今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利4.76%台に上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は160円を挟み小動き。先週末のNYに続き、昨日の東京市場でも一時160円20銭までドル買いが進んだが、その後はじり安の展開。ベッセント財務長官が日銀が「正しい行動を取る」と期待表明したことが背景。NYでは159円60銭まで下落。
  • ユーロドルは1.16台を中心にもみ合う。ドイツのインフレ率が上振れしたことで、ECBによる利上げ観測も強まる。
  • 株式市場では米金利上昇を受け3指数が揃って下落。ダウは374ドル下げたが、ナスダックは小幅安。
  • 中東情勢の悪化を受け、原油価格が上昇したことでインフレ懸念が台頭。債券は続落し、長期金利は一時4.76%台を記録。
  • 金は続落。原油は米国がイランを攻撃したことを受け大きく上昇。85ドル台まで買われる。
ドル/円 159.60 〜 159.89
ユーロ/ドル 1.1592 〜 1.1620
ユーロ/円 185.28 〜 185.63
NYダウ −374.09 → 53,185.90ドル
GOLD −48.40 → 4,481.50ドル
WTI +2.36 → 85.76ドル
米10年国債 +0.032 → 4.750%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4−6月期経常収支
  • 豪 豪7月住宅建設許可件数
  • 中 8月RatingDog製造業PMI
  • 独 独8月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月失業率
  • 英 英7月消費者信用残高
  • 米 8月ISM製造業景況指数
  • 米 7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 8月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 8月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 8月自動車販売台数

本日のコメント

中東情勢が再び不透明さを増しています。米国とイランが約1カ月ぶりに双方で攻撃を行いました。米軍がイランのロケット発射装置を攻撃する一方、イランはヨルダンに向けてミサイルを発射して応戦しています。依然として恒久的な和平への道筋が見えてこないことで、市場全体が重苦しい雰囲気に包まれています。WTI原油価格は85ドル台まで上昇。原油価格の上昇が米国のインフレにつながる懸念が意識され、株式市場では株価が下落。債券も売られ、米長期金利は一時2025年1月以来となる「4.76%台」を付けました。先週末のジャクソンホールで、ウォーシュ議長は2%のインフレ目標を守る決意とも思える講演を行い、インフレの芽が確認されれば、直ぐにでも利上げを決断する姿勢を見せたことも、債券の売り圧力になった側面もあったようです。

日本の長期金利も上昇し、昨日の債券市場では一時「2.95%台」まで上昇しました。こちらの背景は、2027年度予算を巡る各省庁の要求が31日に締め切られ、要求額が過去最大の143兆円前後に膨らんだことが大きな要因でした。さらに要求段階で金額を示さない「事項要求」が今後の歳出増につながると予想されています。「例えば、防衛省は8兆8908億円を要求したものの、水中発射型の極超音速誘導弾の開発費などが事項要求だった」(日経新聞)ように、今後要求額がさらに増える可能性があります。高市首相は、これまでの過度の緊縮財政志向から脱却して成長軌道へと戻すことを繰り返し公言しており、7月には今予算を「責任ある積極財政元年」と、位置づけていました。生命保険会社など機関投資家は、現在の高水準の金利を、「魅力的」と考えているものの、今後さらに金利が上昇することが考えられ、積極的な購入を手控えています。市場からは「購入者不在」、「3%は時間の問題」との声も聞かれました。

さらに円金利の上昇を巡っては、筆者も参加している「日経QUICK」の月次調査では、今回の利上げ局面における日銀の政策金利の到達点(ターミナルレート)は、調査参加者の平均予想が「1.9%」であったことが明らかになりました。通常は0.25%の幅で引き上げることから、現行の1%の水準からは「3回以上の利上げ」が行われると予想していることになります。今月18−19日の日銀決定会合での政策金利引き上げはほぼ決まりかと思いますが、これはすでに市場に織り込まれています。9月利上げが予想されながらも、ドル円が再び160円台を回復した動きから、「日銀がさらに積極的な利上げスタンスに追い込まれる」との観測も少なくありません。ベッセント財務長官も30日、日本銀行の植田総裁が金融政策に関して、「正しい行動を取ると期待していると述べた」と、ロイター通信が報じていました。ロイターによると、円安に対処するため、日銀が連続利上げを検討すべきかと問われたベッセント氏は、「何をすべきか私から彼らに言うつもりはない」とする一方、「リフレ政策だったアベノミクスは恐らく終わりを迎えたと考えているとは言っておきたいと述べていた」と報じました。ベッセント氏は、31日から米ノースカロライナ州アッシュビルで2日間の日程で開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議に合わせ、植田総裁と会談することになっており、今日あたり、会談が実現しているかもしれません。

有事のドル買いと日本の財政懸念により、ドル円は大きく値を下げない一方、介入警戒感がドルの上値を抑えているのが現状ですが、上でも触れているように、今後日銀が積極的な利上げ政策へと舵を切り直せば、ドルの上値を抑える要因にも、さらに一つ材料が加わります。ただ、筆者は今後3回以上の利上げの実施には懐疑的です。先ず、現政権がそれほど急激な追加利上げを容認しない可能性が高いと思うからです。加えて、急激な利上げは円安を止めることにはなるかもしれませんが、企業の借り入れコストを増大させ、積極財政で成長を加速させようとする高市政権の経済効果を相殺させてしまう可能性もあります。また、金利上昇が国債費を増大させ、財政悪化懸念を増幅させてしまうリスクもあります。「ターミナルレート1.9%」は、かなり極端な予想と考えていますが、どうでしょう・・・。

本日のドル円は159円〜160円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/28 ウォーシュ:FRB議長(ジャクソンホールでのシンポジウムで) 「インフレ率を2%の目標に戻す」、「私の判断基準はこうだ。基調的なインフレが明確かつ十分な速さで目標に向かっていると確信できなければならない。そうでなければ、われわれにはやるべきことがある。それがわれわれの仕事だ」、「やるべきことがある」、「私はきょう、特定の政策決定ではなく、規律を重んじる決意を持ってここに立っている」と述べ、さらに、「インフレ率が2%を上回っている中、FRBは現時点で、最大の重点を物価に置くべきだと」 ドル円は159円台半ばから160円20銭まで上昇。米金利高、株安が進む。
8/27 ベッセント:財務長官(介入に対するウォーレン上院議員への回答で) 「日本は米国債の主要な保有国だ」、「円相場が無秩序な動きとなれば、ポジションの強制的な巻き戻しを引き起こす。そうなれば、世界の市場を不安定化させ、最終的には米国の家計や企業の借り入れコストを押し上げる可能性がある」 --------
8/13 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「現在のインフレ高止まりの大部分は、いずれ収まるはずのショックによるものだ」、「インフレ率はあまりに長く高すぎる水準にあり、企業や消費者の物価見通しが上振れするリスクがある」、「そうなれば、インフレ率を目標まで完全に引き下げるために追加の対応が必要になる」 --------
8/13 ハマック・クリーブランド連銀総 「こうした数字が低めに出ているのは良いことだ。ただ、この傾向が今後も続くのか、あるいはインフレ率を2%の水準まで押し下げるほど十分に低い数字が続くのか、確信は持てない」、(金利に関して)「今こそ行動する必要がある」 --------
8/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 「経済データ次第では、9月にも利上げを支持する可能性がある」、「最新の雇用者数の数字を過度に重視すべきではない。失業率は比較的安定している」、「強弱が入り交じる労働市場データよりも、インフレのリスクの方が大きい。注視すべき点は多いが、インフレ率は高過ぎる」 --------
8/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在、米経済が直面する最大の問題だ」、(指標は)「労働市場は良好とは言えないものの、安定していることを示している。消費者が健全な状態を維持する限り、経済も健全な状態を維持するだろう」 --------
8/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今後発表される経済指標を見極めながら、今こそ緩やかな利上げを開始するべき時だ」、「政策当局が対応を先送りし、高インフレが定着すれば、より大幅な利上げを余儀なくされる可能性がある」(7月31日)、「現時点ではなお判断できない」、「インフレ率がこのまま横ばいで推移する、あるいは一段と悪化するようであれば、インフレを再び押し下げるため、政策金利を段階的に調整し始める必要があると思う」、(年末までに3回の利上げを実施する可能性があるかとの質問に)、「それは不可能ではない」 --------
8/5 クック・FRB理事 「近いうちに持続的なディスインフレの兆候を確認できなければ、私は行動を取る用意がある」、「目標を上回るインフレが5年間続いていることから、高いインフレ率が価格や賃金の決定行動に定着してしまうリスクが高まっている。そうした持続性はわれわれにとって、対処がはるかに困難になる」、「関税の影響が薄れることや、原油価格が下落する可能性、さらにAIブームに関連する一部の圧力低下によって、インフレが和らぎ、より引き締め的な政策は不要になる可能性もある」(それでも)、「この講演から一つだけ持ち帰っていただくとすれば、それは私が物価安定の回復に断固として取り組んでいるということだ。インフレ率を目標へ下げることが最優先であり、議会がFRBに課した2つの使命を達成する上でそれは欠かせない」 --------
8/4 ベッセント・財務長官 「問題なのは円の水準だ。それが別の問題を引き起こしたり、競争的な通貨切り下げを招いたりする恐れがある。それは健全ではない」、「円相場の安定は米国だけでなく、アジア地域全体にとっても極めて重要だ」、「日本とは緊密に連絡を取り合っている」、「米経済や米国の納税者の利益にかない、世界経済の安定化にもつながる形であれば、日本を支えるために必要なことは何でもする」、(円安の影響が物価に波及していることを挙げ)、「円安によってエネルギー輸入コストが押し上げられている」、「円が大幅に下落すれば、他の通貨もそれに追随することになる。韓国ウォンで過度な変動が見られている。中国人民元は過小評価されていると考える向きも多い」、(円相場を安定させる上で日本銀行の利上げが必要か問われ)「日銀が取るべき対応について先回りして判断するつもりはない」、(植田日銀総裁とは15年来の付き合いがあるとし)、「必要なことは実行すると信じている。介入に続いて、政策面での後押しが必要になる。そうした対応が行われると強く確信している」 --------
8/3 ベッセント・財務長官 (協調介入を実施したことについて)「財務省および日本銀行の当局者と緊密に連絡を取り合い、状況を注視し続けている。必要であれば、さらなる協調介入をためらわない」、「米国は、円の著しい過小評価を是正するため、日本が断行した市場対応および金融政策を強く支持する」 --------
8/3 片山・財務相 (為替介入を実施したことについて)「最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したものだ」 --------
7/29 FOMC声明文 「経済活動が堅調なペースで拡大しつつある。設備投資と生産性の伸びが力強い。(インフレ率は、)「2%目標に比べて高止まりしている」 ドル円は163円台後半から下落。株式と債券も売られる。
7/29 ウォーシュ・FRB議長 「一部の家計や企業、市場関係者の間では、5年にわたる高インフレを受けて、FRBは2%を超えるインフレ率を事実上容認しているとの誤った認識が根強く残っている。改めて強調したい。インフレの緩やかな目標など存在しない。少なくとも、この委員会の下では、暗黙の緩やかな目標も存在しない」、「インフレ率が見通し期間を通じて高止まりするようであれば、金利はその対応策の一つになり得るが、それだけが手段というわけではない」、「市場に影響を与えようとする姿勢を一部後退させたことで、市場は自ら判断を下した」と説明。「米国債の利回り曲線全体で名目金利に対する市場の見方は上方修正された」 短期ゾーンの金利が低下し、中長期ゾーンの金利が上昇。
7/23 ラガルド・ECB総裁 「利上げを検討する必要はないか自問した中銀総裁も一部いた」、「現時点では待つことが適切だと判断した。今後数週間の情勢の推移と、その間に公表されるデータを極めて注意深く見守る」、「インフレ見通しには上振れリスクがある。エネルギーショックがさらに強まる恐れがあり、他の物価や賃金への影響も現在の想定より大きくなる可能性がある。エネルギー価格の高止まりが長引くほど、より幅広い物価の押し上げにつながるだろう」、「基調的な物価上昇率は現時点では抑制されている」、「6月のユーロ圏総合インフレ率は2.8%へ鈍化し、市場予想も下回った。しかし、今月に入り戦闘が再開したことで、政策当局者の間では金融引き締めをまだ終わらせることができない可能性が認識され始めている」 ドル高の流れの中、ややユーロ売りに拍車。
7/16 ローガン・ダラス連銀総裁 「物価安定と完全雇用というFRBの二つの使命を踏まえると、政策金利を現行よりやや高い水準に引き上げた方が、見通しとリスクの均衡をより適切に保てると現時点では考えている」、「インフレが自律的に2%まで戻る方向にないのであれば、少なくとも一定程度の引き締め的な政策が必要だ」、「物価が1カ月落ち着いただけでは十分ではない。物価安定を取り戻すという仕事をやり遂げる時だ」 --------
7/14 ウォーシュ・FRB議長 「FOMC参加者は、高止まりするインフレを長期にわたって容認することはない。われわれは物価安定の回復に向け、揺るぎない決意を共有している」、「われわれが適切な政策運営を実現すれば、そして実現する所存だが、過去5年間の高インフレは過去のものとなる」米6月のCPI発表を受けて)、「朝発表された統計を見て『任務は完了した』と考える人もいるかもしれないが、それは私の見解ではない」、(トランプ氏から公に批判された場合でも経済指標に基づいて政策判断を行うのかと問われ)「そうする」 --------
7/13 ウォラー・FRB理事 「今週発表されるコアインフレ指標がまたも強い内容となった場合、FOMCは近い時期の金融政策引き締めを検討する必要があるだろう」、「労働市場は安定しており、個人消費は堅調だ。米経済が良好な状態にある。関税やエネルギー価格、AIインフラ整備を背景としたインフレ圧力を受け、金融政策は岐路に立たされている」、「どのように見ても、どの指標で測ろうとしても、インフレ率は今年上昇している」 金利上昇、ドル高、株価下落の一因に。
7/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 (AIが押し上げる需要を最も注視していると述べ)、「これが供給に対して需要を持続的に押し上げ、インフレ圧力につながるのであれば、そうした状況を一時的なものとして見過ごすことはできない」、(インフレ率が自身の基本シナリオよりも持続的かつ大幅に高くなれば)、「金融政策で対応する必要がある」、「一方、そうならずにもっと穏やかな展開となれば、金融政策は適切な位置にあり、今後もその状態が続くと考えている」、「今年後半のコアPCEの伸び率が月0.2%であれば、ディスインフレの進行が続いているとの私の見方と一致する。それを上回れば、インフレがやや根強いことを示す兆候になる」 --------
7/1 ウォーシュ・FRB議長 「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」、「米国の物価安定を実現する。それがこの委員会に課せられた使命であり、われわれの目標でもある。そのための戦術や戦略などについては今後明らかにしていく」、「FRBは非常に長くにわたり独立した中央銀行であり、現在も独立した中銀であり続ける。その点に変わりはない」、(将来的な金利政策に関して)、「フォワード・ガイダンスを示さない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和