今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米6月のNFPは14.7万人増加」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は「6月の雇用統計」の結果を受け、143円台後半から急伸。雇用者数が予想を上回り、さらに失業率も低下していたことで発表直後からドルが買われ、145円27銭前後までドル高が進む。
  • ユーロドルは続落。雇用統計を受け、利下げ観測が後退する中、1.1717まで下落。
  • 株式市場では、米経済の好調さが示されたことで3指数が揃って上昇。ナスダックとS&P500は連日で最高値を更新する。
  • 債券は売られ、長期金利は4.34%台に上昇。
  • 金と原油は揃って反落。
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6月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 52.9
6月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 52.9
新規失業保険申請件数 → 23.3万人
5月貿易収支 → −71.5b
6月失業率 → 4.1%
6月非農業部門雇用者数 → 14.7万人
6月平均時給 (前月比) → 0.2%
6月平均時給 (前年比) → 3.7%
6月労働参加率 → 62.3%
6月ISM非製造業景況指数 → 50.8
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ドル/円 143.84 〜 145.27
ユーロ/ドル 1.1717 〜 1.1790
ユーロ/円 169.26 〜 170.51
NYダウ +344.11 → 44,828.53
GOLD −16.80 → 3,342.90ドル
WTI −0.45 → 67.00
米10年国債 +0.069 → 4.346%

本日の注目イベント

  • 独 5月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏5月卸売物価指数
  • 米 株式、債券市場休場(独立記念日)

本日のコメント

米労働市場の趨勢を掴むのは簡単ではないようです。前日に発表された「6月のADP雇用者数」が市場予想と大きく異なる3.3万人の減少だったことを受け、本番の雇用統計とは相関性が見られないことは認識してはいるものの、市場はどうしても連想から「下振れ」を予想してしまいます。「6月の雇用統計」では、非農業部門雇用者数(NFP)が「14.7万人」と、おおむね「11万人」との市場予想を上回っていました。さらに、5月分は「13.9万人」から「14.4万人」に、4月分も「14.7万人」から「15.8万人」へと、それぞれ上方修正され、米労働市場は依然として巡行速度を維持していることが示されました。失業率も「4.3%」と、前月から悪化していると見込まれていましたが、こちらも「4.1%」と、歴史的にも極めて低い水準でした。

筆者も今回は下振れの可能性の方が高いと予想していましたが、残念ながら外してしまいました。ただ、今回の結果については一部のエコノミストの中からは「季節調整の問題かもしれない」といった疑問の声も上がっています。「雇用者数は、州・地方政府での増加が目立ち、州政府の雇用は2023年以来の大幅増となった。地方政府の雇用も急増した。一方で、民間部門の雇用者数は7万4000人増。昨年10月以来の小幅な伸びにとどまり、雇用が鈍化しつつある状況と整合的な数字となった。雇用主は、トランプ大統領の一貫性のない通商政策に対応しつつ、同氏が推し進める税制法案の議会承認を待っている」と、ブルームバーグは今回の結果を説明しています。

その法案ですが、「1つの大きく美しい法案」と名付けられた大型減税・歳出法案が3日連邦議会下院で、218対214で可決しました。あとはトランプ大統領が署名をして成立する見込みです。日経新聞は、「政権最大の成果で、米経済にはやや追い風となる。企業や富裕層が恩恵を受ける反面、低所得層には厳しい内容となった。深刻な財政状態にある財政状況が一段と悪化する懸念がある」と伝えています。規模3兆4000億ドル(約493兆円)の同法案では、福祉プログラムの予算がカットされ、バイデン前大統領が取り組んだクリーンエネルギー政策の大半が巻き戻されることになります。採決では、最終的に共和党から造反したのはマッシー議員とフィッツパトリック議員の2名だけだったと報じられています。

雇用統計の発表を受け、ドル円は143円台後半から145円台に一気に買われましたが、145円台では伸び悩んだ印象も残りました。今回の結果を受け、7月のFOMC会合での利下げ確率は低下しましたが、まだ完全になくなったわけではありません。会合までにはまだ、消費者物価指数など、重要指標も発表されることから可能性は残っていますが、これで市場の焦点は「トランプ関税」の動向に移ってきたため、その不透明さを考えると利下げ見送りの可能性が高いことになります。ベッセント財務長官は3日CNBCとのインタビューで、「FOMCの判断は、ややずれているように思える」と金融当局を批判し、「FOMCが次回会合で政策金利を引き下げないのであれば、9月にはもっと大幅な利下げを実施することになるだろう」と話しています。また、日米通商協議についても、「日本は素晴らしい同盟国だが、今は難しい立場にある。7月20日に参議院選挙を控えており、それが取引を進める上で多くの国内的制約をもたらしていると思う」と、日本の政治的リスクにも言及していました。さらにベッセント氏は、発動期限の延長について問われると、「われわれは大統領の意向に従う。貿易相手が誠実に交渉しているかどうか判断するのは大統領だ」と答えていました。ブルームバーグは、「トランプ氏は貿易相手国・地域に対する具体的な関税率を記した書簡を、早ければ4日にも送付を開始する可能性がある」と報じています。日本に残された時間はもうほとんどないと思われます。後は日本が「起死回生の隠し球」を放れば、急転直下事態が好転する可能性はありますが、希望は持てません。

本日のドル円は144円〜145円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和