先週は「トランプ関税」の発動と、それに対するカナダ、EUなどの報復措置など、ほぼトランプ関連の話題に終始しました。「トランプ関税」だけではなく、トランプ氏の言動でも相場が動く局面もありました。今週も引き続き、関税の話題でコメントは埋め尽くされそうですが、本格的な「貿易戦争」に発展すれば、困るのは貿易相手国だけではありません。輸入価格の上昇は、米国の場合、そのまま小売価格に転嫁されやすいとされています。つまり、米国民も「トランプ関税」の影響をかなり受けることになります。NBCニュースの調査でも、トランプ氏の経済運営に対しては、有権者の過半数を超える「54%が不満足」と回答しています。そもそも、「米国の富の蓄積は、効率的なグローバルサプライチェーン、より広い市場、そして新興市場における低コスト労働のアクセス等の『グローバル化』の影響によってもたらされたと整理することができる」と、ドイツ証券の長政氏が指摘しているように、グローバ化なくして米国の飛躍は成り立たなかったと言えます。「トランプ関税」はそのグローバル化に直接くさびを打ちこむ行為と考えられます。「トランプ関税」はまだ、始まったばかりです。
トランプ関連の記事が連日報道されていますが、日本では「石破降ろし」が、政治的要因として浮上して来そうな気配です。報道されているように、石破首相は当選1回の衆議院議員15名に10万の商品券を配り、この問題を契機に政権与党以内にも、公然と石破氏の退陣を求める動きが出ています。首相は、「商品券は会食のお土産代わり」と述べ、政治資金規正法に抵触しないと述べていましたが、15人で150万円のお金は庶民感覚からしたら、やはり「大金」です。石破氏は、党内の中でも経験と見識ではトップクラスの人と認識していましたが、まさか「李下に冠を正さず」という諺を知らなかったわけではないでしょう。余りに軽率だったと言えます。
昨年パーティー券問題であれほどもめていたわけですから、「10万円の商品券配布」など、問題外でしょう。一部には「石破の後は、高市だ」という声もあるようです。石破氏はやや変わった人と見られがちですが、昨年の自民党総裁選では、この人以外に適任者はいないと思っていました。立憲民主党の野田代表が言い放ったように、「総理になったら、人が変わった」のかもしれません。現時点では実現性は低いものの、仮に高市氏が首相になったとしたら、市場は明らかにドル買い材料と見るはずです。高市氏は、昨年9月の自民党総裁選の際、「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言し、利上げには反対の意志を見せていました。もちろん、その当時とは物価や金利を取り巻く環境は大きく異なるとは思いますが、基本的には利上げを避ける姿勢は変わらないと思い、今後粛々と利上げのタイミングを探る日銀にとっては、やや逆風となる可能性もあります。
今週は日米ともに金融政策定決定会合があります。いずれも現行の政策を据え置くと予想されていますが、日銀については今朝の日経新聞がすでに「日銀、金利据え置きへ」と、一面で報じていました。またFOMCでは、パウエル議長が会見で米経済は底堅い動きが続いていると指摘しながらも、トランプ政権の政策の不透明さから、「必要があれば、いつでも行動する用意がある」といった意思表示をする可能性もありそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。