先週15日の米ロ首脳会談は、まちまちの評価ではあるものの、ロシアのプーチン大統領を「交渉のテーブルに着かせた」という意味では、成功と言えなくもありません。今後の停戦に向けた大きな一歩であるという点では評価できます。プーチン氏も会談を終えて帰ったクレムリンでは、閣僚にむけて「ロシアにとっても大きな変化があるかもしれない」と述べていました。どんな人間であれ、お互いに多くの犠牲者が出る戦争を好む人はいないはずです。プーチン氏はウクライナへ侵略を決断した最高責任者として、自ら停戦を口にすることも出来ず、そのため、言い出すには何かきっかけがほしかったはずです。トランプ政権が「停戦を受けなければさらに厳しい制裁を加える」とすれば、国内世論も説得しやすく、いわば「渡りに船」だったのかもしれません。後は、どのように停戦をするかということになります。今夜のトランプ大統領とゼンレンスキー大統領との会談で、ゼレンスキー氏がどのようなスキームで停戦を受け入れるのか、あるいは停戦までの道のりが依然遠いのかが判明する公算が高いと思われます。
今週の注目は何といってもジャクソンホールでのパウエル議長の発言内容です。パウエル議長は22日(金)の現地時間朝8時(日本時間午後11時)に講演を行います。「ジャクソンホール会議」はカンザスシティ連銀が毎年主催する「世界の中央銀行総裁や経済学者、経営者が集う経済シンポジュウム」のことです。ワイオミング州にあるこの地は避暑地として有名で、イエロースト−ン公園の間欠泉の方が馴染み深いかもしれません。8月は主要国中銀の政策会合がないため、この地での講演内容や発言が、秋以降の金融政策の動向を示唆することも多く注目されます。焦点は、パウエル氏がここで利下げに関してどの程度前向きな発言を行うのかという点に絞られます。筆者は、個人的には50bpの利下げの可能性もあると予想していますが、その大幅利下げにつがなるような発言があるのかという点と、年内にあと何回利下げを行う考えがあるのかという点です。「利下げは行うが、その後はデータを確認したい」などと発言するようだと、ドルが買われる可能性もあります。FRB執行部の中にも、ボウマン副議長など積極的に利下げを支持するメンバーも増えつつある中、パウエル議長の発言はそれなりに影響力があります。次回FOMC会合では利下げを巡り意見が分かれることは必至と見られ、それだけに議長がどのように考えているのか、注目が集まります。
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来週の「今週のレンジ予想」はお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけ致しますが、宜しくお願い申し上げます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。