米国ではFRBによる金融正常化に向け、早ければ3月の政策会合での利上げ開始も取りざたされる中、ドル円は116円台をピークに下落基調を強めています。先週末のNY市場では一時113円48銭までドル売りが進み、約3週間ぶりに113円台半ばの水準を付けています。ただその後は米長期金利が上昇したこともあり114円台を回復し、週明け17日の東京市場では114円50銭辺りまで水準を戻してはいますが、ややこれまでのドルが買われて来た局面とは異なる様相を呈してきました。米株式市場ではこれまで大きく買われてきたハイテク株などが軟調となり、これまでのようなリスクオンが強まる状況が見られなくなったことが一因です。またその背景には利上げだけではなく、FRBが資産縮小にも着手するのではないかといった観測が出て来たことも挙げられます。
これまで低金利を維持するだけではなく、市場から債券などを購入することによって、市場に資金を供給する「金融緩和」を続けてきましたが、保有資産の縮小は「金融引きしめ」につながることから株価が下げています。さらにこれまで「無風」が続いていて、投資家の注目度もかなり低下していた日銀の金融政策にも変化の兆しが見え始めてきたことも材料になりつつあります。日銀は現在、「長短金利操作付き量的・質的緩和政策」を実施しています。政策金利である短期金利をマイナス0.1%程度に抑え、10年債利回りである長期金利をゼロ付近に抑えることで、物価目標である「2.0%」を達成しようというものですが、本日から開催されている決定会合で、物価見通しを引き上げるのではないかといった観測が高まっています。そのため、長期金利は0.15%台まで上昇しています。緩和的な金融政策を維持すると見られていますが、足元では明らかに上昇傾向をみせている物価上昇に対応する日銀のスタンスへの関心が市場では高まっている状況です。明日の決定会合の内容と黒田総裁の会見には、久しぶりに注目が集まりそうですが、先の会合後の会見で同総裁は現在の円安水準程度では、為替は日本経済にプラスだとの認識を示していました。その時よりもやや円安は進んでいますが、現在の為替水準に対してどのような発言を行うのか注目されます。
FRBは今年最初の会合を来週25−26日に開催します。日銀会合が先行するため、日銀としても慎重姿勢を維持すると予想します。FOMC内容次第では為替も株も大きく変動する可能性があるからです。今年はまだ始まって2週間ほどしか経っていませんが、株式市場ほどではないものの、為替市場でもボラティリティが増しています。米モルガンスタンレーと仏BNPパリバは、今年は為替のボラティリティが大きく上昇するとの予想を発表しています。指値注文はこれまでよりもやや上方あるいは下方に離して注文を入れることが必要となり、1日で市場のセンチメントが一変してしまうこともありそうです。長期のポジションを維持しにくくなったとも言えるでしょう。事実先週1週間のドル円の値動きは、昨年11、12月、1カ月で起きた値幅と同じくらい動いています。今週は米長期金利の動き以上に、日米の株式市場の動きの方が為替への影響が大きいのではないかと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。