「米失業保険申請件数大幅に増加」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は「失業保険申請件数」が大幅に増加したことで、ドル売りが加速。一時は154円95銭を付けたが、その後は株式市場でダウなどが最高値を更新したことで円が売られる。
- ドル安の流れにユーロドルは1.1762まで上昇。ユーロ円は182円74銭前後まで買われ、最高値を更新。
- 株式市場では、ダウとS&P500が買われ最高値を更新。一方ハイテク株が売られ、ナスダックはマイナスで引ける。
- 債券は小動き。長期金利はほぼ横ばい。
- 金は大幅に反発し4300ドル台を回復。原油は反落。
新規失業保険申請件数 → 23.6万件
9月貿易収支 → −52.8b
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| ドル/円 | 154.95 〜 155.67 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1713 〜 1.1762 |
| ユーロ/円 | 181.87 〜 182.74 |
| NYダウ | +646.26 → 48,704.01ドル |
| GOLD | +88.30 → 4,313.00ドル |
| WTI | −0.86 → 57.60ドル |
| 米10年国債 | +0.008 → 4.155% |
本日の注目イベント
- 日 10月鉱工業生産(確定値)
- 独 独11月消費者物価指数(改定値)
- 英 英10月鉱工業生産
- 英 英10月貿易収支
- 米 ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁講演
- 米 ハマック・クリーブランド連銀総裁講演
- 加 カナダ10月住宅建設許可件数
本日のコメント
ドル円は昨日のNYで一時155円を割り込み、154円95銭まで売られる場面がありました。「失業保険申請件数」以外に特段ドル売り材料が出たわけではなかったものの、前日のFOMCで3会合連続の利下げを決めたことや、次期FRB議長にトランプ大統領の意向に沿い、大幅な利下げを主張するミラン氏が最有力であることなどが背景にあったと考えられます。また、このところユーロドルでユーロ高が続いており、昨日もユーロドルは1.17台半ばまで買われたことで、円も「連れ高」した可能性もありそうです。ただ、ドル円はその後155円台半ばまで反発し、依然底堅さは維持しています。ただ、154円を割り込むと、やや市場のセンチメントが変わる可能性があることは、指摘しておきたいと思います。ここ1ヵ月ほど、ドル円は154円台を割り込んでいません。
先週の「新規失業保険申請件数」は、新型コロナ禍以来の大幅増を記録していました。感謝祭の休暇を挟んだその前の週は大きく減少し、その反動があったのかもしれせん。新規失業保険申請件数(12月6日終了週)は前週比「4万4000件増」の「23万6000件」と、予想の「22万件」を大きく上回っていました。増加幅は2020年3月以来の大きさです。また、週ごとの変動をならした「4週移動平均」も「21万6750件」とやや増加しています。ブルームバーグは「新規申請件数は通常、休暇シーズンの前後に振れが大きくなる傾向があり、年末まで大幅な変動が続く可能性がある。だが、今回のデータは今年のレンジ上限に近い水準となった。ペプシコやHPなどの企業はここ数週間に人員削減計画を発表しており、全米のレイオフ件数は10月に2023年初め以来の高水準に達した」と分析していました。FRBは10日、3会合連続で利下げを決めました。パウエル議長が「徐々に冷え込みつつある」と表現した労働市場の状況が正当化された格好でした。
9月の米貿易赤字は予想外に縮小し、2020年半ば以来の低水準でした。輸出の増加が大きく寄与しています。財とサービスを合わせた米貿易赤字は528億ドルと、前月から11%近く縮小した一方、輸出額は3%増加し、過去2番目の高水準でした。国別では、スイス向けの輸出額は過去最高を記録し、同国に対する貿易黒字も過去最大でした。中国に対する財の貿易赤字は季節調整後のベースで、データをさかのぼれる2009年以降で2番目の低水準に縮小していたことが特徴的でした。トランプ関税の影響を軽減するため、日本を含む多くの国の企業が米国内に生産拠点を新設、あるいは増設しています。今後米国からの輸出が増え米国の輸入が減少し、米貿易収支の改善傾向は続くと予想しています。
ロシアとの和平案を巡り、ウクライナには圧力が強まっている中、同国のゼレンスキー大統領は、東部領土の帰属問題を「国民投票」にかける可能性に言及しました。ゼレンスキー氏はトランプ政権による最新の和平案を巡って交渉していますが、ウクライナがロシアへの領土割譲を検討することはないとの姿勢を崩してはいません。ゼレンスキー氏は11日にキーウで会見し、「ロシアはドンバス地方全体を欲しがっている。われわれはそれを受け入れない」と主張しながらも、「この問題に答えを出すのは、ウクライナ国民だと確信している。選挙または国民投票の形で、ウクライナ国民に発言権が与えられなければならない」と述べていました。トランプ大統領はゼレンスキー氏に、早期に和平案を受け入れるよう圧力をかけていますが、ドイツのメルツ首相は、NATOのルッテ事務総長とベルリンで会談した後、「何より重要なのは、ウクライナが領土でどれほどの譲歩をする用意があるかだ。だが、これはウクライナの大統領と国民が答えるべき問題だ」と話し、「われわれはトランプ大統領にこの点を明確にした」と明らかにしていました。
来週は、今年最後の「日銀金融政策決定会合」があります。利上げはほぼ確実と見ていいいと思います。ブルームバーグがエコノミスト50人を対象に行った調査でも全員が、「利上げがある」と回答していました。植田総裁の下で、全回答者が利上げを予想したのは初めてのことだそうです。こうなると、やはり焦点は両中銀の来年以降の政策スタンスを読み切ることになります。すでに、2026年の相場予想もぼちぼち出始めてきました。筆者は、来年1月16日(金)に行う予定です。
本日のドル円は154円70銭〜156円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 12/10 | パウエル・FRB議長 | 「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」、(次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して)、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」 | 政策金利を0.25ポイント引き下げことで、ドル円は156円台半ばから155円80銭まで下落。 |
| 12/10 | FOMC声明文 | 「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」 | -------- |
| 12/9 | ハセット・NEC委員長 | (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 | -------- |
| 12/1 | 植田・日銀総裁 | 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 | ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。 |
| 11/21 | 片山財務大臣 | 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 | ドル円、やや円高に振れる。 |
| 11/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 | 株価は下落し、ドル円は買われる。 |
| 11/20 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 | 株価は下落し、ドル円は買われる。 |
| 11/20 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 | -------- |
| 11/17 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 | -------- |
| 11/17 | ウォラー・FRB理事 | 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 | -------- |
| 11/14 | シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 | 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 | 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。 |
| 11/14 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 | 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。 |
| 11/12 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 | -------- |
| 11/13 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | デーリー・SF連銀総裁 | 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 | -------- |
| 11/6 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 | -------- |
| 11/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 | -------- |
| 11/4 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 | -------- |
| 11/4 | クック・FRB理事 | 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 | -------- |
| 11/4 | ミラン・FRB理事 | 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
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