今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、10ヵ月ぶりに157円台まで上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は一段と上昇し、一時は157円18銭と、およそ10ヵ月ぶりの円安水準を記録。日本の財政悪化懸念に加え、FRBによる利下げ観測が後退したことが背景。
  • ドル高の流れに、ユーロドルは1.1517まで下落。ユーロ円は連日史上最高値を更新し、この日は181円36銭前後まで上昇。
  • 連日下げていた株式市場は3指数が揃って反発。注目されていたエヌビディアの決算は引け後に発表され、「好決算」。先物は上昇。
  • 債券は反落し、長期金利は4.13%台に上昇。
  • 金は5日ぶりに反発。原油は売られる。
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8月耐久財受注(改定値) → 2.9%
8月製造業受注 → 0.4%
8月貿易収支 → −59.6b
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ドル/円 156.05 〜 157.18
ユーロ/ドル 1.1517 〜 1.1591
ユーロ/円 180.60 〜 181.36
NYダウ +47.03 → 46,138.77ドル
GOLD +16.30 → 4,082.80ドル
WTI −1.30 → 59.44ドル
米10年国債 +0.021 → 4.135%

本日の注目イベント

  • 日 小枝日銀審議委員、新潟県金融経済懇談会で講演
  • 独 独10月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏11月消費者信頼感指数(速報値)
  • 米 9月雇用統計
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 11月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 10月景気先行指標総合指数
  • 米 10月中古住宅販売件数
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁、会議冒頭あいさつ
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会に参加

本日のコメント

ドル円は一段と円安が加速し、大台(156円、7円)を二つも変えNYでは、157円18銭まで上昇しました。前日の155円台までの上昇には過熱感はなく、ジリ高の展開でしたが、昨日は上昇の勢いが一変しています。それまでのドル高の流れに加え、昨日の夕方6時10分から開催された、片山財務相、城内経済財政相、植田日銀総裁の3者会談では、円安をけん制する厳しい言葉はなく、「高い緊張感を持って様々な動向を注視する」、「為替について具体的な話は出なかった」と、片山氏が記者団に話したことが「円売り」に火を付けました。市場は前日の「高市・植田会談」に続いて、急激な円安をけん制する動きがなかったことで、「円安を容認したのでは」と受け止め、ドル買い円売りを進めたようです。結局、「3者会談」が円安を加速させた格好でした。片山氏も、なかなか正直な方のようで、一部には「片山財務相は、実は円安を容認している」との憶測もあるようです。

NY時間午後に発表された10月のFOMC議事録の内容が、さらに円売りを加速させました。議事録によると、多くの当局者が年内は政策金利の据え置きが適切となる可能性が高いとの意見を示していました。議事録は「多くの参加者は自身の経済見通しに基づけば、年内は目標レンジを据え置くことが適切になる公算が大きいとの立場を示唆した」と記されていました。一方で、「幾人かの参加者は次回会合までに経済が予想通りに推移すれば、12月の利下げは十分に適切となり得る」との意見を表明していました。FOMC議事録でよく使われる人数に関する表現には、特定の序列があり、「Many(多くの)」は「Most/Majority(大部分の/過半数の)」より下に位置付けられています。12月の追加利下げに慎重姿勢を示唆した「Many(多くの)」参加者は、10月会合時点では、「なお少数派だった」ことを、この表現は意味すると解釈できます。ブルームバーグは、「FOMCメンバーの間では、インフレと失業のどちらが米経済にとってより大きな脅威であるかを巡り、意見が分かれている。今回の議事要旨は12月の利下げの可能性に関する不確実性を浮き彫りにした。10月会合では、2会合連続での0.25ポイント利下げが決まった。反対票を投じたのは2名。ミラン理事はより大幅な0.5ポイント利下げを求め、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁は金利据え置きを支持した」と報じています。FOMC議事録の内容を受けて、12月の利下げ確率は「29.3%」まで低下しており、ドル上昇の一因になっています。

米労働統計局(BLS)は、10月分の雇用統計を発表しないことを明らかにしました。同月分の雇用者数データは、12月に発表予定の11月分に組み込む方針だとしています。BLSは10月分について、失業率など重要指標の算出に用いられる家計調査データを事後的に収集することができなかったと説明。そのため、11月分の雇用統計は12月5日(金)ではなく、16日(火)に発表される予定とのことです。このことは極めて重要で、今年最後のFOMC会合は、12月9―10日に開催されます。つまり、FOMCメンバーは年内最後のFOMC会合前にこのデータを入手できないことになります。

昨日の朝の時点では、ドルが買われてもせいぜい156円止まりと予想していましたが、上記2つの要因により予想以上に円売りが進み、ユーロ円も181円台まで上昇しました。昨日は株価も下げ、債券も売られ、まさに「日本売り」の様相でした。今夜は「9月の雇用統計」が発表されます。市場予想は「5万1000人の増加」です。同時に「失業保険申請件数」も発表されます。労働市場に関するこれらの指標、市場の反応も読みにくいところです。ドル円は155−160円のレンジを固める動きと思えますが、そろそろ介入警戒感も強まる水準に近づいてきました。これまでにも述べたように、筆者は直ぐに実弾による介入があるとは予想していません。先ずは強い口調の「口先介入」でしょう。

本日のドル円は155円50銭〜158円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
10/31 植田・日銀総裁 「物価目標が実現する確度が少しずつ高まってきている」、「実質金利の低下に伴う金融緩和度合いが強まっている可能性があり、日本経済への影響を改めて精査する」、「米関税政策やその影響を巡る不確実性を非常に重視してきた」、「日本企業の収益に下押し圧力がかかる下でも、積極的な賃金設定行動が途切れないかどうかを、もう少し確認したい」 (6会合連続で政策金利を据え置いたことも踏まえ)ドル円は152円台前半から153台に。NYでは154円45銭までドル高が進行。
10/30 パウエル・FRB議長 「12月会合での追加利下げは既定路線ではない。そう呼ぶ状況からは程遠い」、「FOMCの一部では、いったん立ち止まり労働市場に本当に下振れリスクがあるのか、また現在目にしている成長加速が本物なのかを見極める時期に来ているとの見方がある」、「霧の中を運転しているときはスピードを落とすものだ」 債券が売られ、ドル円は153円台まで上昇。
10/16 ミラン・FRB理事 「最近再燃した米中貿易摩擦が経済にとって一段の下振れリスクとなり、迅速な金融緩和が必要だ」、「金融政策が今のように景気抑制的な状態にある中で、今回のようなショックが経済を直撃すれば、その悪影響は大きくなる」、「10月28〜29日のFOMC会合では0.5ポイントの利下げを支持する」、「今年は0.25ポイントずつ、3回の利下げが行われる展開になるだろう」 --------
10/16 ウォラー・FRB理事 「間違いを犯したくはない。だからこそ、慎重に0.25ずつ利下げし、様子を見てから次の判断をするのが賢明だ」 --------
10/15 ミラン・FRB理事 「1週間前と比べて下方リスクが増している。政策当局者として、それを政策に反映させるべきだと認識する義務がある」、「米中間の貿易政策を巡る不確実性の強まりが、新たなテールリスクを生じさせている」、「1週間前や1カ月前よりも、一段と低い金利を望んでいるとは言わない。だが、リスクバランスが変化したことで、迅速に政策をより中立的な水準に近づけることの緊急性が一層高まったと考えられる」 --------
10/15 ベッセント・財務長官 (円相場について)「水準についてはコメントしない」、「日銀が適切に金融政策を運営し続ければ、円相場も適正な水準に落ち着くだろう」、(日本の利上げの是非を巡っては)「植田和男総裁がどのように判断するか私からはコメントしない」 --------
10/14 ラガルド・ECB総裁 「米国との通商合意により不確実性は大幅に後退し、経済成長に対するリスクはいっそう均衡、インフレに対するリスクもまずまず均衡している」、(金融緩和は終わったのかと問われると)、「そのようなことは決して言わない。中央銀行当局者の仕事に終わりはないと思っているからだ」 --------
10/14 コリンズ・ボストン連銀総裁 「インフレリスクの抑制がやや一段と進む一方で、雇用への下振れリスクは強まっている。労働市場を支えるためには、年内に政策の正常化をさらに少し進めるのが賢明だと思われる」、「いくらか追加緩和を行っても、金融政策はやや引き締め的な状況が維持される。これは関税の影響が経済全体に波及した後、インフレの鈍化再開を確実にする上で適切だ」 --------
10/14 パウエル・FRB議長 「米経済見通しは9月会合以降変わっていないと見受けられる」、「雇用の伸びが鈍化しており、今後さらに弱まる可能性がある」、「求人が一段と減少すれば失業率上昇につながる可能性が高い。求人数が減少してもこれまでは問題なかったが、失業率が上昇に転じる地点に近づいている」 --------
10/13 ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁 「関税に起因する価格上昇が、持続的なインフレにつながるような状況は見られないというのが私の見解だ。特に労働市場において、そういった兆候はない」、「経済が私の想定どおりに推移すれば、今年と来年の金融政策調整によって、労働市場を完全雇用に近い状況に十分維持することができるだろう」 --------
10/9 高市・自民党総裁 「行き過ぎた円安ということを誘発するつもりはございません」、「一般論として円安にはいい面も悪い面もある」、「輸出企業にとっては競争力が生まれる側面がある」、(150円を超えるドル円相場は許容範囲かとの質問に対して)、「発言すべき事柄ではない」、「金融政策の手段は日銀が決める」、「私の立場で利上げそのものについて発言すべきでないということは分かっている」 ドル円は153円台前半から1円ほど円高に振れる。
10/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場のさらなる減速リスクには特に注意を払っている」、(インフレ率が約3%に上昇し、失業率が現在の4.3%を上回る水準にわずかに上昇するなど、経済が予想通りに推移する場合は)「今年中の利下げを支持するが、その具体的な意味合いは、今後見極める必要がある」 --------
10/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「大幅利下げを行えば、経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」、「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」 --------
10/7 ミラン・FRB理事 「人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインレへの影響は限定的だ」、「FRBが利下げを継続することは可能だ」 --------
10/6 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」 --------
10/2 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率は現在の目標である2%を上回って推移している」、「向こう数カ月に関税がインフレをさらに押し上げると予想する」、「従って、2%に確実に到達するため、政策経路の正常化をやや減速させることになるというのが私の予想だ。時間はしばらくかかるだろう」 --------
10/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場にある程度の安定が見られると思うし、基調としての経済もかなり堅調に成長を続けていると考えている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和