今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米第一四半期GDPは−0.3%」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は小幅に上昇し、NYでは143円20銭まで買われた。第一四半期GDP速報値はマイナスだったものの、個人消費が堅調でこの日発表された経済指標は強弱まちまち。
  • ユーロドルは1.31台前半から後半で推移。
  • 株式市場はまちまちながら、ダウとS&P500は7日続伸。
  • 債券は続伸。長期金利は4.16%台に低下。
  • 金と原油は続落。
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4月ADP雇用者数 → 6.2万人
1−3月労働コスト → 0.9%
1−3月GDP(速報値) → −0.3%
4月シカゴ購買部協会景気指数 → 44.6
3月個人所得 → 0.5%
3月個人支出 → 0.7%
3月PCEデフレータ(前月比) → 0.0%
米3月PCEデフレータ(前年比) → 2.3%
米3月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.0%
米3月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.6%
3月中古住宅販売成約件数 → 6.1%
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ドル/円 142.49 〜 143.20
ユーロ/ドル 1.1318 〜 1.1388
ユーロ/円 161.70 〜 162.62
NYダウ +141.74 → 40,669.36
GOLD −14.50 → 3,319.10ドル
WTI −2.21 → 58.21ドル
米10年国債 −0.010 → 4.162%

本日の注目イベント

  • 豪 豪1−3月四半期輸入物価指数
  • 豪 豪3月貿易収支
  • 日 日銀金融政策決定会合
  • 日 植田日銀総裁記者会見
  • 欧 ユーロ圏4月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏3月失業率
  • 英 英4月製造業PMI(改定値)
  • 英 英3月消費者信用残高
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 4月ISM製造業景況指数
  • 米 4月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
  • 米 4月自動車販売台数
  • 米 決算発表 → マクドナルド、マスターカード、イーライリリー、アップル、アマゾン、エアビーアンドビー

本日のコメント

トランプ大統領は就任100日目に当たりミシガン州で演説を行いましたが、その中で再びパウエル議長を批判していました。トランプ氏は、「連邦準備制度の当局者があまり良い仕事をしていないにもかかわらず、インフレ率は基本的に低下して金利は下がっている」と話し、金融当局が利下げせずにいることに改めて批判を繰り返しました。トランプ氏は、「連邦準備制度を批判すべきではないとされている。思い通りに任務を遂行させるべきだということだ」としつつも、「金利については彼よりも私の方が良くわかっている」と、これまでの主張を繰り返しました。パウエル議長率いるFRBも、出来れば政策金利を引き下げたいところですが、それをさせないのが「トランプ関税」の不透明性です。自身の政策が金利引き下げの妨げになっていることを知らないはずもありませんが、もしそうだとしたら「金利について私の方が良くわかっている」などと、口にすべきではありません。利下げをしないFRBに余程腹をたてているのでしょう。また演説では、自身の成果の一例としてガソリン価格の低下を挙げていました。「Drill baby drill !!」(掘って、掘って、掘りまくれ!!)の結果、「ガソリン価格は3つの州で1ガロン当たり1.98ドルになった」と主張していましたが、全米の平均価格では就任前と変わっていません。結局90分にも及んだ演説では、「相互関税で急激に高まった景気後退懸念には触れず、国境政策など支持者が熱狂するデータに時間をかけた。自身の支持率低下へのいら立ちをのぞかせた」と、日経新聞は報じていました。

トランプ氏はその後ホワイトハウスで行われた「米国への投資」に関するイベントでもパウエル議長のことを「あまり好きではない」と述べていました。因みに、このイベントには孫正義ソフトバンクG会長兼社長や、エヌビディアのジェイスン・ファンCEOも出席していました。さらに閣議では、株価を急落させた弱い経済データの責任をバイデン前大統領に転嫁し、「最初に言っておくが、これはバイデンのせいだ。トランプではない」と述べていました。関税に関しては「いずれ中国とディールを結ぶと期待している。習近平主席との電話会談は実現するだろう」とも話していました。

米1−3月期のGDP速報値は「−0.3%」と、2022年以来の低水準でした。GDP下振れの最大の要因は貿易収支の悪化でした。輸出から輸入を差し引いた純輸出の1−3月は、GDPを4.8ポイント押し下げる要因になっています。市場予想よりも低い伸びだったことで、利下げ期待が高まり株価は上昇し、ドル円は下落するパターンとなるのが一般的でしたが、この日は個人消費が依然として底堅いことが確認されたこともあり、ドル円は143円台前半まで買われています。ただ、ADP雇用者数が「6.2万人」と、市場予想を大きく下回るなど、発表された経済指標はまちまちの結果でした。

昨日の午前中、第2回目の日米関税協議に出席するため羽田を飛び立った赤沢経済再生相は、出発前に「どうやってウィンウィンの関係を築き上げる合意に達するのか常に考え、一歩でも二歩でも前進したい」と、決意を語っていました。ベッセント財務長官らとの協議は現地時間5月1日の午後に開催される予定です。現在日本の自動車や鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税は25%で、相互関税は10%です。これまでのベッセント氏の口ぶりからすれば、日本に対する関税率は相当軽減されると予想していますが、予断は許しません。

本日は日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。「トランプ関税」による影響の不透明さもあり、政策金利の引き上げは「まずない」と思われます。午後3時半からの植田総裁の発言がやや注目されるところです。

本日のドル円は142円〜144円程度と予想します。

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明日2日(金)の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせて頂きます。ご愛読者の皆様にはご不便をお掛けいたしますが、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和