米金利上昇を支えにしたドル買いと、リスク回避の円買いとが引っ張り合う展開が続いています。そのため、株式市場では連日大きな値動きが起き、ほぼ一貫した売りが続いていますが、ドル円は上値が重いものの、今月14日に付けた113円48銭を下回ることなく推移しています。113円半ばを明確に割込むと「日足」の雲の下限を割り込み、下落基調に弾みが付く可能性もあるとみていますが、米金利高に支えられることもあり、急激な円高方向へ振れる可能性はそれほど高くはないとみています。ただし、昨年9月22日の109円12銭を起点としたサポートラインは既に下抜けしており、短期的にはドル売りで攻められ易い状況になっていることには注意が必要です。
今週の焦点は何と言っても25−26日のFOMCでしょう。足元で勢いを強めているインフレに対して、市場に強いメッセージを発するため3月の利上げ開始を宣言するのではないかと見られています。注目されるのは利上げの幅で、従来の0.25%を上回る0.5%の利上げがあり得るとの見方も急速に高まっています。またFRBの保有する国債などの資産縮小に関しても、どのようなタイミングで行うなかも焦点です。さらに今年4回程度と予想されている利上げ回数についても、既に5回予想がコンセンサスになりつつあり、一部には今年6〜7回の利上げを予想する向きもあります。FRBとしても高進するインフレに対して強い姿勢で臨むという意志を見せる必要もあり、バイデン大統領よりその手腕を評価され「再任」されたパウエル議長にとっても正念場であると言えます。ただこれに関しては「奇策」がある訳でもなく、国民には今後インフレ阻止に全力を注ぐという意志を見せると同時に、インフレがいずれ鎮静化するという根拠を示す必要があるろうかと思います。その上で、大幅な下落基調に入っている株式市場に対して予想以上の「タカ派的」な姿勢を見せるわけにはいかず、ある程度株式市場にも配慮する姿勢を見せる必要があります。
感染が拡大しているオミクロン変異株については、ピークを付けたとの指摘があるものの、州によっては大きく異なっています。また、先週スイスのジュネーブで行われた米ロ外相会談では、対話継続で一致したものの、これといった成果はなく、依然として大きな地政学的リスクであることには変わりはありません。米国務省は、「ロシアの軍事活動の脅威継続」を理由に、ウクライナの首都キエフに駐在する米大使館員の家族に対し、同国から退避するよう命じています。また、ウクライナ国内にいる米国人にも民間などの移動手段を使って、同国から出国を検討するよう勧告を行いました。国務省は、「クリミア半島、親ロシア武装勢力が支配するウクライナ東部を中心に、安全保障環境は予想不能であり、ほぼ予告なく悪化する恐れがある」と説明しています。
株価の下落に伴う「リスク回避の円買い」に加え、ウクライナを巡る「地政学的リスクのタ高まりに伴う円買い」にも発展する可能性があります。またあと10日ほどで北京冬季オリンピックが開催されます。プーチン大統領は2月4日の開会式には出席する意向を表明していますが、習近平中国にとって、最悪のシナリオは北京オリンピック開催中にロシアがウクライナに侵攻することです。そうなると、「異例の3期目を目指し、国内で威信を高めようとしている事情もある習近平国家主席にとっては、大きな打撃になる」といった見方があります。(ブルームバーグ)
株式市場ほど大きな動きを見せない為替市場ですが、今週に限ってはそのようなことはないとみています。注意してください。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。