ドル円は上昇スピードを速め、先週末のNY市場では114円47銭までドル高が進み、115円も視野に入てきた印象です。正確に言えば、「ドル高」ではなく「円安」傾向が強まっている結果ですが、その理由については本日の「アナリスト・レポート」で触れていますので、そちらをご参照ください。ドル円の日足チャートを見ると、直近安値の9月27日以来、先週末時点では陽線で終わった日が18日営業日のうち14日もあり、陰線は4日しかありません。言い換えれば、18日のうち78%の日は寄付きよりも引け値の方が高いということになり、NY市場でドル高が進んでいることが鮮明になっています。
ドル円と相関の強い米長期金利も上昇してはいますが、思ったほどの上昇は見られません。やはり、日本と主要国との金融政策の差、つまりは足元のドル高円安は金利差によるところが大きいと言えます。今後予想されるスピード調整をこなしながらも、時間をかけながら115円をテストするものと予想しています。11月2〜3日のFOMCで、テーパリング開始の詳細が発表される公算が高いとみられます。ただここで「材料出尽くし」となり、相場が反転することも考えられます。テーパリングが開始されても、実際の利上げはまだ先の話で、長期金利が低下する可能性があるからです。また115円に近づく水準ではさすがに利益確定のドル売りも活発化することも予想され、一旦下押しされたドル円がどの水準から再び切り返してくるのか、この辺りはチャートで確認する必要があります。
中国の第3四半期GDPが発表されました。不動産の低迷やエネルギー危機の打撃を受け、前年同期比「4.9%」と、市場予想を下回る結果でした。かつては二桁成長を遂げていた中国ですが、今や成長率は先進国並みとなってきました。かつての急成長は陰を潜め、リーマンショックの影響から世界的に急ブレイキがかかった経済の下振れを一国で支えたかつての力強さは最早「神話」となった印象です。日本にとって最大の貿易相手国であり、自動車メーカーなどの収益源でもある中国が今後さらに成長力に陰りが出るようだと、日本の景気にも影響を与え、ひょっとすると日本だけではなく、世界の成長力にも影響を及ぼす可能性があります。ようやくコロナ禍からの経済再開が見通せる事態になったものの、半導体不足、電力不足、さらには人手不足など、景気の先行きに暗雲を漂わせています。加えて日本では「悪い円安」が進行しており、2022年は非常に重要な年になりそうです。
11月のFOMCまであと2週間余りです。その間、113−116円のレンジを予想していますが、円安がさらに進むのか、あるいはドルの上昇に一旦ブレイキがかかり下限の113円を割り込むのかに注目しています。個人的にはどちらかと言えば、一旦ここからドル高が進んだとしても押し戻される、「後者」の可能性が高いと予想しています。また先週に引き続き今週も、米有力企業の決算発表があります。先週は大手米銀の好決算が米株式相場の下落を阻止した印象がありますが、今週もネットフリックスなどが好決算を発表するのではないかと予想がすでにあり、目が離せません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。