統一通貨 <ユーロ>誕生の歴史
最終話:ユーロの将来
ドルに対しても、円に対しても概ね一本調子で強含んでいる「ユーロ」。
最終回はユーロの将来について考えてみたいと思います。
この命題を考える上で重要なことは、ドルの価値を将来的にどう観るかということです。
なぜならば、ドルが今後も長期的に下落するという前提に立てば、自動的にユーロが
浮上してくるからです。
現在のところ仮にドルがその地位を失った場合、ドルに取って代わって世界の
決済通貨になりうる通貨は
ユーロ以外にありません。
問題はそのドルに昨年のサブプライムローンから端を発した戦後最大の危機が起きていることです。
とりわけ世界の中央銀行が保有する外貨準備は、その大半がドルです。
世界最大の外貨準備高を誇る中国は、昨年末現在で何と1兆5300億ドルと膨大な
外貨準備を保有しており、
同時にドル下落の大きなリスクを抱えています。
そのため、リスク分散の意味から、保有するドル資産の一部を他の通貨に換えることは
極めて自然なことです。
ドルが更に大幅に下落すれば、各国中央銀行にドル離れを促すことに他なりません。
事実、昨年中国通貨当局の責任者が「一部をユーロに換える」との報道があり、ユーロが
急騰した経緯があります。
外貨準備高の順位は第二位が日本で、第三位がロシアで、いずれもほぼ1兆ドルの保有高です。
これら上位三ヶ国が外貨準備の10%をドルからユーロに換えただけで3000億ドルの資金がユーロに流れることになります。
おそらく為替市場に相当なインパクトを与えると考えられます。
さらに、このところの原油高を背景に、中東産油国がその豊富な石油代金を
政府系ファンドや投資運用会社を通じて存在感を拡大しています。
つい最近、サブプライム関連で資本が傷んだメリルリンチやシティーグループに巨額の
資本参加を決めたのは、中東ドバイとシンガポールの政府系ファンドでした。
ユーロが誕生してまもなく10年が経とうとしています。
既にドルと並んで世界の二大通貨であることは論を待ちません。
今後、ドルにとって代わって世界の基軸通貨になるかどうかは、ユーロ圏の安定した経済成長と
ドルの将来価値にかかっています。
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外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。