歴史は繰り返す「【食料戦争】Vol:2」|FX|外為オンライン FX取引 − あなたの為の、外為を。

歴史は繰り返す

「食料戦争」

第二話:世界の食料事情と中国、インド

G7諸国の総人口をご存知ですか?日本は約1億2千万人ですね。一番多い国がアメリカで約3億人です。ヨーロッパ諸国の人口は概ね6千万人〜8千万人です。G7で一番少ない国がカナダで約3千3百万人。G7合計で約7億2千万位になります。これらの国々はこれまで比較的安定した食料事情に支えら、極端な貧富の差もなく、一定水準の経済成長を遂げてきております。ところが、21世紀に入ってからは「Bricks」に代表される「新興国」が力を付けてくるようになってから世界は一変しました。主要食料である小麦、トウモロコシ、大豆の価格が急騰し始めたのです。代表的な取引市場であるシカゴ穀物市場では2006年10月から騰勢を強め、今年に入ってもその勢いは止まりません。もちろん価格が高騰したのは穀物だけではなく、ご存知のように石油、鉄、金など鉱工業資源も軒並み高騰しています。しかもこれらの高騰は一過性の動きではなく、専門家は「安い資源時代」から「高い資源時代」への変化が起きていると指摘しています。

この背景には「世界的な金余り」や「サブプライムローン問題に端を発したドル安」などがありますがこれらはいわば間接的な理由で、直接的には中国とインドという二つの大国の成長ぶりを観ていかなければなりません。今や世界経済の牽引力が人口7億2千万人の先進国から、人口約30億人の「Bricks」に移ったと言えます。これら人口大国が本格的な工業化の過程に突入し、猛スピードで先進諸国へ追いつき始めたことが最大の原因です。とりわけ、中国、インドが急速に経済発展を遂げ、同時に急速な所得向上が実現しました。この二国だけで24億人の人口を擁しています。所得の向上は食生活を変え、量ばかりではなく質の変化を伴って食料需要の飛躍的な増大を招きます。

2040年に中国を抜いて世界一の人口大国になると推計されているインドでは現在でも人口の3〜4割が貧困層以下の人々です。その多くは農村部に住んでいて、所得階層別に穀物の消費量をみると、一ヶ月の所得が560ルピー(約1300円)以上の階層では年間190kgの穀物を直接消費しています。これに対して、一ヶ月120ルピー(約280円)未満の最低所得階層では年間116kgの消費量です。中間層でも164kgですから、今後経済成長が進んで農村部の所得が増えれば、穀物消費は劇的に増えていくと予想されます。因みに2040年のインドの人口は15億人と推計されています。

一方供給のほうはどうでしょう。世界の農地は工業化に伴い工業用地への転換が進み年々減少しています。さらに、砂漠化、塩害、あるいは近年の干ばつ、洪水などの異常気象がもたらす穀物生産への影響を考えると決し楽観視できません。今後急速に増える食料需要を満たすには耕地面積あたりの収穫を増やすしかありません。しかし現実は耕地面積あたりの生産性を上げることはそう簡単なことではありません。そこで、登場するのが「遺伝子組み換え作物」です。

次回はこの急速に拡大している「遺伝子組み換え作物」についてもう少し詳しくみてみたいと思います。

To be continued・・・次回は、8/5(火)の予定です。

外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。