来週行われるFOMC会合で、11会合連続で利上げが行われるのか、あるいはようやく利上げを見送ることになるのかを巡る観測が相場を上下させ、ドル円は5月末から138円台から140円台で一進一退の動きを続けています。利上げを巡るセンチメントが米金利の上昇下落につながり、これに伴ってドル円も素直に上げ下げを繰り返している状況です。レンジ内取り引きが続きながらも、ある程度の値幅を伴って上下していることも、特徴的と言えます。
今週は材料的にも、米地銀の破綻に端を発した信用不安と、米債務上限問題がほぼ消えたことから、来週のFOMCでの結果と、その後の金融政策の見通しが相場の方向性を決めるものと思われます。一方で、ウクライナ情勢はますます混迷を深め、ウクライナによるロシアへの総攻撃が予想されながらも、ロシア側も先制攻撃を仕掛けてくるなど、停戦のメドは全くたっていません。また台湾を巡り、米中関係はますます緊張が高まっており、4日にシンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、米国のオースティン国防長官と中国の李尚福国防相は、外交儀礼上の握手は交わしたもののお互いをけん制し、李氏は「台湾は中国の不可分の一部であり、中国政府と軍は中国の分裂につながりかねない、いかなる事象も決して容認しない」と述べ、また米駆逐艦がカナダ戦艦と共に3日に台湾海峡を航行したことに対して、「中国の合法的な権利と利益を防衛することを決してためらわない。重要な国益を犠牲にすることはもちろんない」と話しており、米中歩み寄りの気配は全くありません。今後、偶発的な事故がさらに対立を激化させる可能性が常に懸念されます。
今週は、来週のFOMCに向けた「ブラックアウト」期間に入るためFOMCメンバーによる発言はありません。また、経済指標も取り分け重要なものは予定されていません。13−14日のFOMCでは政策決定以外にも、パウエル議長の発言内容が注目されますが、議長は22日(木)にも、上院銀行委員会で半期に一度の「金融政策報告書」について証言を行う予定になっています。6月会合での金融政策決定を受けて、それ以降の方向性について何か手掛かりになるものがあるかもしれません。
今週のドルの上値のメドは、先週記録した140円93銭前後と、その水準をクリアできたら142円台前半が次のレジスタンスと見ています。一方下値では、5月の中旬に3日続けて抜け切れなかった、137円40前後が最初のサポートかと思います。FOMCを控えて動きにくい展開も予想されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。