先週は関東地方でも「梅雨明け」が発表されました。例年よりも「梅雨明け」が早いようですが、本格的な夏の到来で、すでに関東から北の地域では35度を超える「真夏日」も発生しています。一般的には、「今年の夏=オリンピックの夏」ということになりそうですが、為替市場にとっては「今年の夏=FRBによるテーパリング開始時期を確認する夏」になりそうです。米国では先週CPIの発表があり、総合指数もコア指数も予想を大きく上回り、資産購入の縮小期待からドル円も110円台半ばを超える場面もありましたが、その後に続いたパウエル議長の議会証言で、再び109円に押し戻されました。週末には小売売上の上振れから110円台に戻しましたが、上値も、下値もどちらも勢いはなく、やや膠着感の強まる展開になっています。
パウエル議長は議会証言で、足元の物価上昇は一時的なもので、「物価上昇はボトルネックの影響が解消されるのに伴い、一部反転するだろう」と述べ、これまでのインフレに対する認識を変えていませんでした。労働市場についても、今後徐々に改善するとの見通しは維持しながらも「長い道のりが残っている」と語り、ハト派的なスタンスに終始していました。焦点は一にも二にも、足元の物価上昇が本当に一時的もので終わり、今後物価上昇に歯止めがかかるのかという点です。この点に関してはFOMCメンバー内でも意見が異なっていることは明らかで、概ねFRBの執行部ではハト派寄りで、セントルイス、ミネアポリス連銀総裁などが代表的なタカ派寄りと見られています。また、サマーズ元財務長官なども足元の物価上昇をあなどってはいけないと、タカ派寄りの発言を繰り返し、高インフレに警告を発しています。そんな中、今朝の経済紙では、オバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたグールズビーシカゴ大学教授のインタビューが掲載されていました。同教授は「インフレは一時的」との立場で、パウエル議長などハト派の考え方を支持しています。その根拠としてインタビューでは、「コロナ前、失業率は3.5%で持続的なインフレは起きなかった。失業率が6%近い今、インフレが続く理由はない」ことを挙げ、「さらに60年代は需給ギャップが5%に達したこともあり、それが高インフレを生んだ。2022年末の需給ギャップは約1%と予想され、インフレにはつながらない」との認識を示しています。(日経新聞、月曜経済観測)
今週のドル円は110円を中心に上下1円以内の狭いレンジを予想し、ドル円自体動きようも無いように思います。ユーロドルがどちらかと言えば下値を試す展開になっており、1.70前後を試す可能性もあると見ています。もっとも今週はECBの政策発表があり、ユーロドルのポジションを一方に傾けるにはリスクがあります。ドル円はそのユーロに影響される可能性が高いと見られます。足元ではアジアを中心にコロナ感染が拡大し、日本もそうですが、とりわけインドネシアやタイなどでの感染拡大が「リスクオフ」を促す展開になっています。オリンピックがその流れを反転させるとも思えませんが、アジアでの感染拡大がどこまで続くのかも焦点の一つになります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。