今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利約3年ぶりに4.85%に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は昨日も東京時間に153円を割り込む場面があったものの、NYでは反発。米長期金利が上昇したことで153円80銭までドルが買われる。
  • ユーロドルは小幅に上値を切り上げたが、今夜の理事会の結果を待つスタンスが大勢。
  • 株式市場では3指数が揃って続落。米金利の上昇や、原油価格の上昇が続き、株式市場には逆風が吹き続ける。
  • 債券は続落し、長期金利は一時4.85%と、2023年11月以来となる高水準を記録。
  • 金は反発。原油は7日続伸し、6月下旬以来の96ドル台に上昇。
ドル/円 153.11 〜 153.80
ユーロ/ドル 1.1620 〜 1.1654
ユーロ/円 178.08 〜 178.77
NYダウ −405.41 → 52,380.66ドル
GOLD +21.70 → 4,460.70ドル
WTI +3.02 → 96.05ドル
米10年国債 +0.052 → 4.841%

本日の注目イベント

  • 日 増日銀審議委員、福井県金融経済懇談会で講演
  • 独 独8月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英8月消費者物価指数
  • 欧 ECB政策金利発表
  • 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月生産者物価指数
  • 米 8月中古住宅販売件数

本日のコメント

原油価格の上昇が止まりません。WTI原油価格は昨日も前日比3ドル02セント上昇し、今年6月下旬以来となる96ドル台で取引を終えています。ここまで原油価格が上がると、さすがに米国のインフレ加速を懸念しないわけにはいかなくなるのが実情です。仮に明日発表の「8月の消費者物価指数(CPI)」が低下していたとしても、この先、原油価格上昇の影響がジワリと出て来る可能性さえ意識されます。もちろんこれは中東情勢の悪化が原因です。米中央軍は8日、イランのタンカー5隻を攻撃し破壊したと発表しました。イランのイスラム革命防衛隊が米軍艦艇1隻を攻撃したことへの報復です。米中央軍は、米軍艦艇が「イランによる攻撃を回避することに成功した。米軍要員に被害はなかった」と説明しています。発表によると、米軍はオマーン湾でタンカー4隻を攻撃したほか、イランの主要な原油輸出拠点であるペルシャ湾内のカーグ島付近でも1隻を攻撃しました。船舶が原油を積んでいたのか、空荷だったのかは明らかにしていませんが、これで米国は5日以降、少なくとも8隻の石油タンカーを破壊しているとのことです。ブルームバーグは、「今回の米軍による攻撃だけで、イランの原油供給能力が大きく損なわれた可能性は低い。8日に破壊された5隻のうち、いわゆる大型原油タンカー(VLCC)は1隻だけだった。VLCCは200万バレルを積載でき、中国などの顧客にイラン産原油を輸送する際に主に使われている船種だ。このほか2隻は、約75万バレルを積載できるアフラマックス型タンカーで、残る2隻は石油製品やガスを輸送する小型船だった」と詳細に伝えています。原油価格の上昇は米金利上昇につながります。昨日の東京時間には153円を割り込む場面がありましたが、米金利上昇によりドルが反発する展開が2日連続で観られました。155円を割り込んだドル円は、テクニカル的にはドル下落を示唆していますが、原油価格の上昇がドル下落を抑制しているとも言えます。

米財務省は残存10−20年の既発国債を最大60億ドル(約9200億円)買い入れると発表しました。これは、前月に示した規模の3倍に当たりますが、それでも原油価格の急騰で高インフレへの懸念が浮き彫りとなる中、米国債市場を動かすには至らなかったようです。米国債市場では、発表後に下げ幅を拡大(利回りは上昇)する展開となり、10年債利回りは3年ぶりの高水準を更新し、一時は4.85%に達しました。ベッセント財務長官は昨年の就任後、利回りの押し下げを目指してきましたが、現在は2023年以来の高水準付近で推移しています。要は、市場が期待したほどの規模ではなかったことで、失望売りを誘った格好です。市場からは「財務省はまるで、自ら生み出した怪物に餌を与え続けなければならなくなったようなものだ」といった声も聞かれました。米国債の発行規模は、およそ4000兆円とも言われ、上記9200億円規模では、「大海に小石を投げ込む程度」の影響とみられています。

それにしても、このところのベッセント氏の「品の悪さ」が目立っています。日本に金利引き上げの圧力をかけてきただけではなく、「もうリフレ政策は終わった」などと、政府の政策にも言及しています。これが中国であれば、「明らかな、内政干渉だ」と反発するところでしょうが、そんな声もあまり聞こえてきません。さらに昨日のブルームバーグの報道ではこんなものもありました。「ベッセント財務長官はテキサス州のサザンメソジスト大学で開かれたイベントで、『今や私が胴元だ。だからわれわれが円について介入を行う際には、日本側や日本銀行がどう動くのか、日本の当局が何をするのかについて、私はかなり正確に把握している』と発言。『私の見方に反対して賭けたいなら、そうしても構わない』と話した。ベッセント氏は、投資家の懐疑的な見方に直面しても、市場を自らの意向に沿わせようと異例の取り組みを続けており、今回の発言はこれまでで最も強硬な内容の一つと言える」といった内容の報道です。かなり傲慢な物言いで、だんだんトランプ大統領に似てきたと思われます。『今や私が胴元だ』との言葉は、「I am the House」を日本語に訳したものでしょうが、自分を「House」という言い方は余り聞いたことがありません。また、「私はかなり正確に把握している」という文章も、「pretty good insight」を訳したもののようです。

カナダと米国は貿易交渉がまとまらず、ついに双方が相手国に高関税を課すという最悪の事態になりました。カナダのカーニー首相は、超大国米国との対立を選択し、自国の国益を守る決断を行いましたが、同時に国民に対しては、今後の厳しい局面に備えるよう促しました。カーニー氏は動画で、「これは簡単なことではないし、そうでないふりをするつもりもない」と述べ、「しかし、カナダ国民はこれまでも困難な時期を乗り越えてきた。その支えとなったのは、決して一つの対策だけではなかった」と説明しました。カーニー氏の動画投稿から数時間後、米政権は貿易摩擦をめぐり新たな一連の措置を発表しました。トランプ大統領は、「カナダが米国の農家と企業に対し、完全かつ公正で対等な扱いを回復しない限り、米政府の調達先からカナダ製品を排除する」と表明しました。さらに米政権は、多くの酒類や乳清(ホエイ)、オートバイなどのカナダ製品について、輸入を禁止する方針を発表しています。米政府当局者によると、輸入禁止の対象は数十億ドル規模となるとのことです。カナダの対米貿易担当相を務めるドミニク・ルブラン氏は、政府が米国による最新の措置を精査しており、自身もグリア米通商代表部(USTR)代表と連絡を取っていると説明しています。ルブラン氏はXで「米国が対話に応じる用意ができれば、われわれの政府はカナダの主権を十分に尊重した、より安全で互恵的な貿易関係の構築を目指し、誠意を持って建設的に取り組む」と投稿しました。ブルームバーグは、「一連の措置は、長年の同盟国である両国の関係がなお緊迫していることを浮き彫りにした。両国間の財・サービスの貿易額は昨年、約9000億ドル(約137兆7000億円)だった」と論じていました。

トランプ大統領は9日、原油価格の上昇への懸念を深刻視せず、「戦争は数週間で終わる」との見方を示しました。「イランは戦闘能力を失っている。選挙が終われば、戦争はすぐに終わると思う。彼らはもうこれ以上持ちこたえられないからだ」と、記者団に語ったようです。これまで何度も極めて楽観的な言葉を繰り返すトランプ氏のこの種の発言を、もはやそのまま信じる人はいないと思われますが、「選挙が終われば、戦争は終わる」ということは、逆に言えばそれまでは終わらないことを意味し、さらに選挙後に大規模な攻撃を行って、イランを壊滅させるという意味にも取れます。11月の中間選挙までは大胆な行動は取れないということのようです。一方イラン政府高官は、イランは激しい戦闘が4月にいったん収まって以降、軍事能力の再構築を進めており、長期戦を続けるのに十分なミサイルを保有していると話しています。

本日のドル円は152円30銭〜154円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/2 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「最近のデータは心強い。関税の影響が一部、過去のものとなる中、インフレは実際、緩やかな低下傾向にあるとみている」、「前回のFOMC会合を終えた段階で、金利は完全雇用と物価安定というFRBの2大責務のバランスを取る上で適切な水準にある」、「われわれは現在、多くのデータを収集しており、それを踏まえてあらためて評価する必要がある。実質金利はやや上昇したが、それほど大きくは上がっていない」 --------
9/2 高田・日銀審議委員 (今後の利上げに際し)、「市場で考えられている一定の間隔や幅にとらわれることなく、緩和度合いを確認したうえで機動的に対応していく必要がある」 ドル円は、160円台前半から159円台後半に下落。
9/1 バー・FRB理事 「データの傾向から、インフレが2%に向けて鈍化しているとの確信がある程度得られるなら、政策スタンスを評価するためにもう少し時間をかけることができる。だが、インフレの鈍化が十分でないようなら、断固として利上げに動くべきだと考える」 --------
8/28 ウォーシュ・FRB議長(ジャクソンホールでのシンポジウムで) 「インフレ率を2%の目標に戻す」、「私の判断基準はこうだ。基調的なインフレが明確かつ十分な速さで目標に向かっていると確信できなければならない。そうでなければ、われわれにはやるべきことがある。それがわれわれの仕事だ」、「やるべきことがある」、「私はきょう、特定の政策決定ではなく、規律を重んじる決意を持ってここに立っている」と述べ、さらに、「インフレ率が2%を上回っている中、FRBは現時点で、最大の重点を物価に置くべきだと」 ドル円は159円台半ばから160円20銭まで上昇。米金利高、株安が進む。
8/27 ベッセント:財務長官(介入に対するウォーレン上院議員への回答で) 「日本は米国債の主要な保有国だ」、「円相場が無秩序な動きとなれば、ポジションの強制的な巻き戻しを引き起こす。そうなれば、世界の市場を不安定化させ、最終的には米国の家計や企業の借り入れコストを押し上げる可能性がある」 --------
8/13 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「現在のインフレ高止まりの大部分は、いずれ収まるはずのショックによるものだ」、「インフレ率はあまりに長く高すぎる水準にあり、企業や消費者の物価見通しが上振れするリスクがある」、「そうなれば、インフレ率を目標まで完全に引き下げるために追加の対応が必要になる」 --------
8/13 ハマック・クリーブランド連銀総 「こうした数字が低めに出ているのは良いことだ。ただ、この傾向が今後も続くのか、あるいはインフレ率を2%の水準まで押し下げるほど十分に低い数字が続くのか、確信は持てない」、(金利に関して)「今こそ行動する必要がある」 --------
8/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 「経済データ次第では、9月にも利上げを支持する可能性がある」、「最新の雇用者数の数字を過度に重視すべきではない。失業率は比較的安定している」、「強弱が入り交じる労働市場データよりも、インフレのリスクの方が大きい。注視すべき点は多いが、インフレ率は高過ぎる」 --------
8/11 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「現在、米経済が直面する最大の問題だ」、(指標は)「労働市場は良好とは言えないものの、安定していることを示している。消費者が健全な状態を維持する限り、経済も健全な状態を維持するだろう」 --------
8/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今後発表される経済指標を見極めながら、今こそ緩やかな利上げを開始するべき時だ」、「政策当局が対応を先送りし、高インフレが定着すれば、より大幅な利上げを余儀なくされる可能性がある」(7月31日)、「現時点ではなお判断できない」、「インフレ率がこのまま横ばいで推移する、あるいは一段と悪化するようであれば、インフレを再び押し下げるため、政策金利を段階的に調整し始める必要があると思う」、(年末までに3回の利上げを実施する可能性があるかとの質問に)、「それは不可能ではない」 --------
8/5 クック・FRB理事 「近いうちに持続的なディスインフレの兆候を確認できなければ、私は行動を取る用意がある」、「目標を上回るインフレが5年間続いていることから、高いインフレ率が価格や賃金の決定行動に定着してしまうリスクが高まっている。そうした持続性はわれわれにとって、対処がはるかに困難になる」、「関税の影響が薄れることや、原油価格が下落する可能性、さらにAIブームに関連する一部の圧力低下によって、インフレが和らぎ、より引き締め的な政策は不要になる可能性もある」(それでも)、「この講演から一つだけ持ち帰っていただくとすれば、それは私が物価安定の回復に断固として取り組んでいるということだ。インフレ率を目標へ下げることが最優先であり、議会がFRBに課した2つの使命を達成する上でそれは欠かせない」 --------
8/4 ベッセント・財務長官 「問題なのは円の水準だ。それが別の問題を引き起こしたり、競争的な通貨切り下げを招いたりする恐れがある。それは健全ではない」、「円相場の安定は米国だけでなく、アジア地域全体にとっても極めて重要だ」、「日本とは緊密に連絡を取り合っている」、「米経済や米国の納税者の利益にかない、世界経済の安定化にもつながる形であれば、日本を支えるために必要なことは何でもする」、(円安の影響が物価に波及していることを挙げ)、「円安によってエネルギー輸入コストが押し上げられている」、「円が大幅に下落すれば、他の通貨もそれに追随することになる。韓国ウォンで過度な変動が見られている。中国人民元は過小評価されていると考える向きも多い」、(円相場を安定させる上で日本銀行の利上げが必要か問われ)「日銀が取るべき対応について先回りして判断するつもりはない」、(植田日銀総裁とは15年来の付き合いがあるとし)、「必要なことは実行すると信じている。介入に続いて、政策面での後押しが必要になる。そうした対応が行われると強く確信している」 --------
8/3 ベッセント・財務長官 (協調介入を実施したことについて)「財務省および日本銀行の当局者と緊密に連絡を取り合い、状況を注視し続けている。必要であれば、さらなる協調介入をためらわない」、「米国は、円の著しい過小評価を是正するため、日本が断行した市場対応および金融政策を強く支持する」 --------
8/3 片山・財務相 (為替介入を実施したことについて)「最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したものだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和