「反トランプのマムダニ氏、NY市長に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 東京市場で153円を割り込んだドル円は大きく反発。経済指標が概ね好調だったことでリスクオンが広がり、ドル円は154円35銭まで買われ、元の水準に。
- ユーロドルは小幅に続落。1.1469まで下げる。
- 株式市場では3指数が揃って反発。前日売られたAI関連銘柄が買い戻され、ナスダックは151ポイント上昇。
- 債券は大幅に下落。長期金利は4.15%台に上昇。
- 金は反発し、原油は続落。
10月ADP雇用者数 → 4.2万人
10月ISM非製造業景況指数 → 52.4
10月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 54.8
10月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.6
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| ドル/円 | 153.70 〜 154.35 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1469 〜 1.1494 |
| ユーロ/円 | 176.43 〜 177.14 |
| NYダウ | +225.76 → 47,311.00ドル |
| GOLD | +32.40 → 3,992.90ドル |
| WTI | −0.96 → 59.60ドル |
| 米10年国債 | +0.072 → 4.157% |
本日の注目イベント
- 豪 豪9月貿易収支
- 独 独9月鉱工業生産
- 欧 ユーロ圏9月小売売上高
- 英 BOE金融政策発表
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 7−9月労働コスト
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
- 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
- 米 ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁講演
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁、討論会に参加
本日のコメント
昨日の東京午前中、日経平均株価は大きく下げ一時は2400円ほどの下落を記録しました。その日のコメントで筆者は、「好調な株価の上昇が円売りを促してきた部分も大きく、今後の株価の推移はドル円を見る上では重要です」と記しました。そして「チャートでは、ドル高トレンドは一切崩れていません。」とも書きました。ドル円は株価の大幅下落にともなって153円台を割り込み、一時は152円96銭までドル安が進みました。その後、午後には日経平均株価の下げ幅が縮小すると、153円台半ばまで反発する動きでした。少なくとも東京時間でのドル円は、株価の動きと相関していることが改めて確認された格好でした。
「America First」を掲げ、自身の思うままに振舞っているトランプ大統領にとって、「おもしろくない」動きが出てきました。4日NY市で実施された市長選挙で、民主党候補のゾーラン・マムダニ氏が当選しました。AP通信によると、民主社会主義者を公言する人物が市政を率いるのは史上初めてとなるそうです。州議会議員でクイーンズ区出身のマムダニ氏(34)は、来年1月1日に第111代市長に就任します。過去100年で最年少のNY市長となり、南アジア系かつイスラム教徒の市長誕生は同市史上初めてのことになります。トランプ大統領は彼のことを「共産主義者」と呼び、もし当選したら同市への連邦資金の補助を止めるとも述べていました。さらにトランプ氏にとって逆風なのは、同じ日に投開票のバージニア州およびニュージャージー州知事選でも、ともに民主党候補が勝利しました。トランプ大統領の政権2期目の下で高まる経済への不安が有権者の間で広がっており、2026年の中間選挙で民主党が多数派に返り咲く可能性が示された格好です。ブルームバーグは、「いわゆる『オフイヤー選挙』、つまり今年のように、大統領選も中間選挙もない年に実施される選挙は国民による信任投票とも言え、来年の中間選挙の行方を占う試金石となる。共和党にとっては、国民がトランプ氏の統治をどのように評価しているか、またトランプ氏が選挙に参加しない場合にどのような将来が待ち受けているのかを探る機会でもある」と評していました。今回の結果はカリフォルニア州のニューサム知事にとっても追い風となります。中間選挙での民主党の勢いを高めるだけでなく、ニューサム氏自身の「2028年大統領選」の民主党予備選への有力候補としての地位も強化するものとみられるからです。
逆風はこれだけではありません。トランプ大統領が課した包括的な対外関税の合法性をめぐり、米連邦最高裁判所で5日、口頭弁論が始まりましたが、トランプ氏が主張する1977年制定の「国際緊急経済権限法」の適用に複数の判事が疑問を呈し、トランプ氏が柱とする経済政策が揺らぐ可能性が出てきました。最高裁のロバーツ長官は関税について「実質的に米国民への課税であり、それは本来常に議会の根幹的な権限だ」と述べました。さらに、保守派のゴーサッチ判事とバレット判事も、同法が大統領に数百億ドル規模の関税を徴収する権限を認める根拠となり得るのか、懐疑的な見方を示しました。両判事はトランプ氏に近いとされるだけに、やや驚きです。トランプ氏に不利な判断が下された場合、1000億ドル(約15兆4100億円)を超える返還が命じられる可能性があるようで、現在関税を負担している米国の輸入業者は、重荷が軽減されます。逆にトランプ氏が勝訴した場合、今後も米国の大統領が非常事態を名目に、広範な措置を取る先例が確立される恐れがあるとされています。最高裁は異例の迅速スケジュールに沿って審理を進めており、判断は年末にも出る可能性があるようです。ゴーサッチ判事は、議会が憲法上有する関税賦課の権限を大統領に委譲したと政権が解釈している点に懸念を示し、「議会が通商だけでなく宣戦布告の権限までも、大統領に丸投げすることを妨げる根拠がなくならないだろうか」と警告していました。
昨日のNYでは、「10月のADP雇用者数」が市場予想を上回り、さらに3.2万人減少していた9月分も、減少幅が縮小されています。また「10月のISM非製造業景況指数」も市場予想を上回っていたことから、市場には安心感が広がり、リスク資産の株価は3指数とも上昇しました。債券は売られ金利が上昇したことで、ドル円も154円35銭まで買われ、前日の水準を回復して来ました。ただ今後も株価のボラティリティは高く、ドル円の動きも不安定になる可能性が高いと予想しています。
本日のドル円は153円20銭〜154円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 11/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 | -------- |
| 11/4 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 | -------- |
| 11/4 | クック・FRB理事 | 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 | -------- |
| 11/4 | ミラン・FRB理事 | 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 | -------- |
| 10/31 | 植田・日銀総裁 | 「物価目標が実現する確度が少しずつ高まってきている」、「実質金利の低下に伴う金融緩和度合いが強まっている可能性があり、日本経済への影響を改めて精査する」、「米関税政策やその影響を巡る不確実性を非常に重視してきた」、「日本企業の収益に下押し圧力がかかる下でも、積極的な賃金設定行動が途切れないかどうかを、もう少し確認したい」 | (6会合連続で政策金利を据え置いたことも踏まえ)ドル円は152円台前半から153台に。NYでは154円45銭までドル高が進行。 |
| 10/30 | パウエル・FRB議長 | 「12月会合での追加利下げは既定路線ではない。そう呼ぶ状況からは程遠い」、「FOMCの一部では、いったん立ち止まり労働市場に本当に下振れリスクがあるのか、また現在目にしている成長加速が本物なのかを見極める時期に来ているとの見方がある」、「霧の中を運転しているときはスピードを落とすものだ」 | 債券が売られ、ドル円は153円台まで上昇。 |
| 10/16 | ミラン・FRB理事 | 「最近再燃した米中貿易摩擦が経済にとって一段の下振れリスクとなり、迅速な金融緩和が必要だ」、「金融政策が今のように景気抑制的な状態にある中で、今回のようなショックが経済を直撃すれば、その悪影響は大きくなる」、「10月28〜29日のFOMC会合では0.5ポイントの利下げを支持する」、「今年は0.25ポイントずつ、3回の利下げが行われる展開になるだろう」 | -------- |
| 10/16 | ウォラー・FRB理事 | 「間違いを犯したくはない。だからこそ、慎重に0.25ずつ利下げし、様子を見てから次の判断をするのが賢明だ」 | -------- |
| 10/15 | ミラン・FRB理事 | 「1週間前と比べて下方リスクが増している。政策当局者として、それを政策に反映させるべきだと認識する義務がある」、「米中間の貿易政策を巡る不確実性の強まりが、新たなテールリスクを生じさせている」、「1週間前や1カ月前よりも、一段と低い金利を望んでいるとは言わない。だが、リスクバランスが変化したことで、迅速に政策をより中立的な水準に近づけることの緊急性が一層高まったと考えられる」 | -------- |
| 10/15 | ベッセント・財務長官 | (円相場について)「水準についてはコメントしない」、「日銀が適切に金融政策を運営し続ければ、円相場も適正な水準に落ち着くだろう」、(日本の利上げの是非を巡っては)「植田和男総裁がどのように判断するか私からはコメントしない」 | -------- |
| 10/14 | ラガルド・ECB総裁 | 「米国との通商合意により不確実性は大幅に後退し、経済成長に対するリスクはいっそう均衡、インフレに対するリスクもまずまず均衡している」、(金融緩和は終わったのかと問われると)、「そのようなことは決して言わない。中央銀行当局者の仕事に終わりはないと思っているからだ」 | -------- |
| 10/14 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「インフレリスクの抑制がやや一段と進む一方で、雇用への下振れリスクは強まっている。労働市場を支えるためには、年内に政策の正常化をさらに少し進めるのが賢明だと思われる」、「いくらか追加緩和を行っても、金融政策はやや引き締め的な状況が維持される。これは関税の影響が経済全体に波及した後、インフレの鈍化再開を確実にする上で適切だ」 | -------- |
| 10/14 | パウエル・FRB議長 | 「米経済見通しは9月会合以降変わっていないと見受けられる」、「雇用の伸びが鈍化しており、今後さらに弱まる可能性がある」、「求人が一段と減少すれば失業率上昇につながる可能性が高い。求人数が減少してもこれまでは問題なかったが、失業率が上昇に転じる地点に近づいている」 | -------- |
| 10/13 | ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁 | 「関税に起因する価格上昇が、持続的なインフレにつながるような状況は見られないというのが私の見解だ。特に労働市場において、そういった兆候はない」、「経済が私の想定どおりに推移すれば、今年と来年の金融政策調整によって、労働市場を完全雇用に近い状況に十分維持することができるだろう」 | -------- |
| 10/9 | 高市・自民党総裁 | 「行き過ぎた円安ということを誘発するつもりはございません」、「一般論として円安にはいい面も悪い面もある」、「輸出企業にとっては競争力が生まれる側面がある」、(150円を超えるドル円相場は許容範囲かとの質問に対して)、「発言すべき事柄ではない」、「金融政策の手段は日銀が決める」、「私の立場で利上げそのものについて発言すべきでないということは分かっている」 | ドル円は153円台前半から1円ほど円高に振れる。 |
| 10/9 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 「労働市場のさらなる減速リスクには特に注意を払っている」、(インフレ率が約3%に上昇し、失業率が現在の4.3%を上回る水準にわずかに上昇するなど、経済が予想通りに推移する場合は)「今年中の利下げを支持するが、その具体的な意味合いは、今後見極める必要がある」 | -------- |
| 10/7 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「大幅利下げを行えば、経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」、「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」 | -------- |
| 10/7 | ミラン・FRB理事 | 「人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインレへの影響は限定的だ」、「FRBが利下げを継続することは可能だ」 | -------- |
| 10/6 | シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 | 「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」 | -------- |
| 10/2 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「インフレ率は現在の目標である2%を上回って推移している」、「向こう数カ月に関税がインフレをさらに押し上げると予想する」、「従って、2%に確実に到達するため、政策経路の正常化をやや減速させることになるというのが私の予想だ。時間はしばらくかかるだろう」 | -------- |
| 10/2 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「労働市場にある程度の安定が見られると思うし、基調としての経済もかなり堅調に成長を続けていると考えている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



