今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、半値戻し達成」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し、約2カ月半ぶりに150円88銭まで買われる。FRBが利下げを急がないとの見方が一段と広がり、米金利上昇がドル高をけん引。
  • ユーロドルは反落し、1.0811まで下落。
  • 株式市場はまちまち。最高値更新中のダウは344ドル売られたが、ナスダックは50ポイント上昇。
  • 債券は大幅に売られ、長期金利は4.19%台に急上昇。
  • 金は4日続伸。原油は中国の景気刺激策を材料に反発。
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9月景気先行指標総合指数 → −0.5%
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ドル/円 149.74 〜 150.88
ユーロ/ドル 1.0811 〜 1.0859
ユーロ/円 162.60 〜 163.16
NYダウ −344.31 → 42,931.60
GOLD +8.90 → 2,738.90ドル
WTI +1.34 → 70.56ドル
米10年国債 +0.113 → 4.196%

本日の注目イベント

  • 日 日銀「基調的なインフレ率を補足するための指標」
  • 英 ベイリー・BOE総裁講演
  • 米 10月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 IMF世界経済見通し(WEO)
  • 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
  • 米 企業決算 → GM、GE、ベライゾン、ロッキード、3M

本日のコメント

7月3日に記録したドル円の高値「161円95銭」から、9月16日の「139円57銭」までの下げ幅は「22円38銭」になります。その半値戻しは「150円76銭」と計算され、昨日のNYでは一時150円88銭までドル高が進みました。言うまでもなく「半値戻しは、全値戻し」という格言があるように、ドル高がさらに進む可能性も出てきました。テクニカルでも、日足で「200日移動平均線」も上抜けし、さらに筆者が注目している「一目均衡表の雲の上限」が、今日は150円70銭辺りにあることから、これも現時点では抜けたことになります。ただ、瞬間風速では抜けましたが日足ということを考えると、明日のローソク足が雲の上から出て初めて、「雲抜け達成」ということになります。従って、現時点では雲の上限に交わっている状況と言えます。そして、この雲を完全に抜け切れば、およそ3カ月ぶりに「トレンド転換」と見ることが出来そうです。今はまだ、「その正念場にいる」という段階です。

ドル高は米金利の上昇が背景ですが、FRBが利下げを急がないという見方がさらに高まってきました。アポロ・グローバル・マネジメントのスロック・チーフエコノミストは「11月のFOMC会合で政策金利が据え置かれる可能性が著しく高まっている」と指摘しています。その理由として、FRBのハト派的な姿勢に加え、株価と住宅価格の高止まり、クレジットスプレッドの縮小、そして公開市場と非公開市場の両方で企業が資金を調達する道が広く開かれていることを挙げ、「要するに景気拡大は続くということだ」と述べています。(ブルームバーグ)

ダラス連銀のローガン総裁は21日、「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」と語っています。また、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も21日ウィスコンシン州のイベントで、「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」と発言し、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」と述べています。一時は9月に50bp、11月にも50bp、さらに12月には25bpの追加利下げが必要だといった見方が市場を席捲していましたが、今や、「追加利下げは急ぐ必要はない」という見方に変わり、金利据え置きとの見方も徐々に広がりつつあります。

11月5日の米大統領選は接戦が続いていますが、やはり「激戦7州での勝敗が勝利を決める」と両陣営はみているようです。ハリス氏は7州の中でも「ブルーウォール」と呼ばれるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の死守に焦点を絞る選挙活動を行い、トランプ氏は派手なイベントや集中的なキャンペーンを通じ、いつもは政治に関心がないような有権者に支持を働きかけています。激戦7州ではトランプ氏がややリードしている模様ですが、支持率の差は各州2ポイント以内で、誰に投票するのかまだ決めていない有権者も15%ほどいるとの調査結果もあります。「蓋を開けてみないと勝者が分からない」ほど大接戦の様相を呈しています。米債券市場の動きが、「トランプ勝利」を微妙に反映しているようにも思えます。

本日のドル円は150円〜151円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/21 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。
10/21 ローガン・ダラス連銀総裁 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。
10/17 ラガルド・ECB総裁 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 --------
10/17 ECB声明文 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 --------
10/15 デーリー・サンフランシス連銀総裁 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 --------
10/14 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 --------
10/14 ウォラー・FRB理事 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 --------
10/10 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 市場はドル買いで反応。
10/9 ローガン・ダラス連銀総裁 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 --------
10/3 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 --------
10/2 石破首相 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。
9/30 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場に警戒すべき指標が現れているため、適切だった。ただ、雇用とインフレは当局の目標にほぼ沿った水準になっており、経済全体は順調に成長している」、(11月のFOMC会合での利下げ幅については)、「金利を正常な水準まで引き下げるプロセス全体を考慮することがより重要だ」 --------
9/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「基本シナリオ通りであれば向こう1年3カ月でFRBは秩序だった形で緩和を進め、2025年末に金利は3−3.25%のレンジで落ち着くだろう。これはインフレが低下を続け、労働市場が引き続き堅調であることが前提で、その場合は利下げをもう少し辛抱できる余裕が持てると思う」 --------
9/30 パウエル・FRB議長 「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」、「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」、「政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していく」、「委員会は利下げを急いでいない。最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを早めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」 ドル円は買われ、143円92銭まで上昇。株価も小幅に上昇。
9/26 イエレン・財務長官 (米国のインフレは十分抑制されているかと問われ)、「その通りだ」、「かなりの期間にわたってコスト上昇の最大要素となっている住宅コストが下がると想定しており、2%のインフレが可能になる」、(今後どの程度のペースで利下げが実施されるべきかについてはコメントを控えていましたが)、「それはFOMCが決めることだ」、(為替レートをモニターしているかとの質問には)「もちろん、ドルの価値を観察している」、「米国は為替市場への介入を長らく行っていない。市場があまり無秩序により、介入が必要になるという状況は想定し得るが、通常の場合、ドルは市場によって決定され、世界の金利差がその重要な要素になってきた」 --------
9/25 クーグラー・FRB理事 「労働市場は依然底堅いものの、FOMCはディスインフレが正しい軌道に引き続き進む中で経済の不要な痛みや悪化を回避しつつディスインフレが進展を続けられるよう、重点のバランスを取る必要がある」、「私は先週の決定を強く支持した。インフレが引き続き、私の予想通り進めば、この先、FF金利の追加引き下げを支持するつもりだ」 --------
9/24 ボウマン・FRB理事 「米金融当局の2つの責務を達成する上でのリスクに目を向けると、特に労働市場が完全雇用の推計値に近い状態が続いている中、物価安定へのリスクは大きくなっていると、私は引き続きみている。25bpで利下げサイクルを開始すれば、経済状況が一層強くなると同時に、米金融当局の目標に向けた進展を自信を持って認識することができるだろうというのが私の見解だ」、「コアインフレは、当局目標の2%を依然として、不快なほど上回っている」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「私としてはインフレへの懸念が残るため、先週の初回利下げでは比較的小幅な動き、例えば25bpで折り合いがついたかもしれなかった。しかしそうした動きはこの先の労働市場に対して高まる不透明感と整合しなかっただろう」 --------
9/23 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ。つまり向こう1年に、もっと多くの利下げがあるということを意味する可能性が高い」 --------
9/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「50bpの利下げ後でも依然としてネットでタイトなポジションであるので、最初の一歩を通常より大きくすることに違和感はなかった」、「データが大きく変わらない限り、今後は恐らく、より小さなステップになると予想している」 --------
9/20 植田・日銀総裁 「足元の日本経済のデータ見通しに沿って推移しているが、すぐ利上げだとはならないと考えている」、「データが見通し通りに推移していけば、少しずつ利上げしていくという考えは変わらない」、(利上げペースに関して)「時間的余裕がある」 ドル円は141円台後半から143円台に反発。
9/19 イエレン・財務長官 「米経済の現状に関する非常に明るい兆候だ。インフレ率押し下げにおける進展と、労働市場を守るという決意を反映している」、「金融政策スタンスは引き続き景気抑制的だ。金利はさらに低下すると予想されている」、(労働市場については)「引き続き正常かつ健全だ。雇用主がスタッフの採用に苦慮していた2022年や23年ほど過熱していない。今のこの道筋を進み続けることは可能だ」 --------
9/18 パウエル議長 「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」、「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」 ドル円が反発し、株と債券は売られる。
9/18 FOMC声明文 「雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している。委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」 --------
9/12 ラガルド・ECB総裁 「労働コストの全体的な伸びは緩やかになっているものの、賃金上昇率は高く変動の大きい状態は続くだろう。一方で景気回復は、幾つかの逆風に直面し、リスクは引き続き下振れ方向に傾いている」 ユーロドルは小幅に買われる。
9/6 サマーズ・元財務長官 「確かに、数字はそれほど顕著な弱さを示してはいない。しかし、最近の統計の傾向に懸念を抱いた人にとって、経済の健全性を示すものではなかった。9月の会合で利下げ幅が25ベーシスになるのか、50になるのかは、私自身の1、2カ月前の予想よりも予断を許さなくなったように見える --------
9/6 イエレン・財務長官 「雇用の伸びがこの辺りで安定すれば非常に喜ばしい」、「そうなることを望み、期待している」 --------
9/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 インフレ率は著しく低下したが、物価安定の責務を果たす上で、リスクはまだ残っている。こうしたリスクが引き続き弱まるよう、警戒を怠ってはならない」、「早計な金融緩和はインフレを再燃させ、それを何カ月あるいは何年も経済に定着させかねない危険な一手であることを、歴史が示している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和