今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、151円台後半まで急落後反発」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間夕方5時過ぎに152円台を割り込んだが、その後反発。NYではGDPが上振れしたこともあり、154円30銭まで上昇する荒っぽい動きに。
  • ユーロドルは1.08台半ばで小動き。
  • 株式市場ではダウは反発したものの、ナスダックとS&P500は続落。ハイテク株への売りが止まらず、ナスダックは160ポイント安。
  • 債券は買われ、長期金利は4.24%台へ低下。
  • 金は大幅に売られ、原油は続伸。
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新規失業保険申請件数 → 23.5万件
4−6月GDP(速報値) → 2.8%
6月耐久財受注 → −6.6%
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ドル/円 152.26 〜 154.30
ユーロ/ドル 1.0831 〜 1.0870
ユーロ/円 165.47 〜 167.59
NYダウ +81.20 → 39,935.07ドル
GOLD −62.20 → 2,353.50ドル
WTI +0.69 → 78.28ドル
米10年国債 −0.043 → 4.241%

本日の注目イベント

  • 日 7月東京都区部消費者物価指数
  • 日 5月景気先行指数(CI)(改定値)
  • 日 5月景気一致指数(CI)(改定値)
  • 欧 パリ五輪開幕(8月11日まで)
  • 米 6月個人所得
  • 米 6月個人支出
  • 米 6月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 6月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 6月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 6月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 7月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
  • 米 トランプ氏、イスラエル首相と会談

本日のコメント

24日のコメントで指摘したように、やはり節目の155円を割り込むと怒涛のようなドル売りを誘発し、昨日の東京時間夕方には151円94銭前後までドルが急落しました。これも予想したように24日の午後1時過ぎには155円手前で「155円割れを巡る攻防」が続き一進一退でしたが、一旦割り込むとストップロスを巻き込みドル売りが加速しました。結局、28時間程で3円以上のドル安円高が進んだことになります。円は対ドルだけではなく、ユーロ円などクロス円でも買われました。ドル円が155円台から「大台を4つ」変えたにもかかわらず、この間ユーロドルは終始1.08台で動いていません。これは「ユーロ円」でも売りが活発化したことで、「ユーロドル」の上値を抑えた証左です。ドル円であれだけドル安が進めば、「ユーロドル」は1.10台まで上昇(ドル安)してもおかしくはない印象でした。

ブラジルのリオデジャネイロで開催されているG20会合でイエレン財務長官は、トランプ氏がブルームバーグとのインタビューで「米国にとってドル高は大きな問題だ」と述べたことに対して、為替レートは市場で決定されるべきだとの説明を改め行っていました。イエレン氏は、「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」と説明。「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」と続けていました。この発言から、日本の市場介入には依然としてネガティブな認識を持っていることが、改めて確認できます。実際に会見では、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」と再度指摘しています。この会合には日本からも鈴木財務大臣や神田財務官も出席しているはずで、この言葉をどのように受け止めているのでしょうか。

バイデン大統領は24日、大統領候補からの撤退を決めた経緯をホワイトハウス大統領執務室から米国民に対して説明しました。大統領は、「新しい世代にバトンを渡すのが米国を団結させる最善の方法だと決断した」と述べ、「何事も民主主義を救うため邪魔はできない。個人的な野心も含む」とも話していました。ここまでは理解できますが、バイデン氏は25日にはイスラエルのネタニヤフ首相との会談を行い、イスラエルの非人道的行為を非難することも無く友好的な会談で終わっています。一方、ネタニヤフ氏は、「誇り高きユダヤ人シオニストから、誇り高きアイルランド系米国人シオニストへ、50年にわたる公務と50年にわたるイスラエル国家への支援に感謝したい」と述べ、「2人は40年来の知り合いだ。今後も取り組んでいきたい」と、バイデン氏を持ち上げていました。イスラエル軍がガザ地区の民間病院を攻撃し、子供を含む多数の民間人が犠牲になった際には「イスラエルはレッドラインを越えた」と批判していましたが、今回の会談では友好的だったようです。イスラエルに対するこの辺りの一貫しない手ぬるい対応が、自身が今回大統領候補から撤退する一因につながったことなど、理解していなかったのでしょうか。これに先立ってネタニヤフ氏は米議会で演説を行い、ハマスに対するイスラエルの戦争の擁護と、勝利に向けた米国からの支援と武器供与の継続を訴えていましたが、この演説を、ペロシ元下院議長や、民主党では主要議員の多くがボイコットしていました。また、連邦議会議事堂近くでは大規模な抗議活動も行われていました。

何度も触れていますが、今回のドルの下落で日足の「サポートライン」と「雲の下限」も明確に下抜けしています。 どこまで下げるかは別にして、この状況を考えればテクニカル的には「ドル高トレンドは短期的には転換した」と考えられます。日足でローソク足が雲の下で推移するのは今年1月15日以来、およそ半年ぶりということになります。

本日のドル円は152円50銭〜154円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/25 イエレン・財務長官 「米国では数年前から、金融引き締め政策が敷かれており、金利が他国より高い水準にある」と指摘。「そのために資金が流入し、ドルが強くなる」、「こうした状況は当然予想されるものだ。システムはこのように機能すべきものだ」、「米国も一員であるG7は市場で決定される為替レ―トにコミットしており、介入は不自然なボラティリティーが起きた状況においてのみ、パートナー国との協議で行われるべきだ」(ブラジルでのG20会合で) --------
7/21 バイデン大統領 「再選を目指す意向であったが、私が身を引き、残りの任期に大統領として職務を全うすることに専念することが、党と国にとって最大の利益であると信じる」、「私は、カマラ(ハリス副大統領)が今年選挙での民主党の候補者になることを全面的に支持する。民主党とわが国全体を団結させるため全力を尽くす」 --------
7/17 トランプ・前大統領 「パウエル議長には任期を全うしてもらう」、「われわれは大きな通貨問題を抱えている」、「強いドルが問題だ」、(FRBによる利下げについては)、「11月の大統領選までには利下げを行わないよう」 ドル安が加速。157円台から156円台前半に。
7/17 ウォラー・FRB理事 「最終地点に到達したとは考えていないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると思う」 --------
7/17 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「われわれが求めているディスインフレトレンドに近づいている。これは前向きな兆しだ。インフレが目標の2%に持続的に向かっているとの確信を深めるため、さらに多くのデータを確認したい」 --------
7/17 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「最近のディスインフレの広がりは心強いが、それが持続する証左を、まだなお探している」 --------
7/15 パウエル・FRB議長 「1−3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」、「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ。これらのバランスは改善している」 ややドルが売られ、債券と株は買われる。
7/11 デーリー・総裁SF連銀総裁 「現時点において物価安定と完全雇用という当局が責務を負う目標へのリスクは、一段とバランスが取れてきており、金融政策が機能しつつあるのは明白だ」と発言し、「雇用やインフレ、GDP、景気見通しに関するデータなど、これまでに得られた情報を考慮すると、何らかの政策調整が正当化される可能性が高い」 --------
7/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ率が2%の物価目標に向って下げていることを示す待望の証左を得られた」、「上々だ。強く勇気づけられる」 市場への影響: --------
7/11 パウエル・FRB議長 「2%の物価目標達成に確信はあるのか」と質問された議長は、「確信はある程度ある」、「問題は、2%に向けて持続的に低下していると十分に確信しているかということだ。私にはまだそう言う用意はない」、「インフレに関する仕事は終わっていない。やるべきことはまだある」 株価は大幅に上昇し、ドル円も161円81銭まで買われる。
7/2 パウエル・FRB議長 「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能だ」、「それがわれわれの計画だ」、(前回のインフレ統計とその前のデータについて)、「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」、「最近見られたようなデータがさらに続くのが望ましい」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は161円台前半まで売られる。
6/26 神田・財務官 「行き過ぎた動きに対して必要な対応を取る」と述べ、「特定の相場水準を対象には考えておらず、あくまで投機などによる急激な変動あるいは無秩序な動きに対して対応する方針に変わりはない」、「最近の円安の進行には深刻な懸念を有している」、「高い緊張感を持って市場の動向を注視している」 ドル円が160円台半ばまで上昇した際に。発言を受けやや円が買い戻されたが、直ぐに円売りが再燃。
6/25 クック・FRB理事 「インフレが大幅に改善し、労働市場が徐々に冷え込む状況では、経済の健全なバランスを維持するために政策の抑制度合いを緩和することが、ある時点で適切となるだろう」、「3カ月と6カ月先のインフレ率は23年下期(7−12月)に見られたような『良好な数字』と類似したものになると予想している」 --------
6/25 ボウマン・FRB理事 「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」 --------
6/24 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場の調整は今のところ緩やかで、失業率は小幅にしか上昇していない。しかし、このような緩やかな展開になる可能性が低下する時点に近づいている」 --------
6/24 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレに関してここ1カ月に見られたようなデータがさらに数カ月続き、実体経済の他の部分の状況も鈍化した場合、『これまでのような景気抑制的な政策を維持すべきなのだろうか』という疑問を持ち始めざるを得なくなる」、「インフレ率が当局目標の2%に向けて低下しているという確信をもう少し強められると期待している」 --------
6/20 米財務省 「財務省としては、自由に取引される大規模な為替市場で介入は適切な事前協議を伴う形で極めて例外的な状況に限定されるべきだ」、「日本は為替運営の点で透明性がある」 日本を為替「監視リスト」に追加。ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (米金融当局はインフレ率を目標の2%へと引き下げるとしつつも)、「それには1、2年かかる可能性が高い」 ドル円の上昇要因となり、ドル円は158円95銭まで買われる。
6/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「今回のインフレの数字は非常に心強いもので、こうした数字がさらに得られるなら、利下げは可能だというのが私の見解だ」 --------
6/18 植田・日銀総裁 (7月会合までに入手できる経済・物価・金融情勢い関するデータや情報次第としながらも)、「場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分あり得るというふうに考えている」、「基調的な物価上昇率がしっかりと高まっていくかどうか、もう少し引き続き点検していく必要があると考えた」 やや円を買い戻す動きもあり、ドル円は小幅に下落。
6/17 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「現時点における自身の予想に基づけば、年内1回の利下げが適切だ。ただ、利下げの前にさらに数ケ月のインフレ改善を確認したい」 --------
6/14 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対するリスクはまだ上向きだと考えている。労働市場へのリスクは両方向だと思う」、(今年1回の利下げを示唆した最新のFOMC予想について)、「自分の経済予測とかなり近い」 --------
6/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレ率が2%に戻りつつあることを確信するには、もっと多くの証拠が必要だ。われわれは現在、何らかの意思を決定する前に時間をかけてインフレ統計、および経済や労働市場に関するデータをさらに見られる非常に良い位置にいる」、「年内に1回の利下げがあるとすれば、年末に向けて行われる公算が大きい」 --------
6/12 パウエル・FRB議長 「最近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容で、われわれのインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られている」、「インフレ率が持続的に2%に向っているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」、「今回の統計が確信を強める上では前進と言えるが、現時点での利下げを正当化するほどではない」 ドル円は155円台から156円台に反発。
6/12 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。雇用の伸びは強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある。委員会は目標実現のため、FF金利誘導目標レンジを5.25−5.5%に据え置くことを決めた。委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
6/10 ラガルド・ECB総裁 「われわれは適切な決定を下したが、それは金利が直線的な低下軌道にあることを意味するものではない」、「われわれは新たな見通しが立った時のみならず、あらゆる段階で再評価を行う」、「ディスインフレは十分に進行しており、向こう1年半にわたり継続すると考えている。そのため金利を引き下げる可能性がある。だが、まだ勝利宣言はしない」 --------
6/6 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」 --------
6/6 ラガルド・ECB総裁 「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」 タカ派的な内容だったためユーロドルは1.09台まで買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和