バイデン政権への移行が思ったほど紛糾しない。あるいは、成立の遅れていた経済対策の実現に明るい兆しが見えてきた。はたまた、英国がコロナワクチンの使用を承認したことなど、先週は市場でリスクオンが進み株高、ドル安が進みました。週央まで104円台で推移していたドル円は後半には103円台半ばまでドル安が進み、ユーロドルは2018年4月以来となる1.2177近辺までドル安が進む場面もありました。そんな中での雇用統計の発表でしたが、結果はまちまちで、労働市場の回復ペースがコロナ禍の影響で鈍化したことが確認されました。ドル円は再び103円台後半まで売られる場面もありましたが、結局今回も104円台に押し戻され、103円台半ばから104円台半ばのもみ合いレンジを、上へも下へも抜け切ることは出来ていません。
一方ユーロドルは上記のように、1.21台後半までユーロ高が進み、特に1.20台半ばを超えてからはその上昇に勢いがついています。1.20台に乗せた際には、当初予想されたECB高官からの「口先介入」も見られず、それもあり、一気に1.21台後半までユーロが買われたものと思います。今週はさらにユーロドルの動きが注目され、その動きがドル円などにも影響を与えそうな気配です。10日(木)にECB政策会合があり、今回は何らかの追加も金融緩和に動く可能性が高いからです。ラガルドECB総裁は、前回10月29日の会合後の会見で、「次回12月の政策会合では、政策手段を再調整する必要がある点で、政策委員会は一致した」と述べ、追加緩和策の実施を示唆しています。また、ECBのシュナーベル理事も先週、新型コロナウイルスのパンデミックが予想以上に長引く見通しであることから、「金融政策決定に反映されなくてはならない」と述べていました。予想される緩和策は、現在1億3500億ユーロ(約170兆円)のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を5000億ユーロ増額するとの見方が有力です。また少なくとも6カ月の期限延長も予想されています。
問題は、追加の緩和決定が上昇基調にあるユーロドルの勢いを止めることが出来るかどうかです。ユーロドルはすでに1.20台の水準を固めた可能性が高いと思われます。この水準を固めたということは、1.20前後まで売られる場面があれば、絶好の買い場と見た投資家のユーロ買いが集まり易いということを意味します。ある程度相場に織り込まれている以上、今回の追加緩和の決定だけでは流れを変えるは難しいのではないかと予想しています。その意味では、今回も会合後のラガルド総裁の発言には注目です。チャート分析でも、すでに多くのローソク足で上抜けしており、もはや「月足」に頼るしかありません。今しばらくは、ユーロドルの上昇基調は変わらないと見て、買い先行でいいのではないかと思います。ただ、ここまで来たら慌てず、目先は10日の政策会合を受けてからの動きを見極めることが肝要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。