先週開催されたFOMCでは、市場予想通りテーパリング開始を決め、しかも今月から順次減らす具体策も発表されました。ただ今回も利上げについてパウエル議長は会見で、「われわれは辛抱強くなれると考えている。対応が必要な状況になれば、ちゅうちょしない」と述べ、「現在は利上げに適した時期とは考えていない。労働市場の一段の回復を目にしたいからだ」と説明し、慎重な姿勢を維持していました。この会見を受け債券と株式が買われ、長期金利は市場が利上げを前倒しするのとは逆行するように、低下傾向をみせています。
長期金利は先週末には1.43%前後まで低下し、ドル円はそれに呼応するかのように113円30銭まで売られる場面もありました。パウエル議長を始めFRB幹部の一部が足元のインフレを一過性と見るのは、サプライチェーンの混乱が収まれば物価が低下すると考えているからですが、果たして物価上昇の勢いは今後低下していくのかは誰にも分かりません。10月下旬にはWTI原油価格が一時的だったとはいえ85ドル台まで上昇し、その後利益確定の売りに押され、78ドル台まで下げましたが、再び81ドル台まで反発しており、90ドルを目指しているといった専門家の見方もあります。今後原油価格が高止まりするとすれば、物価が下がりにくい状況は続くと思われ、特に経済活動が再開し、今後も活発な個人消費が続くと予想されることも物価上昇要因の一つになろうかと思います。
今週はFOMCも終わり「ブラックアウト期間」も解禁されたことで、FOMCメンバーによる講演が多く予定されています。メンバー各自のインフレに対する考え方も披露されると思われ、相場への影響もあろうかと思います。また10日(水)には米10月の消費者物価指数の発表も控えています。引き続き高水準の数字が見込まれており、市場予想は前年比「5.9%」と、9月の「5.4%」を大きく上回り、「2%を超える水準」といったFRBの目標値も大きく上回っています。結果次第では市場の利上げ観測が再び高まり、「FRBが利上げに追い込まれる」といった観測も出て来る可能性もあります。ドル円は、ドル高観測が優勢な中でも114円台半ばをなかなか超えることが出来ません。今週は大きな材料に乏しい上に、11日(木)は「ベテランズデー」のため、米債券市場が休場となり、米金利との相関が高いドル円は動きが限定されると予想されます。またシカゴ先物市場での円売りポジションも歴史的な高水準です。11月2日時点での円のネット建玉は「11万3587枚の売り持ち」となっており、これは2018年12月以来となる「ドル買い・円売り」のポジションになっています。多くの投機筋も円がさらに安くなると見込んでいることを現していますが、かなりの枚数を売っていることになります。当然ですが、これが、ドル円が114円台半ば近辺に来ると上昇が抑えられる一つの要因にもなっていると考えられます。米国株が連日最高値を更新するなど、「絶好調」が続いており、その意味では円が売られ易い状況になってはいますが、逆に言えば、その割には円安が進みません。ドルの下値が限定的とは言え、持ち高の偏りには気を付けたいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。