ドル円は先週木曜日のNY市場で111円台半ばを超え、1年3カ月ぶりにとなるドル高水準を付けてから、週末の雇用統計を迎えました。失業保険申請件数が新型コロナウイルスのパンデミック以降で最少となるなど、雇用の上振れを予感させる状況での6月の雇用統計でしたが、結果は予想通り非農業部門雇用者数が上振れ、ドル円は111円65銭まで買われました、しかしその後、米長期金利の低下を手掛かりに111円を割り込む水準まで押し戻されました。非農業部門雇用者数は5月分を大幅に上回りましたが、失業率は「5.9%」と、やや悪化し、市場関係者は、「それでもFRBのテーパリング開始を急がせるほどではない」との考えから、リスクオンが進み、株と債券が買われ、金利低下に伴ってドルが売られました。NYでは110円96銭までドル売りが進み、ドル高も一服といったところですが、基本的な流れとしてドル高傾向は続いていると思います。株と債券が買われる「適温相場」が続き、新型コロナウイルス感染では東京を中心に再び感染が拡大する兆候を見せていることで、円を売る動きにつながり易いと考えます。
バイデン大統領は4日ホワイトハウスでの独立記念日の演説で、ワクチン接種キャンペーンなど、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応の成果を強調しながらも、闘いはまだ終わっていないと指摘しました。バイデン氏は、「コロナウイルスはまだ克服されていないが、われわれの生活をもはやコントロールしておらず、国を麻痺させていない。決して再びそうならないよう、われわれの力が及ぶ範囲にある」と述べ、より感染力の強い変異株が国内で広がっていることに触れ、気を緩めないよう呼び掛けました。バイデン氏はさらに、米国のコロナによる死者が60万3000人を超えるなど、大きな代償を伴う闘いだったと指摘し、7月4日の独立記念日までに成人の70%に1回目にワクチン接種を受けさせるとしていた目標に届かなかったが、成人の67%が少なくとも1回目の接種を終えたことを強調していました。
注目された雇用統計も終わり、今週はやや材料難と言えるでしょう。そんな中でも、7日(水)のFOMC議事録が注目を集めそうです。今回公開される議事録は6月15−16日の会合分で、同会合では18人中、13人が少なくとも2023年までに1回の利上げを見込み、22年中の利上げも7人が予想するなど、「タカ派色」が一気に強まった会合の議事録です。会合の内容が、市場が予想するものよりもさらに「タカ派寄り」であれば、再びテーパリング開始時期が前倒しになるといった観測が強まり、株安、債券安から金利が上昇し、ドル円が再び111円半ば超えを試す可能性も出て来ます。その場合、ドル円は111円50銭〜112円を超えることができるかどうか。またユーロドルは1.18台を割りこみ、3月に記録した1.1704前後を抜け切ることが出来るかどうかが焦点になります。
足元の流れはドル高に傾いており、FRBはいずれ金融正常化へと舵を切り直すことは明白です。その時期が早まるのか、あるいは2022年末になるのかを巡って、為替も債券も上下している状況です。先週末のNYでは、主要株価指数が揃って最高値を更新しています。長期金利の1.4−1.5%前後は株式にも債券にも居心地の良い水準のようです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。