先週金曜日は「サプライズ・デー」でした。昼前の「菅首相、総裁選に不出馬」の報道がまず驚きでした。前日まで「出馬は当然」と言い、政権への支持率は低いものの、再選の可能性もあったと思われましたが、それが一転して「コロナ対策に専念」と言い、出馬しないことを宣言しました。皮肉なことに、その第一報を受け日経平均株価は急騰。一時は前日比600円を超える上昇を見せました。菅政権の終焉が株価の上昇につながったことは、低迷する支持率を如実に表していると思われますが、その流れは週明け月曜日も続いています。焦点は次期自民党総裁に誰がなるのかという点ですが、海外投資家は河野氏がお好きなようです。米国の大学を出て、英語も堪能なことから、分かり易いということのようです。ただ誰がなっても為替相場への影響は軽微と見られます。むしろ、今後重要な材料になり得るのは、10月の衆院選です。ここで、自民党が大敗するようだと為替にも影響が出て、恐らくその場合には円売りが強まると予想していますが、どうでしょう?
もう一つのサプライズは「米8月の雇用統計の結果」でした。非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回る結果に驚きましたが、予想の73.7万人に対して3分の1以下の結果は、速報値といえども衝撃的でした。詳しくは今朝の「アナリストレポート」を参照願いたいと思いますが、市場のFRBによるテーパリング開始のタイミングに微妙に影響してくる可能性があります。ただこれで米労働市場がデルタ変異株の感染拡大の影響からピークを付けて、再び縮小に向かうのかどうかは判断できません。9月の雇用統計の結果を確認しなければなりませんが、21−22日に開催されるFOMCではハト派の委員が息を吹き返してくることは予想できます。同時に、ジャクソンホール会合の講演で慎重姿勢を維持していたパウエル議長の認識にも変化が出て来るのかもしれません。デルタ株の感染拡大をリスクとして指摘していた議長でしたが、物価上昇が続く以上FRBは遅かれ早かれテーパリングに踏み切らざるを得ないのも事実かと思います。
ドル円は110円台に入ると押し戻される展開が続いています。現在「日足チャート」では7月2日に記録した111円66銭を頂点に右下がりの抵抗線が描ける一方、8月4日の108円72銭を底値として右上方向に支持線を引くこともでき、「三角保ちあい」が形成されつつありますこの三角形が徐々に収れんしており、近いうちにどちらかに跳ねる可能性が、経験則からもあり得ると予想しています。それがちょうど、FOMC会合と一致するのかどうかは分かりませんが、動かないと安心しすぎるのは禁物です。経験側からは、仮にどちらかに跳ねた場合には、結構な値幅が出ることも教えています。ユーロドルが1.19台を回復するなど、こちらがややドル安傾向を見せてはいますが、さらに買われて1.20台で定着するとも思えません。ユーロドルが再び1.17台に低下するようなら、ドル円は110円台半ばを抜けている可能性もありそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。