままだと再選される可能性が高いようです。イアン・ブレマー氏率いる米調査会社「ユーラシアグループ」は2024年の10大リスクを発表し、その第1位に、「中東情勢」や、「ウクライナ問題」を押しのけ、「米国の分断」を挙げています。共和党内の重鎮や閣僚でも自身の意にそぐわない場合は、容赦なく切り捨てる手法は2016年からのトランプ政権で、何度も目にしてきました。「America First」のスローガンに名を借りて、「Trump First」が行われることが最大のリスクでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。