ドル円は引き続き、「リスクオン」と「リスクオンの後退」が繰り返しはっきりと表れる株価の動きに連動する形で動いていると見られます。先週後半には106円58銭までドルが売られる場面がありましたが、これはNYダウが11日の取引きで1860ドルという、1日の下落幅としては、過去4番目にあたる大幅な下落に伴い、「リスクオン」が急速に後退し、円が買われたものでした。その後はこの水準で下落は抑えられていますが、今週は再びその水準を試す可能性があるのではと、予想しています。
ドルの上値が重いと予想する根拠は米国内における人種差別に対する抗議デモの拡大と、コロナ感染の第2波への懸念が高まっていることが挙げられます。この2つの材料が株価の先行きに、重しになってくると思われ、併せてドルの上値を抑えるのではと、考えます。FRBの大量の資金供給と、2022年末まで継続されると見られる「ゼロ金利政策」を背景に、実態経済を無視した株価の上昇は、むしろ今後再び株価が暴落する「マグマ」を溜め込んでいるとも言えます。足元の日米欧の金融政策について、日曜日の日経新聞は「コロナによる金利の死」という見出しで警告を発していました。日欧中銀によるマイナス金利政策やFRBのゼロ金利政策により、本来金利が持つ機能が損なわれているという内容です。コロナによる景気の底割れを防ぐため、無尽蔵に資金を市場に供給し続けると、将来のインフレの「芽」を醸成することになります。景気が回復に向えば、超低金利の国債は売られ金利は上昇しますが、そこで無尽蔵に債券購入を行うことで金利は上がりません。「1%というのは、金利機能が働く最低レベルの金利」と述べた、福井元日銀総裁の言葉も引用されていましたが、その金利は現在ほぼゼロです。
今週は金融政策の決定会合が相次いで開催されます。日銀とスイス中銀では政策変更はないと見られ、日銀は「出来ることは何でもやる。必要と判断したらちゅうちょなく行動する」といった定例文に留まるものと見られます。一方BOEは資産購入を1000億ポンド(約13兆4000億円)増額するものと予想されますが、為替の大きな変動にはつながらないと見られます。また、パウエル議長の議会証言もありますが、こちらもFOMC後の記者会見から大きく逸れることはないと見られます。コロナの第2波が懸念される中での議会証言です。FRBの「ダブル・マンデート」の1つである、「雇用の最大化に向けて最大限の努力をする」といった内容に留まるものと思われます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。