もう6月というか、やっと6月になったというのか、コロナ感染防止の「自粛」も早、3カ月が経過しました。ドル円は5月の中旬から107円台で張り付いています。先週末のNYではトランプ大統領が対中国への制裁を発表しましたが、内容的には厳しくなく、中国側からの強い報復を引き出すようなものではなかったことから、ドル円は107円89銭までドルが上昇しています。米中関係の悪化に加え、米国ではミネアポリスで発生した黒人暴行問題に対する抗議活動が広がり、全米25都市で「夜間外出禁止令」が出されるなど、リスク回避につながりそうな状況ですが、円が買われる動きになっていません。
主要通貨と異なるこの動きを明確に説明するのは難しいと思いますが、敢えて理由を探せば以下のことが考えられそうです。1つは、日米での株価の上昇です。週明け月曜日も、株価は朝方のマイナス局面から午後には240円程のプラスに転じ、日経平均株価は2万2000円の大台を回復しています。3月に記録した1万6800円台からは、実に30%を超える上昇率です。株式市場のアノマリーである「Sell in May」も、今年ばかりは日米の株式市場ではあてはまらないようです。この株価上昇が「円売り」にもつながっている可能性があります。株価の上昇は基本的には「リスクオン」につながる傾向があり、「リスクオン」は円が売られ易いということが言えます。
2つめは、クロス円の巻き戻しです。5月6日には114円41銭前後まで売られたユーロ円は、本日(6月1日)は120円40銭まで上昇する場面があり、一時60円を割り込んだ豪ドル円も72円台半ばまで反発しています。このように、クロス円の買い戻しがドル円の「円売り・ドル買い」に影響している部分も大きいと思われます。
ただ、それでも108円台に乗せないドル円の上値は重いと予想しています。今週は本日のISM製造業景況指数を皮切りに重要指標が多く発表されます。特に5日の雇用統計が重要ですが、市場予想ではすでに相当な悪化が予想されており、その予想に対して余程の下振れでもない限り、指標結果を材料にドルが売られる場面はないのかもしれません。失業率は前月の14.7%に対して19.6%と予想されており、非農業部門雇用者数は800万人の減少と、かなりの落ち込みが予想されています。この予想を上回る悪化は予想しにくいところですが、それでも足元の流れはドル安の流れが続いており、ユーロドルの反転が鮮明になっています。既に日足ベースでは「雲の上抜け」が完了しており、現在は3月に記録した直近高値とのもみ合いになっています。ユーロドルが1.12を超えて上昇するようだと、ドル円も円高方向への上昇圧力がかかると見ています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。