先週後半にドル円は109円49銭まで買われ、5月以来のドル高を回復しました。米中貿易協議に進展が見られ、今後「第一段階合意」がなされれば、制裁関税を双方が段階的に解消していく可能性が出てきたことで、リスクオンの流れが一段と高まり、米長期金利の上昇と株高が支えとなり、ドルの買い戻しが進んだものです。ただ、その翌日にはトランプ大統領自らが「合意はしていない」と、あえて否定的なコメントを出しましたが、リスクオンの流れが止まるほどの影響には至っていません。見方によっては「株価の好調な動きが続いており、多少ネガティブな発言があっても堪えられる」といった「計算」も働いていたのかもしれません。
その前の週には、米中協議に先行き不透明感が増したという理由で、一時は108円割れまでドルが売られる場面があったことを考えると、依然として「米中通商問題」が投資家の行動に大きな影響を与えていることが示され、来月12日に予定されている、最も重要な「制裁関税第4弾」が発動されるのかどうかが、年末にかけての為替相場に大きな影響を及ぼすのは必至と見られます。先週末のNY市場の株式と債券市場の動きを見る限り、多くの市場関係者は「いずれ合意される」と予想しているようです。
今週は13日(水)にパウエル議長の議会証言が予定されています。先月30日には、今年3回目となる利下げが決定され、声明文では「適切に行動する」との文言が削除されており、継続的に行われてきた利下げが一旦休止されるとの観測が強まっています。またFOMCメンバーの幾人かは「利下げを一旦休止するのが適切」とのコメントも残しています。パウエル議長も、引き続き不透明な貿易問題がリスクだとしながらも、これまでの3回の利下げの効果を見極めるといった内容の証言を行うのではないかと予想します。利下げ打ち止め感を強調するようだと、ドル円も再び109円台半ばを試す動きが期待されますが、基本的には証言による大きな動きにはつながらないと予想されます。
同じく13日にはドイツの7−9月期のGDPが発表されます。4−6月期がマイナス0.1%(前期比)であったことで、ドイツの景気減速が確認された形でしたが、今回も仮にマイナス成長だとすると、ドイツ経済は「リセッション」に陥っている可能性が高まります。一般的に2四半期マイナス成長を記録すると「リセッション入り」したと考えられているからです。現時点での市場予想は前回と同様「マイナス0.1%」となっています。中国景気との相関性が高いドイツ景気ですが、浮上するにはまだ時間がかかると思われ、ユーロ売りの材料になる可能性が高いと考えます。ユーロ売りドル買いが強まれば、ドル円でも円売りドル買いにつながり易く、ドル円のサポート材料になるといった連想も働きます。今週はドル高の流れをどこまで伸ばせるのかを確認する週とみています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。