ウクライナ情勢が緊迫の度合いをさらに増し、米ホワイトハウスは「いつ侵攻が始まってもおかしくない状態」と分析しています。ロシアもウクライナもさらには欧米も戦争は望まないはずですが、ロシアの「NATOの拡大に反対」とか、「ウクライナはもともとロシアの同民族」といった「大義名分」を掲げて独立国に侵攻することは許されるはずがありません。それでも実際には戦争の危機が迫っているようです。金融市場はこのウクライナ情勢に振り回される展開が続いていますが、今週は特にそのヘッドラインに大きく揺り動かされる可能性がありそうです。戦争に「損も得」もないかと思いますが、今の状況は「最初に降りた人が一番損しそうな状況」と、ドイツ証券の小川氏は分析しています。もしロシアがウクライナに侵攻した場合、欧米はこれまで前例のない大規模な経済制裁を行うと警告しており、景気回復にほど遠いロシアにとっては厳しい状況になるのは目に見えています。一方、欧州にとっても特に、欧州最大の経済規模を誇るドイツにとっても厳しさは同様で、ロシアからの天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」をストップさせることを決めています。ロシアが侵攻すれば、真っ先にユーロが売られると想定する背景にはこのような事情もあります。
それでも外交的解決の道はまだ残っていると見られ、23−24日に行われる「米ロ外相会談」が最も注目されるイベントのようです。週明け月曜日、日経平均株価は朝方から大きく下げ、一時は550円程下げる場面もありましたが、その後バイデン大統領とロシアのプーチン大統領が、「米ロ首脳会談を行う提案を原則合意した」と、ホワイトハウスとフランス大統領府が、「ロシアがウクライナに侵攻しないことを開催の条件」として発表し、その後株価は急速に下げ幅を縮小しています。このように、今週は大きな値動きも想定されることから、予断を許さず、最悪のシナリオも想定しつつ、ポジションを軽くしておくべきだと考えます。少なくとも、余力は十分残しておくべきでしょう。
市場の注目は言うまでもなく、米国のインフレの高進に伴いFRBがどのような利上げスタンスを実施していくのかといった問題と、上記ウクライナ情勢に集約されます。問題はどちらも不確実性が高く、読み切れない部分が大きいということです。FRBの政策については市場の見方の方がはるかにタカ派的であることから、仮に3月の会合で0.25%の利上げがあったとしたら、株価は上昇しリスク回避の流れが後退すると見られ、ドル円は上昇する可能性もあります。市場はそれほど利上げに傾いており、FRBの決定が緩やかなものであった場合には、逆の動きが出て来るかもしれません。米大手金融機関を始め、多くの市場参加者が年7回の利上げを織り込みつつあります。軟調な株価がその証左と言えましょう。
しかし、ドル円はそう簡単ではありません。ウクライナ情勢が落ち着けば、米金利高を手掛かりにドルの押し目買いスタンスが、ある程度有効と思われますが、ウクライナ情勢が最悪の事態に発展すれば、円を買う動きが急速に強まることが想定されます。特に今週は侵攻があるのかないのか、ある程度の方向性が見えてくる可能性があり、それまでは様子見を決め込むことも必要ではないかと思います。
今週は、25日発表の1月のPCEデフレータなど、個人消費支出の結果が非常に重要です。1月についてはすでに、CPIとPPIが予想を上回る結果となっており、PECデフレータやコアデフレータが上振れするようだと、再び株価の下落からリスク回避の円買いが起こることも予想されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。