注目された先週21−22日のFOMCでは、パウエル議長は金融市場の「軟着陸」を成功させました。株式市場が軟調な展開を見せていた中、テーパリングを強調するあまり、利上げを連想させるようだと株式市場にはさらに逆風が吹くこととなり、かといって、足元の物価上昇圧力を無視することも出来ない状況でした。また多くのFOMCメンバーが「年内のテーパリング開始が適切」と発言し、すでに外堀が埋められた中での会合でした。議長は「資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始のタイミングに関して直接のシグナルを送ることを意図しない」と述べ、テーパリングが直ちに利上げを意味するわけではないことを強調しました。一方で、「早ければ次回の会合で決定する可能性がある」とも述べており、今後余程想定外のことが起きない限り、11月のFOMCでテーパリングのスケジュールが発表される公算が高いと見られます。従いまして、11月のFOMCで正式にテーパリングを承認し、2022年から実施の公算が高いと見ていますが、今後の経済状況、特に物価上昇のペース次第では年内に開始する可能性もあります。
その意味で今週は、1日(金)に、8月PCEデフレータが発表され、注目されます。FRBはCPIよりも、PCEデフレータを重要視していることは良く知られています。8月の同指標は「3.5%」と予想されており、7月の「3.6%」に続き、高水準が続くと見られています。ただ懸念材料がないわけではありません。国内ではデルタ変異株の感染が高止まりしており、人手不足による「供給制約」も起きています。そのため、高成長を記録している米GDPを下方修正する動きも見られ、JPモルガン証券は「7.0%」としていた米国の7−9月成長見通しを「5.0%」に引き下げています。(日経新聞)
また中国発のリスクにも眼を向ける必要があります。先週初めには「中国恒大集団」の資金繰り悪化から急速にリスク回避の動きが高まり、恐怖指数と言われる「VIX指数」は「25」を超える水準まで高まりましたが、同社の9月の利払い不能が何とか回避できたことで、ひとまずリスクが後退しています。ただ、この問題は簡単には片付くものでもないようです。中国には恒大のような不動産会社が数社あると言われており、週明け日経新聞1面トップでも「中国不動産バブル懸念、かつての日本を超す」といった見出しで報じています。日本のバブルピークの1990年、東京都でも平均年収の18倍だったマンション価格は中国深圳では60倍弱と、日本のバブルをはるかに上回る不動産価格の高騰が続いています。このバブルが弾けた場合、その影響は日本の比ではないと思われ、今後の中国政府の政策が注目されるところです。
また今週は29日に自民党総裁選挙が実施され、新しい総裁、つまり次期首相が決まることになります。その後に衆院選があるため、現時点では必ずしも自民党総裁=時期首相ではありませんが、新総裁になった人物は強力な景気浮揚対策をぶち上げるものと予想され、これが株式市場で好感され株高につながる可能性もありそうです。株高はリスクオンとなり、円が売られやすい傾向があります。今週は足元の110円台が維持できるのか。また上値をどこまで伸ばせるのかという点を見ていきたいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。