今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円ついに163円台に乗せる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はNYで163円台に乗せる。米兵3人が死亡したことで、米国の大規模な攻撃も予想され、中東情勢がさらに懸念材料に。米金利も上昇したことでドル円は163円24銭まで上昇。
  • ユーロドルではややドルが買われたものの限定的。ユーロ円は186円11銭まで買われ、約1ヵ月ぶりの高水準に。
  • 株式市場では3指数が揃って4日ぶりに反発。売られていた半導体株が買われ、ナスダックは329ポイント高。
  • 債券は続落し、長期金利は4.62%台に上昇。
  • 金は反発し、原油はさらに買われ、85ドルに接近。
ドル/円 162.70 〜 163.24
ユーロ/ドル 1.1397 〜 1.1420
ユーロ/円 185.71 〜 186.11
NYダウ +385.38 → 52,224.64ドル
GOLD +60.50 → 4,076.40ドル
WTI +1.68 → 84.91ドル
米10年国債 +0.036 → 4.628%

本日の注目イベント

  • 日 6月貿易統計
  • 英 英6月消費者物価指数
  • 米 決算発表 → フィリップ・モリス、AT&T、アルファベット

本日のコメント

昨日のリポートで「163円台に向かって行く動きに違和感はありません」と、最後に書きましたが、そのおよそ16時間後にはドル円が、約40年ぶりとなる163円台に乗せました。NYでは、大台超えはいつものことですが、ストップロスのドル買いを巻き込む格好で163円24銭までドルが買われています。イランとの戦いの中、米兵が3名死亡したことで、中東情勢の緊張がさらに高まったことが背景です。加えて、昨日政府は「骨太の方針」原案を正式に決定したことも「円売り材料」として、改めて蒸し返された側面もあったと思われます。「有事のドル買い」に加え「財政懸念の円売り」が意識されたわけですが、「介入以外に円を買う材料がない中」、ドル高円安が進むのも、ファンダメンタルズに沿った自然の流れかと思います。

政府は昨日、「骨太の方針」を決定し、2027年度を「責任ある積極財政元年」と位置づけ、補助金により成長分野の企業の供給拡大を国主導で後押しする方針を明確にしました。「財政健全化」の文言は削除され、「財政政策は転換点を迎えた」(日経新聞)ことになります。これまで歴代政権が「骨太の方針」で示して来た「プライマリーバランスの黒字化」には言及せず、「単年度の黒字化を機械的に追求しない」と記されています。今回の方針では代わりに、GDPに対する財政赤字比率を低下させるというもので、そのため「分母」に来るGDPを増やすことに重点を置いています。国からの補助金を得た企業が供給を増やすというもので、仮に増やせたとしても、それに見合う需要が果たして見込めるのか、「供給過剰」にならないのか、不安は残ります。ある意味、今回の円安のきっかけを与えたとも言える「日銀の独立性」については、「(金融政策の)具体的な手法は日銀に委ねる」との文言が挿入されています。

高市政権が掲げる「責任ある積極財政」が、円安が進んだ一因であることは論を待ちません。大きく進んだ円安は、石油製品を中心とするあらゆる輸入物価を押し上げます。物価高騰に苦しむ国民は生活防衛のため、「それではせめて、ドルでも買っておくか」ということで、ドル買いに走り、それがまた円安を加速させるという「悪循環」に陥ることも想定されます。163―165円では政府・日銀による介入があると考えていますが、ドル円の動きは「急変」ではなくジリジリと円が売られる展開で、ボラティリティも高まっていません。そのため当局も介入を実施する「きっかけ」(口実、あるいは大義名分)が掴めないままずるずると円安が進むのを傍観している状況が想定されます。このまま放置することはないと思いますが、これまでの動きのように、極めて緩やかな円安進行であれば、なかなかタイミングは掴めない可能性があります。1986年以来となる円安水準です。その前の年の1985年9月には、あの通貨の歴史に名を残す「プラザ合意」があったことを考えると、やはり相当昔の水準まで戻ったのだと思います。

すでに過去の話に属すると思われていましたが、再び「トランプ関税」が復活する気配です。ブルームバーグは、「トランプ米大統領は24日までに数十の国・地域からの輸入品に新たな関税を課す構えだ。暫定的な一律10%の世界的な関税が失効した後も、関税体制を維持する狙いがある。事情に詳しい関係者が明らかにした」と報じています。報道によると、トランプ氏が導入した暫定関税は24日に失効する予定で、それまでに新たな関税が実施されれば、両制度の間に空白期間は生じないが、計画は最終決定ではなく、変更される可能性がある、とのことです。今年初め、連邦最高裁判所が従来の世界的な関税を無効と判断したことを受け、トランプ氏は一律10%の暫定関税を導入していました。輸入関税は消費財価格を押し上げるとの批判もある中で、トランプ氏や政権幹部は関税について、米国の製造業を再建し、国内産業を保護するために必要だと主張している模様です。トランプ政権は、すでにカナダ製品の一部に新たな50%の関税を課す方針を決めているようです。カナダ政府が米国産の酒類、自動車、乳製品を不当に扱っているとし、これまで一度も適用されたことのない法律の規定に基づき、カナダ製品の一部に関税を課す方針で、両国間の貿易摩擦が一段と激化する可能性があります。米政府当局者によると、新たな関税の対象には、牛乳・クリーム、ホッケー用品、酒類が含まれ、関税は30日後に発効するとのことです。「トランプ大統領が今回の関税を実際に発動すれば、米国第2位の貿易相手国であるカナダに対する措置としては、これまでで最も厳しいものとなる。ただ、トランプ氏はこれまでも同様の関税措置を示唆した後、交渉や市場への影響を踏まえて撤回した例がある。当局者によると、大統領は20日に関税発動を命じる布告に署名した。」(ブルームバーグ)

163円台という水準は、すでに当社のチャートの「月足」で遡っても、上値のメドが確認できない状況です。手元にあるブルームバーグのデータでは、「四半期足チャート」で、1986年12月31日に「164円50銭」という数字を確認できます。やはり大きな節目は「165円」ということになるのでしょう。

本日のドル円は162円30銭〜164円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/16 ローガン・ダラス連銀総裁 「物価安定と完全雇用というFRBの二つの使命を踏まえると、政策金利を現行よりやや高い水準に引き上げた方が、見通しとリスクの均衡をより適切に保てると現時点では考えている」、「インフレが自律的に2%まで戻る方向にないのであれば、少なくとも一定程度の引き締め的な政策が必要だ」、「物価が1カ月落ち着いただけでは十分ではない。物価安定を取り戻すという仕事をやり遂げる時だ」 --------
7/14 ウォーシュ・FRB議長 「FOMC参加者は、高止まりするインフレを長期にわたって容認することはない。われわれは物価安定の回復に向け、揺るぎない決意を共有している」、「われわれが適切な政策運営を実現すれば、そして実現する所存だが、過去5年間の高インフレは過去のものとなる」米6月のCPI発表を受けて)、「朝発表された統計を見て『任務は完了した』と考える人もいるかもしれないが、それは私の見解ではない」、(トランプ氏から公に批判された場合でも経済指標に基づいて政策判断を行うのかと問われ)「そうする」 --------
7/13 ウォラー・FRB理事 「今週発表されるコアインフレ指標がまたも強い内容となった場合、FOMCは近い時期の金融政策引き締めを検討する必要があるだろう」、「労働市場は安定しており、個人消費は堅調だ。米経済が良好な状態にある。関税やエネルギー価格、AIインフラ整備を背景としたインフレ圧力を受け、金融政策は岐路に立たされている」、「どのように見ても、どの指標で測ろうとしても、インフレ率は今年上昇している」 金利上昇、ドル高、株価下落の一因に。
7/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 (AIが押し上げる需要を最も注視していると述べ)、「これが供給に対して需要を持続的に押し上げ、インフレ圧力につながるのであれば、そうした状況を一時的なものとして見過ごすことはできない」、(インフレ率が自身の基本シナリオよりも持続的かつ大幅に高くなれば)、「金融政策で対応する必要がある」、「一方、そうならずにもっと穏やかな展開となれば、金融政策は適切な位置にあり、今後もその状態が続くと考えている」、「今年後半のコアPCEの伸び率が月0.2%であれば、ディスインフレの進行が続いているとの私の見方と一致する。それを上回れば、インフレがやや根強いことを示す兆候になる」 --------
7/1 ウォーシュ・FRB議長 「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」、「米国の物価安定を実現する。それがこの委員会に課せられた使命であり、われわれの目標でもある。そのための戦術や戦略などについては今後明らかにしていく」、「FRBは非常に長くにわたり独立した中央銀行であり、現在も独立した中銀であり続ける。その点に変わりはない」、(将来的な金利政策に関して)、「フォワード・ガイダンスを示さない」 --------
6/17 ウォーシュ・FRB議長 FRBの運営方法の見直しにつながる変更案を検討するため、5つの分野を対象とした複数の作業部会を設置する」、「2%のインフレ目標を達成するわれわれの決意と能力を改めて確立するまでは、それを見直す理由は見当たらない」 --------
6/17 FOMC声明文 「インフレ率は依然として高水準にある。委員会は物価安定を実現させる」、「経済成長については引き続き堅調」 --------
6/17 内田・日銀副総裁 「足元の景気は、高水準の企業収益や政府の物価対策などが支えになり、経済が大きく下振れするリスクはひところよりも低下している」、「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」、(「1.1%〜2.5%」の中立金利について)、「こうした数字は相当なばらつきがあり、あまり使えない」 --------
6/11 ラガルド:ECB総裁 「今回のショックは経済全体に広がり始めている。直接的なコストは明らかで、間接的なコストも現れ始めている」、「最大のリスクはこうした決定をしないことだ。インフレの進行を放置して制御不能な状態にしてしまえば、物価安定の水準へ戻すことがはるかに難しくなる」と強調し、その上でラガルド氏は「中東の戦争は経済活動の重しとなっており、各種調査は特にサービス業で減速を示している。エネルギー価格の上昇により、この夏にかけてインフレ率はさらに押し上げられ、2027年上期まで目標を大きく上回る状態が続くだろう」 --------
6/9 片山・財務大臣 「ますます常に断固たる措置を取る用意があるということは変わらない」 --------
6/4 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (米労働市場について)「需給が均衡した状態にあるようだ。雇用市場に変化は見られない」 --------
6/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済がどのような展開を見せても、どちらの方向にも対応できるだけの用意がある。今後起こり得ることについてフォワード・ガイダンスをこれ以上示しても、結局は誤った方向に導くことになりかねない。経済の推移をただ見極めるほかない」 --------
6/3 植田・日銀総裁 「経済の下振れリスクに比べて、物価の上振れリスクが高まると判断される場合には、それが経済や金融市場に悪影響を及ぼすことを防ぎ、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していく観点から、利上げの是非についてしっかりと議論する必要があると考えています」 ドル円160円前後から159円30銭まで下げるが、すぐに反発。
6/3 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融政策はまさに適切な位置にある。現時点で利上げも利下げも必要だとは考えていない」、「将来どちらの方向に進むのかについても、明確な方向性が見えているわけではない」 --------
6/3 ローガン・ダラス連銀総裁 (労働市場は)「おおむね均衡している」、(金融環境も)「緩和的だ」、「こうした状況は、金融政策が景気を抑制していないことを示している。物価安定を完全に回復し、FRBの二大責務のバランスを適切に保つためには、年内にも利上げが必要になる可能性があるとの懸念を一段と強めている」、「FRB当局者の間では最近、インフレが再び加速していることへの懸念が強まっている。また、インフレ率が高止まりするとの期待が定着すれば、物価上昇圧力を抑え込むことが一段と難しくなる」 --------
6/2 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレは5年以上にわたり、FRBが目指す2%を上回っている。これに対する懸念は、依然として底堅い労働市場よりも強い」、「現時点では、経済見通しを巡る不確実性を考慮し金利を据え置くことが妥当だ。しかし足元のデータ傾向が続くのであれば、持続的に高止まりするインフレのリスク拡大に対処するため、金融政策面で近く行動を起こすことが適切になる可能性がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和