ドル円は年初からの上昇基調を続けています。上昇が一方的なことから多少売られる場面もありましたが、それでも切り返して上昇し、先週金曜日の東京時間には148円80銭までドル高が進んでいます。これで昨年末の水準からは8円弱ドルが買われたことになります。率にして5.5%も円安が進んだことになり、営業日数は14日程度ですからかなりのスピードで円が売られたことになります。米金利の上昇がドル高の最大の要因かと見ていますが、その背景には早期利下げ観測が後退していることにあります。早ければ3月にも利下げ開始と見られていましたが、その後発表された経済指標には上振れするものが多く、労働市場と個人消費には底堅い動きがみられます。そのため、インフレが再燃する可能性があり、これがFOMCメンバーの慎重な発言を引き出しています。今年はどこかの時点でFRBが利下げに踏み切ることが間違いないと予想していますが、そのタイミングは想定以上に遅れることもやや意識される展開です。
こうなってくると、重要なのは日米金融当局の今年最初の政策会合です。先ずは先陣を切って本日から日銀が政策決定会合を開催し、明日にはその結果が発表されます。「政策変更なし」でほぼ決まりかと思われますが、注目されるのは明日の午後3時半から行われる植田総裁の記者会見での発言です。現行の金融政策の修正には、賃金と物価の好循環が条件であることは何度も総裁が口にしています。物価については先週金曜日に12月の消費者物価指数(CPI)が発表され、総合では前年同月比で「2.6%」でした。順調に低下しており、この傾向は今後も続きそうです。賃金についても、今年の賃上げ率は昨年並みか、それ以上の4%を上回りそうだとの予想も出ており、その意味では「条件はクリア」されそうで、あとは1日に発生した能登半島地震の影響がどの程度考慮されるのかといった点になり、総裁の発言が非常に注目されることになります。また、FOMCについても今回の会合では政策は維持され、こちらも注目はパウエル議長の会見になります。特に、議長は12月の会合では予想外の「ハト派発言」を行い、これをきっかけに市場の利下げ観測が一気に高まったという経緯があります。この時のハト派姿勢が維持されているのか、あるいは修正されているのか、こちらも相場に与える影響は大きいはずです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。