今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
8月30日 〜 9月5日
ドル/円
109.00〜110.50
ユーロ/円
128.00〜130.50
豪ドル/円
79.00〜81.50

世界中の注目を集めたパウエル議長の講演でしたが、議長はテーパリングの年内開始について適切との認識を示したものの、利上げに関しては言及せず、むしろ市場が「前のめり」になることを牽制するかのように、「見込まれる資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始時期に関する直接的なシグナルを送ることを意図してするわけではない。利上げ開始については、われわれは異なった、そして一層厳しい基準を明確にしている」と述べました。「一層厳しい基準」というものがどのようなものなのかは今後判明してくるとは思いますが、「市場に優しいパウエル議長」は健在だったと言えます。講演内容を受け、株式市場では主要3指数が揃って買われ、ナスダックとS&P500は最高値を更新しており、ダウも最高値近辺で推移し、債券相場も上昇しています。

それにしても、発言する一言一言が米国だけではなく、世界の金融市場に大きな影響を与えることとなるFRB議長。米国では「大統領に次ぐ重要なポスト」と言われるだけのことはあります。危機が起こった時には素早く対応し、危機が終わりつつある現在のような状況では、ぬるま湯に慣れ過ぎた投資家を混乱させず、ソフトランディングに持って行く手腕は、簡単ではありません。市場は常に過剰反応します。ましてや現在のように、市場には待機資金が有り余っており、発言次第では大きく一方方向に反応し易くなっている状況下では、発言する言葉にも慎重にならざるを得ません。AIが発達し、最初の一言を瞬時に判断し、大量のポジションメイクを行う体制を多くの機関投資家が整えていることから、市場に対して常に慎重な対応が求められます。

パウエル議長のハト派寄りの発言でドル円はやや上値が重くなってきたと考えますが、それでもドル急落の可能性はそれほど高くはないと思います。先週末に発表された7月の個人消費支出は、やや勢いが弱まったものの、食品とエネルギーを除いたPCEコア指数は、前月比で0.3%上昇。前月分も0.5%へと上方修正されました。前年比では3.6%の上昇となり、6月に続いて1991年以来の大幅な伸びとなりました。FRBの目標である2%の物価上昇を大きく上回る状況が続いています。

インフレ率はもはや「一時的」とは言えない状況かもしれません。問題は労働市場の方ですが、ここについてもパウエル議長は「明確な進展を遂げたと思う」と述べていました。6月、7月と、95万人ほどの高水準の雇用増加が続いていることを踏まえての言葉かと思いますが、今週末の8月の雇用統計は再び注目度が高まります。既に75万人の増加と、先月よりは鈍化すると予想されていますが、これが予想を大きく上回るようだと、やや後退した利上げ観測が再び高まる可能性もあります。雇用統計にも影響のある週間失業保険申請件数では8月の中旬は35万件前後で、引き続き減少傾向を見せていました。そして、失業保険申請件数にさらに影響を及ぼす、手厚い失業給付金の上乗せが9月にはほとんどの州で終了します。そうなると、8月分ではなく、9月分の雇用統計に注目が移りそうですが、ともあれ、注視したいと思います。

今週は上記に加えて、アフガン情勢やデルタ変異株の感染状況にも目配りが必要です。また影響は軽微かもしれませんが、日本の感染状況にも注意が必要です。先週前半まで拡大が続いたコロナによる新規感染者数は依然高止まりしてはいますがやや減少傾向です。これが減少を示す「前兆」なのか、あるいは今後急激に感染が拡大する「踊り場」なのか、注意したいところです。日曜日のNHKの番組で田村厚生労働大臣は、「このままでは9月12日の緊急事態宣言の解除は難しい」と述べていました。

今週の注目材料

  • 8/30(月)
    独 独8月消費者物価指数(速報値)
    欧 ユーロ圏8月消費者信頼感(確定値)
    欧 ユーロ圏8月景況感指数
    英 ロンドン市場休場(バンクホリデー)
    米 7月中古住宅販売成約件数
    加 カナダ4−6月期経常収支
  • 8/31(火)
    豪 豪4−6月期経常収支
    豪 豪7月住宅建設許可件数
    日 7月失業率
    日 7月鉱工業生産
    中 8月中国製造業PMI
    中 8月中国サービス業PMI
    独 独8月失業率
    欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(速報値)
    米 6月ケース・シラ−住宅価格指数
    米 6月FHFA住宅価格指数
    米 8月シカゴ購買部協会景気指数
    米 8月消費者信頼感指数
    米 米軍、アフガニスタン撤退期限
  • 9/1(水)
    豪 豪4−6月期GDP
    中 8月財新製造業PMI
    独 独8月製造業PMI(改定値)
    欧 ユーロ圏8月製造業PMI(改定値)
    欧 ユーロ圏7月失業率
    英 英8月製造業PMI(改定値)
    米 8月ADP雇用者数
    米 8月ISM製造業景況指数
    米 8月マークイット製造業PMI(改定値)
    米 8月自動車販売台数
  • 9/2(木)
    豪 豪7月貿易収支
    日 8月マネタリーベース
    米 新規失業保険申請件数
    欧 ユーロ圏7月生産者物価指数
    米 7月貿易収支
    米 7月製造業受注
    加 カナダ7月住宅建設許可件数
    加 カナダ7月貿易収支
  • 9/3(金)
    中   8月財新サービス業PMI
    中   8月コンポジットPMI
    トルコ トルコ8月消費者物価指数
    独   独8月サービス業PMI(改定値)
    欧   ユーロ圏8月総合PMI(改定値)
    欧   ユーロ圏8月サービス業PMI(改定値)
    欧   ユーロ圏7月小売売上高
    英   英8月サービス業PMI(改定値)
    米   8月雇用統計
    米   8月ISM非製造業景況指数
  • 9/4(土)
  • 9/5(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。