「日本の長期金利18年半ぶりに1.93%台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は欧州市場で154円台半ばまで売られたが、NYでは労働市場を巡る強弱の数値に155円を挟み一進一退。
- ユーロドルは1.16台で堅調に推移。欧州市場では1.1682まで買われる場面も。
- 株式市場はまちまち。3指数は前日比マイナス圏で推移していたが、引けにかけては買われ、ナスダックとS&P500がプラスに転じる。
- 債券は反落。長期金利は4.09%台に上昇。
- 金と原油は続伸。
- 9月製造業受注 → 0.2%
- 新規失業保険申請件数 → 19.1万件
| ドル/円 | 154.56 〜 155.14 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1642 〜 1.1676 |
| ユーロ/円 | 180.36 〜 180.70 |
| NYダウ | −31.96 → 47,850.94ドル |
| GOLD | +10.50 → 4,243.00ドル |
| WTI | +0.72 → 59.67ドル |
| 米10年国債 | +0.035 → 4.098% |
本日の注目イベント
- 日 10月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 10月景気一致指数(CI)(速報値)
- 独 10月製造業新規受注
- 欧 ユーロ圏7−9月期GDP(確定値)
- 米 12月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
- 米 9月個人所得
- 米 9月個人支出
- 米 9月PCEデフレータ(前月比)
- 米 9月PCEデフレータ(前年比)
- 米 9月PCEコアデフレータ(前月比)
- 米 9月PCEコアデフレータ(前年比)
- 米 10月消費者信用残高
- 加 11月新規雇用者数
- 加 11月失業率
本日のコメント
昨日の東京時間では日経平均株価が思いの外上昇し、前日比1163円の上昇を見せました。株価の上昇に伴って、155円前後で推移していたドル円はジリ高の展開となり155円台半ばまで買われました。ただその後の欧州では、ユーロが対ドルで買われたことを受け、円買いが進み、154円台半ばまでドル安の場面がありました。NYでは、調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが、企業などが公表した11月の人員削減数が前年同月比24%増の7万1321人だったと発表したことで、再びドル売りが強まりましたが、失業保険申請件数が減少していたことで、155円を挟み一進一退の動きでした。
高市政権での財政拡大政策を根底に債券市場では売り圧力が止まらず、昨日は長期金利が一時1.93%と、2007年7月以来となる高水準に達しました。円の急激な金利上昇に、政府からも懸念の声が上がって来ました。木原官房長官は足元の金利上昇を受け、「長期金利を含む金融市場の動向について注視している」と、4日午前の定例会見で述べていました。官房長官は金利上昇の経済への影響について、住宅ローンや企業借り入れなどの支払利子や政府の利払い負担の増加などを上げ、「マクロ経済や金融市場を通じた影響を含め、総合的に捉えていくことが重要だ」と指摘し、 その上で、「総合経済対策による強い経済の構築によって成長率を高めるとともに、政府債務残高対GDP比を引き下げることで財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保していく」と話していました。また為替動向についても「一方向または急激な動きも見られ、憂慮している」とし、「過度な変動や無秩序な動きについては、必要に応じて適切な対応をとる」と発言。「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要」との見解を繰り返し述べていました。
先週の新規失業保険申請件数は前週比「2.7万件」減少し、「19.1万件」と、市場予想の「22万件」を下回っていました。また、より変動の少ない「失業保険申請の4週移動平均」も「21.5万件」と減少しています。前日発表されたADP雇用者数では「3万2000人の減少」と、市場予想を大きく下回っており、労働市場に関するデータもまちまちの結果を示しています。ただそれでも、今月のFOMC会合では利下げを決めるとの予想は維持したいと思います。市場が利下げをかなり織り込んでおり、仮に利下げを見送ったとしたら、市場はかなり混乱すると思われます。次期FRB議長に就任すると見られる、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、FOXニュースの番組で、「FRBは今、利下げに傾いているように見える」と発言し、「会合で25ベーシスポイント程度の利下げを実施する可能性が高い」との見方を示していました。同氏はまた、「25bpの利下げを巡ってコンセンサスが形成されつつあるようだ」とも指摘していました。
ウクライナの交渉担当者は4日、フロリダで新たな和平協議に臨んでいますが、米国が支援する和平案に対し、ロシアのプーチン大統領は一部に受け入れがたい点があると述べ、合意にはなお距離があることを改めて示唆しています。プーチン氏は、インディア・トゥデー(インド紙)とのインタビューで、「交渉は難航しており、ロシアとして米国が提案する和平案の一部には同意できない点があると述べた」と、ロシア国営タス通信がインタビュー内容を報じました。インタビュー全文は4日に公開されるようです。これについてブルームバーグは、「ロシアによるウクライナ全面侵攻からまもなく4年となるが、プーチン氏の発言はトランプ米大統領が目指す和平合意の仲介に一段と疑問を投げかけるものとなりそうだ。ここ数日続くシャトル外交でも行き詰まりは打開できていない。ロシアは、軍事力で奪えなかったウクライナ東部の一部地域の支配権を手放すようウクライナ側に迫っているが、ウクライナは繰り返し拒否している」と伝えており、年内の和平案合意は難しそうな状況です。
今夜のNYでは、「12月ミシガン大学消費者マインド(速報値)」が注目されます。これまで、消費者マインドはおおむね悪化しており、依然として消費者の景気の先行きに対する慎重さは変わらないのか、見極めたいと思います。また、発表が遅れていた「9月PCEデフレータ、コアデフレータ」も、もともとFRBが重要視している指標だけに注目です。
本日のドル円は154円〜155円80銭程度を予想します。
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来週8日(月)の「今日のアナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 12/1 | 植田・日銀総裁 | 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 | ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。 |
| 11/21 | 片山財務大臣 | 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 | ドル円、やや円高に振れる。 |
| 11/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 | 株価は下落し、ドル円は買われる。 |
| 11/20 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 | 株価は下落し、ドル円は買われる。 |
| 11/20 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 | -------- |
| 11/17 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 | -------- |
| 11/17 | ウォラー・FRB理事 | 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 | -------- |
| 11/14 | シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 | 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 | 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。 |
| 11/14 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 | 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。 |
| 11/12 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 | -------- |
| 11/13 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/13 | デーリー・SF連銀総裁 | 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 | 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。 |
| 11/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 | -------- |
| 11/6 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 | -------- |
| 11/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 | -------- |
| 11/4 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 | -------- |
| 11/4 | クック・FRB理事 | 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 | -------- |
| 11/4 | ミラン・FRB理事 | 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



