ドル円は依然として110円近辺でのもみ合いが続いています。先週8日に、110円45銭までドル高が進んだ際、「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を上抜けしたかもしれないと書きましたが、結局109円台に押し戻され元のレンジ内に納まっています。ただ、依然として「三角保ち合い」の頂点に向けレートが収束する動きが続いています。なにしろ、7月からの2カ月間でわずか2円程の値幅しかなく、完全な手詰まり状態です。来週のFOMCに向けてどちらかに動き出す可能性は高くなったと考えて(期待して)います。日柄的にも、そろそろ動き出してもいいころでしょう。
今週は比較的重要な経済指標の発表があります。14日(火)には8月のCPIが発表されます。前月比で「0.4%」の伸びが予想されていますが、これが予想を上回るようだと、再びテーパリング観測が息を吹き返してきそうです。デルタ変異株の感染が続いており、これが個人の消費行動に悪影響を与えるほど低調なのか、注目されます。15日(水)には9月NY連銀製造業景況指数が発表されます。さらに16日(木)には、個人の消費動向が確認できる8月の小売売上高が発表されます。先週のNY株式市場の動きは概ね軟調でした。連日最高値を更新していたナスダック指数も週後半には崩れ、恐怖指数の「VIX指数」も、約3週間ぶりに危険水域の「20」を超えています個人的は、このNY株式市場の動きに注意が必要と感じています。上昇が続いていたことから、単なる踊り場と見るのか、あるいは調整局面に入る前兆になるのか、今週も注視していきたいところです。
もっとも、そのような動きの中でも、FRBがテーパリングに踏み切る考えは変わらないと考えます。特に先週は、FRBの執行部の1人であるNY連銀のウイリアムズ総裁が、「私が想定する通りに米経済の改善が続くならば、年内に資産購入ペースを落とし始めることは適切となり得よう」と、テーパリングに前向きな発言を行ったことが印象的でした。「物価上昇は一時的だ」と繰り返していたパウエル議長の判断にも影響を与えるのではないかと受け止めています。
軟調だったNY株に比べ、日経平均株価は週を通して堅調な動きをみせ、3万円の大台を回復しています。大きく出遅れていたことを考えれば、当然と言えば当然ですが、菅首相が退陣を決め、後任の新首相の経済対策に対する期待が先行しているようです。そのため、「微風」が吹いた程度の為替市場に比べ、株式市場には強い「追い風」が吹いています。株高はリスクオンにつながり易く、低金利の円が売られ易いとは思いますが、それでも動かないのが足元の相場です。ここは株価の上昇にも期待を込めたいところですが、足元の「追い風」が「追い風参考記録」にならないことを祈りたいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。