中国の不動産開発大手「恒大集団」の経営不安が引き金となり、週明け月曜日のNY株式市場が大きく揺れ動きました。巨額の利払いが不能となる可能性が高く、金融不安につながるとの懸念から、東京市場の株価も21日の前場では600円を超える大幅な下げに見舞われています。
格付け会社S&Pグローバル・レーティングは20日、「恒大集団」が政府による直接支援を受ける公算は小さく、社債利払いを控えてデフォルト寸前の状況にあるとの分析を発表しています。リポートによると、「中国政府は複数の主要開発業者の破綻を引き起こしたり、経済へのシステミックリスクをもたらしたりする広範な波及がある場合のみ、介入せざるを得ないとわれわれは考えている。恒大だけの破綻ならそのようなシナリオにつながる公算は小さそうだ」と説明しています。(ブルームバーグ)ただ今週23日にも2億3200万元(約39億円)と、8353億ドル(約91億5000万円)のの利払いが控えており、10月に3本、11月と12月にそれぞれ1本の利払いを控えています。S&Pが予想するように、中国の一部のみに限定されるリスクであれば、先週末のNY市場は大きく動揺したものの、落ち着きを取り戻す公算が高いかもしれません。
ドル円も朝方の109円35銭近辺から値を戻し、午後には109円62銭近辺まで値を戻しています。先週は一時109円11銭までドル安が進み、一時は日足の「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を「下っ放れる」動きも見せましたが、再びレンジ内に値を戻しており、上へも下へもレンジを抜け切れない展開が続いています。このままでいくと、8月4日に109円を割り込んでからは2カ月ほど、109円〜110円50銭以内での動きに終始することにもなります。
期待したいのが本日から始まるFOMCです。今回も政策金利の変更はないし、一部で期待されていたテーパリングを決めることもなさそうです。発表される経済指標にばらつきが多く、特にFRBが注視する雇用統計で雇用の増加傾向に予想外のブレイキがかかっている可能性があります。加えて、上述のように中国発リスクにより株価の動きも不穏な状況が続いています。デルタ変異株の感染拡大によるファンダメンタルズへの影響と中国リスクに、FRBとしても無条件にテーパリングに踏み切ることはできません。ここは、そういったリスクに対して最善の注意を払いながらも、あと1、2回のデータを確認したいといったスタンスに落ち着くのではないかと予想します。その上で、11月の会合ではテーパリングを開始する時期を明確にしてくるのではないでしょうか。人手不足とサプライチェーンのボトルネックから物価上昇が止まらないのも事実で、FRBもここで動かざるを得ないということです。ただテーパリングは金利上昇を意味し、軟調な株価にも配慮する必要があります。この辺りの事情をパウル議長がどのように表現でソフトランディングを狙うのか、手腕が問われることになります。パウエル議長の記者会見は日本時間23日の午前3時半となっており、当日は日本は「秋分の日」にあたり祝日となりますので、注意が必要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。