先週日米の株価が大きく値下がりしたことでリスク回避の流れが一段と高まり、安全通貨の円を買う動きが強まりました。24日には113円50銭を割り込む場面もありましたが、結局前回同様、そこからさらにドルを売り込む動きは見られず、その後FOMCでのタカ派的な見立てから115円台半ばまで反発しています。
FOMC後の会見でパウエル議長は「政策金利を引き上げるのが適切だ」と発言し、3月会合での利上げ開始を示唆しました。また、利上げ幅や年内の利上げの回数については「何も決まっていない」と述べたものの、そのニュアンスがむしろ、「0.5%の引き上げ幅を否定しなかった」と受け止められ、株と債券が大きく売られ、ドル円は金利上昇に素直に反応する格好で115円台回復を果たしています。足元では3月会合での利上げは規定路線化しており、年内の利上げ回数も4回から5回へと拍車がかかっています。アトランタ連銀のボスティック総裁は3月の会合で「0.5%の利上げ」の可能性にも言及しています。またゴールドマンはこれまで年4回の利上げを見込んでいたものの、正式に5回の利上げへと上方修正しました。3月に利上げが開始され、5、7、9、12月の利上げを見込み、6月にはバランスシートの縮小開始が発表されるといった見立てです。先週末に発表された12月のPCEデフレーターは約40年ぶりとなる「5.8%」でした。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も「4.8%」と、こちらは1983年以来となる高い伸びでした。同指数はFRBがインフレを見る際、より重要視していると言われ、同指数が予想を大きく上回ったことで、FRBは本腰でインフレ対策を講じる必要に迫られるといった見方が台頭しています。
ドル円は米長期金利の動向と株価の動きに影響される展開が続いています。先週何度も見られたように、株価が大きく下落する展開では円を買う動きが強まりますが、米金利の上昇に支えられ下値は限られる流れです。株価に反応するのか、債券利回りに反応するのかはその時々の状況によって異なり、決めつけるわけにはいきませんが、まだしばらくは値幅を伴った荒っぽい動きが続くと言えるでしょう。基本レンジは113円台から116円台と見られ、ドル買いが有効だと予想していますが、株価次第ではまだ下方の動きもないとは言えません。
そんな中、今週末はもう1月の雇用統計が発表されます。最近の雇用統計では予想を外れても大きな値動きにはつながっていませんが、やはり重要な指標であることには変わりません。注意する必要はあります。事前予想は非農業部門雇用者数が「15万人」と、前回よりも減少すると予想されています。11月と12月のそれは市場予想を大きく下回る結果に終わっています。今回の予想はすでにオミクロン変異株の感染拡大を織り込んだ低水準の雇用者が予想されており、ここからの下振れリスクは低いとみています。少なくともFRBの利上げプロセスに影響を与えることはないと思われます。また「アナリストレポート」でも触れましたが、ユーロドルの動きにも注意が必要です。ユーロドルは1.11台半ばを割り込む水準まで売られ、1年7カ月ぶりのユーロ安を付けていますが、さらに売られるようだと、ドル円の上昇にも影響を与える可能性があります。1.10を割り込むにはさらなるドル高材料が不可欠かと思いますが、足元では「ドル買いユーロ売り」の機運は高まっているようです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。