2023年度最後のFOMCであった昨年12月の会合では、参加者のドット・プロット(金利予測分布図)でメンバーは2024年に、中央値で0.75ポイントの利下げを予想しており、利下げ幅が0.25ポイントとすれば3回ということになります。予側はばらつきが多かったようですが、8人が0.25ポイントの利下げが3回未満となっている一方、5人はそれ以上の利下げを予想していました。さらに会合後の記者会見でパウエル議長は、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」と発言し、ここでは今回の利上げステージでは初めてとなる「利下げ」という言葉を使いました。議長のかなりハト派寄りの発言に「早ければ2024年3月には利下げが開始される」との観測からドル円は売られ、今月には一時140円台まで下げる場面もありました。
その後利下げ観測は徐々に後退してはいますが、現時点でもくすぶり続けています。先週発表された11月の消費者物価指数(CPI)は予想を上振れていましたが、生産者物価指数(PPI)は逆に市場予想よりも低下しており、発表されるデータもまちまちです。雇用統計についても12月は雇用者数は伸びてはいたものの、失業率は上昇するといった状況でした。経済データを見る限りは、FRBの利下げスタンスは進みそうですが、3月会合での利下げ開始はまだ不透明といった具合です。
そんな中、バークレイズ証券は15日、「FRBは3月に利下げを開始する」とのレポートを公表しました。それまで同社は「6月会合で利下げ開始」を予想していましたが、前倒しにした形です。その理由として、FRBが好んで使用するインフレ指標であるPCEデフレーターは、このところ目標に近い水準で推移している上、「コアPCEデフレーターは2024年末には前年比+2.4%になると予想されること」を挙げています。その結果、「3月から2会合ごとに政策金利を25bpずつ引き下げ、2024年末にはFFレートの誘導目標レンジは4.25−4.50に、2025年末には3.25−3.50%に達するだろう」と見込んでいます。ただ、同社の見方は筆者の見たところ、市場のコンセンサスと比べややハト派的かと思います。もちろん、今後再び予想を修正してくる可能性はあり、あくまでも現時点でのデータに基づいたものです。
日本株の上昇が止まらず、週明け15日も大きく続伸し、日経平均株価は一時3万6000円の大台に乗せる場面もありました。海外からの日本株買いが続いており、それまで日本株のエクスポージャーを低目に設定していたファンド筋が、慌てて買い始めているといった報告もあります。運用競争に負けないためには、日本株を買わざるを得ない事情もあるようです。今後さらに資金流入が続くと、ヘッジのため「ドル買い円売り」を行うことも予想され、これがドル円を押し上げるといった見方も一部に出ているようです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。