週明け早朝にバイデン氏が大統領選から撤退するとのニュースが飛び込んできました。オバマ元大統領やペロシ前下院議長、さらにはクリントン元大統領など、民主党の要職経験者からも「撤退やむなし」との声が上がり、バイデン氏の撤退包囲網が強まった中、ようやく自身が撤退する腹を決めたようです。このままの状況で8月の民主党全国大会までズルズルと行ってしまったら、バイデン氏が大統領選で負けるだけではなく、連邦議会の上下院も共和党が制する、いわゆる「トリプルレッド」になる可能性もあり、これを懸念した同党の重鎮が立ち上がったのではないかと思われます。後任の候補者にはハリス副大統領が指名されると思われますが、同氏が女性票や黒人票を予想以上に獲得できれば、このまま民主党政権が続く可能性もあり、少なくともバイデン氏よりも接戦に持ち込めるのではないかと思われます。
一方、トランプ陣営とすればバイデン氏を候補者から引きずり降ろしたことで、「してやったり」と、ますますトランプ氏再選に近づいたと考えると思われますが、2016年の大統領選では、開票時直前まで「クリントン女史有利」と見られていながら、トランプ氏が勝利したこともあり、市場はトランプ氏再選を想定した「トランプトレード」に移行しつつありますが、まだ「確トラ」とは行かないでしょう。副大統領候補にバンス氏を指名し、ますます「トランプ節」が声高に叫ばれる中、市場には不確実性が増し、全ての金融市場のボラティリティーは上がることでしょう。ブルームバーグは「国際社会や金融市場では、11月の選挙でトランプ氏が勝利し、大きな政策転換がもたらされるとの見方が高まっている。投資家はすでに、貿易障壁の拡大やインフレ率上昇を見込んだ「トランプトレードに乗り出している」と伝えています。先週155円台まで急落したドル円は157円台後半まで反発し、戻りも思った以上に急です。個人投資家のスタンスもまだ、「ドルが下がったら買い」という姿勢を崩してはいないようです。今回のドル急落は、米経済指標の下振れや、政府・日銀による予想外の市場介入もありましたが、投機筋もこれまでの円売りポジションの巻き戻しをかなり行っています。シカゴ先物協会が発表した資料によると、ドル円が161円台半ばまで上昇した7月9日発表時に18万4000枚の円ショートと、過去2番目に多い円売りポジションでしたが、16日発表時は15万1000枚と、およそ18%も減少していました。ドル円はその後18日に155円38銭まで売られていることから、23日に発表される円売りポジションはさらに減少しているものと思われます。ただ依然として高水準なのは変わっていないようです。彼ら投機筋のポジションの推移とドル円相場の動きは概ね一致しています。今後彼らの円売り枚数が10万枚を割り込むような時は、ドル高トレンドが転換する時かもしれません。毎週火曜日に発表されるIMMのデータも参考になるかもしれません。
週末にはFRBが重要視しているPEC価格データが発表されますが、個人的には24(水)に行われる、ネタニヤフ・イスラエル首相の米議会での演説内容に関心があります。欧米の警告にもかかわらずパレスチナ自治区ガザへの攻撃を止めず、今度は自国からは1800キロ以上も離れているイエメンのフーシ派への攻撃を開始したネタニヤフ氏。どのような詭弁を弄して米議会の賛同を得られるのでしょうか。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。