ユーロドルの下落が止まりません。ユーロ圏でもインフレが高進し、10月のCPIはECBの目標値を大きく上回る前年比で「4.1%」の伸びを見せ、コアCPIでも「2.0%」でした。米国と同じように、近い将来に向けた金融正常化への道筋を描く必要があろうかと思いますが、ラガルド総裁を始め、政策メンバーの多くは「物価の上昇は一時的」との姿勢を崩さず、サプライチェーンの清浄化に伴い物価上昇は鎮静化するとの見解を繰り返しています。さらに、ユーロ下落に拍車をかけているのが、新型コロナウイルスの感染再拡大です。オーストリアでのロックダウン措置の導入やドイツでの新規感染者の急増で、景気鈍化が避けられないとの観測がユーロ売りを促しています。
ユーロドルは先週末のNYで1.1250まで売られ、今年5月25日の高値である1.2266からわずか半年余りで「1000ポイント」を超える下落となっています。日足チャートでも、過去10日間を見ると、陽線はわずか2回しかなく、下落傾向が続いていることが分かります。今後どこまで下げるのかはコロナの感染次第というところもありますが、目先は1.15台半ばと予想しています。ユーロドルは7月にこの水準から急騰した経緯があり、仮にもう一段の下げがあったとしてもこの水準から1.10にかけてはもみ合うことが予想されます。
一方ドル円は、先週の東京時間早朝に115円目前まで上昇したものの、115円にタッチすることなくその日のNYでは押し戻され、113円台後半まで一気に下落しました。これまでのレジスタンスゾーンであった113円台半ばから上抜けしたことから、115円テストは時間の問題かと考えていましたが失敗しており、115円台乗せはなかなか簡単ではないようです。ただ、その翌日には114円台半ばまで再び反発する動きを見せたことから、上昇トレンドに変化はないようで、日柄調整というのか、再びドル売り注文をこなして上昇するには、時間が必要かと考えます。
今週は日米ともに祝日があり、市場の盛り上がりは期待薄と言ったところです。ただ、26日(金)は米国では「ブラックフライデー」ということで、クリスマス商戦、年末商戦の口火を切る日になります。赤字であった小売店が「黒字になる」という意味でも「ブラックフライデー」と呼ばれていますが、実際にこの日をターゲットに小売店も大幅な値下げを行い、売り上げを大きく伸ばします。この時期に、年間売り上げの半分以上を稼ぐとも言われ、どの程度売れるのか注目されますが、今年はサプライチェーンの混乱から輸入品の遅れから店頭では品薄と伝えられており、思ったほど売上が伸びない可能性もありそうです。
また24日(水)のPCEデフレーターにも注目です。10月のCPIが年率で「6.2%」の上昇と、記録的な数字だったこともあり、FRBがより参考にするとされるPCEデフレーターが注目されます。予想を超えているようだと、市場の利上げ開始観測が前倒しになることもありそうです。9月の同指数は「3.6%」でしたが、10月の予想はすでに「4.1%」となっています。今週もドルの上値は重いと思われますが、それでも週明け月曜日には114円台前半で推移しており、上値をどこまで伸ばせるのか、注視しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。