NY市場がクリスマス休暇明けの27日(月)、ドル円は約1カ月ぶりとなる114円台後半までドル高が進みました。翌28日の東京でもその流れは続き、わずかですがドルが買われ115円目前の水準までドル高が進んでいます。米長期金利との相関が強いドル円ですが、今回のドル高局面では長期金利の上昇はそれほど目立ってはいません。今回ドル円を押し上げた最大の要因は、市場で「リスクオン」の流れが強まったことにあります。その証拠に、主要通貨に対してドル高はそれほど進んではおらず、円が主要通貨に対して売られ、クロス円が軒並み上昇していることから見て取ることできます。言い換えれば、今回のドルの上昇は「ドル高」ではなく「円安」ということになります。リスクオンが強まると、低金利の円は売られ易い状況になり、G7諸国で初めて利上げを行ったイギリスに続いて、2022年には米国、ユーロ圏などが利上げに踏み切る一方、日本ではその気配が全く見られないことが根底にあります。「円を売って主要通貨を買う」という流れが強まっているのが現状です。
今年のドル最高値である115円52銭を抜くことが出来るかどうかが焦点ですが、仮に足元の「リスクオン」が年明けも続くとすれば、上記115円台の最高値を抜くことは容易に想定できますが、果たしてそううまく行くのかどうか、まだまだこの先ドルが一段と上昇するにしても、紆余曲折はありそうです。鍵を握っているのが、NY株式市場の行方です。ドル円を見る上では、米長期金利の動きは直接的には非常に重要ですが、現状ではその金利も米株式市場の動きによって決定されるケースが多いと見られます。基本はリスクオンが進めば株が買われ債券が売られ、その結果金利が上昇し、反対にリスクオフになれば、その逆の動きになるのが一般的です。
昨日もNY株が大きく買われ、S&P500は「今年69回目」となる最高値更新でした。特徴的なのが、ダウの値幅を見ても分かるように、上がっても、下がっても値幅が大きいということです。高水準のボラティリティが続いており、今や株式市場が各金融市場の中心にいると言えるでしょう。世界最大の株式市場であるNY株式市場へは世界各国から膨大な資金が集まっています。値上がりの見込める銘柄への資金流入は桁違いのようで、「テスラ」や「アップル」などがその例です。最近では第2のテスラと言われている「リビアン」にも大量の資金が流れ込んでいます。足元の株価の動きについてブルームバーグは、「米主要株価指数は景気拡大や緩和的な金融政策、財政支出を追い風に、今年は2桁の上昇率を記録する方向だ。ただ投資家は今、インフレ率の高止まりや引き締め方向の金融政策、新型コロナウイルスのオミクロン変異株による世界的な移動制限強化、景気減速懸念の増大など、多くのリスクに向き合っている」と説明し、S&P500については、「1日当たりの値動きが平均で1.1%と、この30年余りで4番目に高い」と指摘しています。またウクライナ問題や米中、米ロの間でも緊張が続いており、何かをきっかけに「リスク回避の円買い」に一気に傾く可能性もあります。基本はドルが上昇する展開を予想しますが、何度か上げ下げを繰り返すことになろうかと予想しています。
今年最後のコメントになります。皆様、厳しい環境が続く中、良いお年を迎えください。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。