「Week for The Central Banks Meeting」今週は14−15日のFOMCだけではなく、各国中銀の金融政策会合が集中しています。今週行わないと、来週は「クリスマス休暇」に入ってしまうため、当然と言えば当然ですが、やはり注目はFOMCでしょう。先週末に発表された米11月の消費者物価指数は市場予想通りでしたが、39年ぶりとなる年率「6.8%」と、物価上昇が止まりません。焦点は、物価上昇が続いている中、11月から始まったテーパリングを加速させるのかどうか。さらに加速させるとしたらどの程度加速させ、来年のいつ終えるのかという点です。これまで毎月1200億ドル(約13兆6000億円)の国債とMBSを市場から買い入れることによって資金を供給してきましたが、これを先月から毎月150億ドルずつ減額することを決めています。
このペースで減額を行っていけば、2022年6月にはテーパリングが終了することになりますが、パウエル議長は先月の議会証言で、足元のインフレの高進について「一過性という言葉を使用しないこととするいい機会だ」と述べると同時に、「次回FOMCでテーパリングの加速について議論することが適切」と述べています。足元の物価上昇は今年6月から5カ月連続でFRBの目標値である「2%を若干上回る水準」を大きく超えています。利上げに向けた道筋を描き始めたFRBですが、早すぎる利上げは景気を冷やすことになる一方、遅すぎる利上げはその後のペースを早めることとなるリスクを高めるため、株式市場などには大きな逆風となり、これも景気を冷やすことにつながりかねないとされ、難しい選択を迫られます。FRBの政策に厳しい見方をしているブルームバーグ・オピニオンのコラムニストであるエラリアン氏は、「一時的というインフレの位置付けは、恐らく連邦制度の歴史上で最悪のインフレ判断ではなかろうか。政策ミスの高い可能性をもたらす」と非常に手厳しいコメントを発しています。毎月150億ドルを減額する現行の案を倍増して、来年2月にテーパリングを終了し、3月に第一回の利上げを行い、来年度中にもう一回の利上げを行うといったシナリオも全く的外れとは言えない状況になっています。
米国以外でも、ECB、BOE、日銀、さらにはスイス、トルコ、メキシコなどで政策会合が開催されますが、いずれも緩和的政策を維持し、政策変更はない可能性が高いとみられます。各国でも物価上昇圧力が増しているものの、オミクロン株の不確実性を意識したコメントが発せされると予想しています。特にイギリスでは利上げが近いことが示唆される局面もありましたが、その後オミクロン株の急拡大が重荷となり、利上げのタイミングがやや後退し、不透明になってきたと思います。
先週市場ではオミクロン株の有効性に関する情報や、感染者が重症化するリスクが低いといった報告があったため、再びリスクオンが強まり、NY株ではS&P500が再び最高値を更新してきました。ただ、債券市場では債券売りはそれほど進まず、金利上昇も限定的でした。そのため、ドル円も114円目前まで買われる場面もありましたが、その後113円台前半まで押し戻されるなど、もみ合いが続いています。前回11月初旬、3指数が連日で最高値を更新した際には長期金利が1.5〜1.6%台まで上昇しましたが、今回は1.4〜1.5%台で踏み留まっており、これがドル円が114円台に乗せ切れない理由の一つと考えられます。今週の各国中銀による政策会合を通過すれば、クリスマス休暇入りし、材料もなくなり、余程の事がない限り相場が動かなくなると見られます。今年最後の闘いの場ということで、無理をしないで頑張ってください。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。