昨日(6月30日)の「今日のアナリストレポート」で、短期的には「ドル安・円高」に振れる可能性についてその理由を挙げましたが、今日(1日)のドル円はその兆候を見せ、6月13日以来となる143円台半ばまでドルが売られました。
7回目の訪米を終えて帰国した赤沢経済再生相も、心なしか疲れ切ったようにも見えましたが、今回も目立った「成果」はなかったようです。赤沢氏は、当初の帰国予定を延期までしましたが、結局今回もベッセント財務長官とは一度も会談の機会はありませんでした。常識的に考えれば、帰国を延期してまで会おうとした一国の大臣と、多忙だとは言え会わないことは外交礼儀上から言えば「極めて失礼」なことだと思います。ベッセント氏は、今の状況では会ってもこれ以上の進展はなく、日本が余程トランプ大統領を納得させる案を提示しない限り、あと1週間ほどに迫った関税発動期限までには合意できる見込みはないと考えたのでしょうか?トランプ氏は期限を延長する気はなく、「『親愛なる日本様、自動車で25%の関税を払うことになります』という手紙を送ることになるだろう」と自身のSNSに投稿していました。また、トランプ氏は「日本は米が不足しているが、米国から輸入しようとはしない」と、米にまで言及していました。仮に7月9日までに合意できず、「トランプ関税」が発効した場合、リスク回避の円買いに振れると予想します。関税の引き上げで、日本の方から米国への自動車輸出が減れば、ドル売り需要が減少することから、「本来はドル高要因」と言えないこともありませんが、4月2日に「トランプ関税」が発表された日以降は、金融市場のリスクが高まったことで円が買われました。
さらにFRBによる追加利下げを織り込む動きも活発化してきました。米10年債は4.2%台まで低下(価格は上昇)し、リスク資産の株も買われ、NY株式市場ではナスダックとS&P500は再び最高値を更新しています。これは年内2回の利下げを完全に織り込む動きで、個人的にはやや楽観的すぎるのではないかと思っています。「利下げ観測の高まり→米金利の低下→ドル売り」という構図が市場のコンセンサスになりつつあるようです。
今週は4日(金)が米国の独立記念日にあたり祝日のため、「6月の雇用統計」は3日(木)に発表されます。米国の労働市場は一時ほどの勢いはなく、伸びが鈍化してはいますが、利下げを促すほどの数字でもありません。非農業部門雇用者数(NFP)は11万人(5月は13.9万人)と見込まれていますが、これが大きく下振れしない限り利下げ観測には変化を与えないでしょう。ただ、このところの発表された指標では、予想を下振れする数字が多いことはやや気になるところです。「トランプ関税の影響を読み切れない」と、議会証言で述べていたパウエル議長が、ややハト派に変わるのかどうか注目です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。