ドル円での円安が加速しても、一部で予想されていた152円前後でも介入はなく、さらに「G20が閉幕してから本日(4月22日)時点でも」介入は見られません。介入を指揮する財務省では傍観しているわけではなく、いろいろな角度からその効果的なタイミングを模索していることとは思いますが、遅すぎるタイミングでの介入は、水準訂正という意味では効果が徐々に逓減していくと思われます。2022年10月から3回実施された介入の効果を検証してみると、介入額では最も多いのが5兆6200億円で、最も少なかったのが7296億円となっています。それらの介入で最も効果的であったのが介入額の最も多い10月22日で、5円72銭も円高方向に水準を押し下げています。逆に最も効果が少なかったのが9月21日の4円15銭でした。これら3回の介入では平均で5円14銭円高方向に水準を押し下げたことになり、仮に今後「実弾介入」があった場合、5〜6円程度の「効果」があると見られます。もちろん、「介入のタイミング」や「介入の規模」、あるいは「介入の水準」によっては、これ以上のこともあれば、これ以下のことも考えられます。
もっとも、考え過ぎかもしれませんが、介入で水準が下がったところでは、相当のドル買い注文が入っていて、そもそも介入はドルを買いたい投資家に「いい買い場」を与えてしまう、そんなことも当局は承知しているからこそ、なかなか介入に踏み切らないのかもしれません。一方でこのまま介入を実施しなければさらに円安が進み、本日ブルームバーグが配信した記事の中には「夏にかけてドル円は170円まで上昇するリスクがある」といったやや驚きの記事もありました。記事は仏大手銀のソシエテ・ジェネラルのチーフ・ストラテジストの予想で、「ドル円が150円を抜けて上昇を続けていることで、ドル強気派が勢いづいている」と指摘し、「過去30年間にドル円相場がオ−バーシュートした例を参照すると、さらに13%動くと見込まれる」と述べています。その上で、「現時点で最も危険なのは、心理的に大きな節目を破った後で米金利見通しの期待が修正される時だ。170円が実現するとすれば、7月FOMCまでにあるだろう」と話しています。チーフ・ストラテジストのジャックス氏は、さらに続けて、「市場は相対的な金利に着目している時には、行く着く所まで行かなければドル上昇の勢いを弱める手立てはほとんどない」と、現在の低金利の円に対してかなり弱気の発言を行っていました。この予想をこのまま鵜呑みにするわけにはいかないとしても、核心は突いていると思われます。市場の需給も重要ですが、「市場心理」は時としてオーバーシュートの主役になる場合があるからです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。