先週末のNYでは、米中貿易摩擦への懸念からドル円は売られ、NY株式市場ではダウが一時1000ドルを超える下げを見せるなど、金融市場に不安が走りました。恐怖指数と言われる「VIX指数」も21を超える水準まで高まりました。「VIX指数」が危険水域と言われる20を超えるは1月25日以来、ほぼ9ヵ月ぶりのこととなります。通常であれば、この流れが翌日の東京市場にも伝播し市場が混乱しますが、今回はちょうど翌月曜日の東京市場が休みであったことが幸いし、混乱が緩和された格好になりました。昨日のNYでは、トランプ大統領が「中国のことは心配いらない。全てうまくいく!」と、楽観的な発言を行ったことで巻き戻しが優勢となり、その影響で連休明けの東京ではドル円は152円台半ば、日経平均株価も下げはしたものの、現時点での下落幅は800円程度に収まっています。
ただ、それでも米中の関税問題は根が深く、レアアースを巡る攻防が根底にあります。11月1日から100%の対中追加関税を課すと中国を恫喝したトランプ氏はその後、中国とのディール(取引)に前向きな姿勢を示唆し、バンス副大統領は12日、結果は「中国の対応次第だ」と述べました。これに対し中国側は、中国外務省の林剣報道官が13日の定例記者会見で、「米国が誤った道を進み続けるなら、中国は自国の正当な権利と利益を守るため、断固として必要な措置を講じる」と話しています。ブルームバーグは、「こうした中、ボールは今や相手側のコートにあると双方が主張する構図となっている。輸入関税率のさらなる引き上げに向けて刻一刻と時間が迫っている。どちらが先に譲歩するかが今後の焦点だと言えそうだ」と報じています。この問題は、つき詰めれば、AIに関して米中のどちらが主導権を握るのかという問題にも関わっており、簡単に片づくものでもないと思われます。
「内憂外患」と言われる今回の懸念で、「内憂」では高市自民党総裁誕生を巡る「麻生頼み」の構図が出発点になっています。今回の高市政権に向けた組織作りでは「麻生一人勝ち」との声もあります。麻生氏自身は副総裁に収まり、幹事長は義弟の鈴木前財務相が就任しています。さらに萩生田氏を副幹事長に抜擢したことが、公明党の連立離脱につながった一因になっています。高市氏が、初動で連立政権の枠組みの相手である公明党を「軽視」したことが、離脱にまで発展したと分析する専門家もおり、その専門家は今回の連立からの離脱を「熟年離婚」と称していました。ただ、それでも他の野党が一枚岩になり切れていないこともあり、高市氏の首相就任はほぼ確実のようです。初動に失敗した高市氏が政権発足後、どこまで公約を実現出来るのかによって、「高市トレード」の賞味期限も決まってきそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。