ドル円は先週、FOMCの結果発表とパウル議長の会見をきっかけに4月6日以来となる110円台を回復し、一時は110円83銭までドル高が進みました。これまでも110円台に乗せるとドル売りが活発となり、何度も109円台に押し戻される展開が続いていましたが、「今回は違う」といった印象を残す動きでした。しかし、今回も週末にブラード・セントルイス連銀総裁が「私は2022年終盤の開始を予測している」と、CNBCとのインタビューで利上げ開始が早まると発言したことがきっかけとなり、NY株式市場が大きく下落。一方長期金利が低下したことでドル円は110円台前半まで押し戻されました。この動きは週明けの東京市場にも飛火して、月曜日の日経平均株価は一時1100円を超える下げを見せる局面もありました。ドル円も110円台を割りこんで再び109円70銭前後まで売られています。
FOMC声明文とその後のパウエル議長の記者会見での発言では、以前よりも「タカ派寄り」だったことは事実ですが、為替市場を含めた金融・商品市場はこれらをうまく消化しており、大きな混乱にはつながっていませんでした。ところが、ブラード総裁がFOMCの予想をさらに1年前倒しとなる「22年末」と発言したことで、利上げ観測が急速に強まり、投機筋のこれまでのポジションの巻き戻しを誘発しました。株式売り、ドル売り、さらにはユーロ円などのクロス円でも、円を買う動きにつながっています。利上げが前倒しになるにもかかわらず、債券は買われ、金利は低下しています。この部分に関してはなかなか分かりにくい現象ですが、結局行き場のない資金が大量に市場に滞留しており、米金利の1.4〜1.5%という金利水準は相対的に魅力的であることが、改めて認識されたとの見方があります。確かに、世界的に金利は上昇したとはいえ、ドイツの10年債利回りは「−0.2%前後」で、依然としてマイナス圏です。またユーロ圏で最も金利水準の高いイタリアでも「0.8%程度」です。安全性と流動性という点で考えれば、米国債に資金が流れるのも理解できるというものです。
ドル円は109円台後半まで円高に振れてきました。今回のポジション調整はかなり大きな動きとして捉えることができますが、これで、これまでの全ての流れが変わったかどうかはまだ判断できません。月曜日の日経平均株価が1000円を超える下落で終わると、NY市場で再び株価が大きく売られ、それがまた明日の日経平均を押し下げるといった「負の連鎖」につながるようだと、ドル円は109円割れを試す可能性も出てきますが、基本は米国株がどこで下げ止まるのかという点が注目されます。市場では「利上げ前倒し観測」が強まった先週でしたが、今週はFOMCが終了し、ブラックアウト期間が解除されたこともあり、多くのFRB幹部や地区連銀総裁の講演が予定されています。中でも、22日(火)のパウエル議長の下院での証言と、23日(水)のボウマンFRB理事の発言には注意が必要です。株価を一段と下げるような発言は避けると思われますが、一方でFOMCメンバーの利上げ開始前倒しへのシフトをどのように総括するのか、注目されるところです。また、FRBがインフレの基準として見ているPCEデフレータの発表もあります。その意味で、今週はドル円ではドルの下値を確認する動きになると見られます。動きが出てきただけに、慎重な対応が望まれます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。