今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米11月の総合CPIは2.7%に低下」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は欧州市場で155円98銭まで上昇したが、NYでは朝方に発表されたCPIが予想外に鈍化していたことを受け、155円28銭前後まで下落。
  • ECBは政策金利の据え置きを決めたが、市場予想通りだったこともあり、ユーロ買いは限定的。
  • 株式市場では3指数が揃って反発。11月のCPIが予想を下回っていたことで利下げ期待を押し上げ株価が上昇。売られていたハイテク株も大きく買われる。
  • 債券も買われ、長期金利は4.12%台に低下。
  • 金は反落。原油は小幅ながら続伸。
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11月消費者物価指数 → 2.7%(前年比)
新規失業保険申請件数 → 22.4万件
12月フィラデルフィア連銀景況指数 → −10.2
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ドル/円 155.28 〜 155.83
ユーロ/ドル 1.1714 〜 1.1763
ユーロ/円 182.28 〜 182.84
NYダウ +65.88 → 47,951.85ドル
GOLD −9.40 → 4,364.50ドル
WTI +0.21 → 56.15ドル
米10年国債 −0.033 → 4.120%

本日の注目イベント

  • 日 日銀金融政策決定会合
  • 日 植田日銀総裁記者会見
  • 日 11月消費者物価指数
  • 独 独11月生産者物価指数
  • 独 独1月GFK消費者信頼調査
  • 欧 ユーロ圏12月消費者信頼感指数
  • 英 英11月小売売上高
  • 米 9月住宅着工件数
  • 米 9月建設許可件数
  • 米 11月中古住宅販売件数
  • 米 12月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

今年最後の重要指標といってもいい「米11月の消費者物価指数(CPI)」は、市場予想に反して鈍化し、2021年3月以来の低い伸びでした。総合指数は前年同月比で「2.7%」と、市場予想の「3.1%」を大きく下回り、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも前年同月比「2.6%」と、市場予想の「3.0%」(9月は3.0%)を下回っていました。予想外のCPIの低下を受け来年早々の利下げ期待が高まり、155円台後半で推移していたドル円は155円28銭近辺まで急落し、債券と株が買われました。もっとも、ドル円はその後発表された「12月のフィラデルフィア連銀景況指数」が大きくマイナスに沈んでいたことで、下落幅の一部が相殺された格好になっています。

今回の発表で、根強い物価高から一息ついた格好ですが、政府閉鎖の影響で統計にはノイズが含まれているとの声が多く聞かれました。「過去最長に及んだ連邦政府閉鎖の影響で、発表元の労働統計局(BLS)は10月の価格データの多くを収集できなかった」、「そのため、11月のインフレについて、前月比の変化を把握するのに制約が生じた」などです。一部のエコノミストはそれだけでなく、「11月の前年同月比の数値にも影響が及んだ可能性がある」といった見方を示していました。項目別でも、ホテル宿泊費や娯楽、衣料品の価格が下落したことで伸びが抑えられた一方、CPIで比重の大きい住居費の主要項目が、この2カ月間にほぼ横ばいとなっていることが指摘されていました。ブルームバーグは、「インフレ圧力の鈍化を正確に反映している可能性はある。しかし、リセッションを除き、住居費のように特に粘着性の高いサービス分野の項目で伸びが突然止まることはまずない」といった声や、「これが統計上のブレなのか、真のディスインフレなのかを確認するには、来月公表される12月のデータを待つ必要がありそうだ」とする見方を紹介していました。今回のCPI統計がFRB当局者の政策判断に影響を与えるかどうかは不明ですが、パウエル議長は過去最長に及んだ政府閉鎖により、「CPIデータには恐らくゆがみが生じている」との認識をこれまでに示しています。

次期FRB議長の最有力候補であるハセット国家経済会議(NEC)委員長は、11月のCPIデータについて「まさに文句なしのブロックバスター統計だ」と述べています。ハセット氏はFOXビジネスとのインタビューで、「物価の問題に関して勝利宣言をするつもりはまだないが、今回のCPI統計は驚くほど良い内容だ」と発言し、さらに、「予想されていたように総供給にアクセル全開で取り組めば、物価には下押し圧力がかかる。それが今起きている」と語っていました。一方、シカゴ連銀のグールズビー総裁は、11月のCPIで物価上昇圧力の緩和が示されたことに関し、「好ましい点が多い」と述べ、歓迎する意向を示しながらも、「たった1カ月の数字に過ぎず、単月の結果に過度に頼るのは望ましくないが、良い月だった」と、引き続き慎重な姿勢を維持していました。グールズビー氏はその後、「追加利下げを正当化するのに十分なほどインフレ率が大幅に鈍化したと自信を持てるようになるまでには、さらなる経済指標の発表を待ちたい」と話していました。

昨日、ECBは政策金利の発表を行いました。ECBは18日、政策委員会会合を開き、中銀預金金利を2%に維持することを決定しました。インフレ率が目標値の2%付近で推移し、ユーロ圏が世界的なショックを乗り切っていることを受け、政策金利を4回連続で据え置きました。政策当局者は今後の対応については何の示唆もせず、今後のデータに基づき会合ごとに判断すると強調しています。併せて発表した経済予測では、インフレ率が今後2年間は2%を下回るものの、2028年には2%に回帰すると見込んでいます。ECBは、「新たな見通しは、インフレ率が中期的に2%の目標値で安定することを再確認するものだ」と声明で述べていました。ラガルド総裁は会合後の記者会見で、「私たちは現状が良好と再確認したが、それは停滞を意味しない」と語り、「本日の金利据え置きの決定は全会一致だったが、同時に、あらゆる選択肢をテーブルに残すべきだという見解でも全員が一致した」と強調していました。今回の会合でECBが4回連続の据え置きを決めたことを踏まえ、市場は「利下げ局面終了の可能性が高い」と受け止めているようです。

ウクライナとロシアの和平案合意に向け、様々な駆け引きや交渉が行われていますが、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアがドンバス地方からの部隊撤退をウクライナに要求していることについて、米国が解決策を模索している」と語っています。米国とロシアの当局者との交渉は19、20日に米マイアミで行われる見通しですが、計画は「なお流動的」だとされています。協議にはEUの代表者も参加する模様です。

本日のドル円は155円〜156円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/18 ラガルド・ECB総裁 「私たちは現状が良好と再確認したが、それは停滞を意味しない」、「本日の金利据え置きの決定は全会一致だったが、同時に、あらゆる選択肢をテーブルに残すべきだという見解でも全員が一致した」 --------
12/17 ウォラー・FRB理事 「インフレが高止まりしているため、われわれは時間をかけることができる。利下げを急ぐ必要はない」、「政策金利を中立水準に向けて着実に引き下げていくことが可能だ」、(FRBの独立性について)「もちろんだ。私は20年にわたって中銀の独立性とその重要性について研究してきた。これに関して論文など多くの蓄積がある」 --------
12/15 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「金融政策はこれらリスクの均衡を図ることに非常に注力している。そのためにFOMCはやや景気抑制的な金融政策スタンスを中立に向けて移行させた」、「こうした措置により、金融政策は2026年に向けて良い位置にある」、「1年に及ぶ不確実な時期を経て、底堅さを備えた状態で2026年を迎えることになる」、「経済は堅調な成長と物価安定へと戻る見込みだ」 株式市場では主要3指数が下落。
12/15 コリンズ・ボストン連銀総裁 「11月の時点で私の分析では政策金利を据え置く方向に傾いていたが、12月の会合までに入手可能となった情報にはリスクバランスがやや変化したことが示唆された。インフレがさらに顕著に上昇するというシナリオは、やや可能性が低くなった」、「長期的なインフレ期待を示す一部指標の低下と、実効関税率の低下を示唆する最近の通商政策変更、労働市場の軟化を反映している」、「5年近く続いている高インフレを踏まえ、インフレの持続性については引き続き懸念している」 株式市場では主要3指数が下落。
12/15 ミラン・FRB理事 「パンデミック後には大きなインフレが起こり、物価が上昇した。米国の家庭は依然その経験に困惑し、アフォーダビリティー(暮らし向き)に不満を抱いているのは当然だが、物価は現在、高めの水準にあるとはいえ、再び安定している。政策はこの現実を反映すべきだ」、「労働市場の悪化は急速かつ非線形に進行することがあり、その流れを元に戻すのは困難だというのが経験則だ」、「金融政策は数四半期の時間差をもって機能するという背景もあり、私が主張するような、より迅速な利下げが中立的な政策スタンスに近づく上で適切だ」 --------
12/10 パウエル・FRB議長 「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」、(次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して)、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」 政策金利を0.25ポイント引き下げことで、ドル円は156円台半ばから155円80銭まで下落。
12/10 FOMC声明文 「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」 --------
12/9 ハセット・NEC委員長 (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 --------
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和