「今日のアナリストレポート」でも書きましたが、先週末に発表された7月の雇用統計は、米国がコロナ禍からの力強い復活の途上であることを連想させるに十分な内容でした。非農業部門雇用者数は100万人には届かなかったものの、6月と7月の2カ月連続で95万人ほどの増加で、今年最も伸びのある増加でした。また失業率もコロナ前の2020年3月以来となる低水準である「5.4%」で、平均時給も上昇していました。アトランタ連銀のボスティック総裁が述べた、「かなり心強いのは確かだ。これが次の1−2カ月続けば目標に向けて『顕著な進展』があったことになる」という言葉に象徴されるように、8月の雇用統計の内容が今から注目されます。仮に8月の雇用統計でも同じような結果が出るようだと、一気にテーパリング開始時期が早まることになりそうですが、ここはデルタ変異株の感染をどこまで抑え込むことが出来るかといったことと、表裏一体でもあります。
それにしても先週水曜日に発表されたADP雇用者数とは大きな隔たりがありました。ADP雇用者数は市場予想の半分にも満たない数字で、この発表を受けて米長期金利は一時1.125%台まで低下し、ドル円も108円72銭前後まで売られる場面がありました。昨日のNYでは同金利が1.32%台まで上昇したことでドル円も再び110円台に反発しています。オリンピックやサマーバケーション中ということもあり、値動きが限られるのはやむを得ないことですが、まだはっきりとした方向性が見えないドル円です。ユーロドルが今年4月以来となる1.1735まで「ドル高・ユーロ安」が進んで来たことで、ドル円でもドル高が進む気配もありますが、そのタイミングはまだ先のことかもしれません。やや気になるのが金(きん)価格のきつい下げです。今年3月には1900ドル台まで買われ金は、昨日のNYCOMEXでは3日続落の1726ドル台まで売られています。雇用統計の上振れで、金利が上昇したことが金の下落につながったようですが、この金価格の下げが、商品市場ではテーパリングを織り込んできたとの見方もできそうです。
雇用統計も終わり、今月はFOMCも開催されないことから、ここからは凪相場が続くと見ています。少なくとも今月26−28日に行われるジャクソンホールでの経済シンポジュウムまでは109−111円のレンジをどちらも抜け切ることができないのではないかと予想しています。ただ、それでも値動きはあります。ここはこまめに利益確定を行っていき、明確なトレンドが見えたら、その際にはレンジを抜けていたとしても、同じ方向に付いて行くべき準備をしておくべきでしょう。今週は11日(水)の消費者物価指数と13日(金)のミシガン大学消費者マインド速報値に期待しています。結果次第ではボラティリティーが高まることにもなります。ただそれでも上記レンジを抜けて、その水準を維持する展開は想定しにくいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。